第九章<皇太子アレンの事情>
「父様…待ってください。なぜ、フィオの皇太子という立場にいるお方が、貴族とはいえ、このような弱小王国の者に求婚したのですか?」
5分後、私はアレン様が従者に父様を送らせて、更にはその従者を通じて、アレン様が私に求婚したいという話を持ってきた、という衝撃が過ぎる発言をやっとのことで理解し終え、ぎりぎり立ち直ってから、たくさんありすぎる疑問の一つを父様に投げた。それに、父様はこう答えた。
「なんだ、知らなかったのか。社交界では必ずと言っていいほど毎回の話のタネになっているというのに。というか、お前自分の母国を弱小王国とは…」
これ以降の父様の話は、頭に入ってこなかった。
知ってるわけないでしょーが!もともと友人も少ないし、その友人たちも社交界嫌いで社交界に数えるほどしか行っていないし、さらにこの2年間、王族教育という名の詰め込み&英才教育を受けて、社交界でもルーク様のそばにいさせられたから、噂なんか全く入ってこないのよ!というか改めて考えると、この2年間無駄でしかないじゃん。まあいい。今は別のこと優先だ。
父様は言いたいことを言い切ったようで、やっと本題に入る気になったようだ。父様は、やや言いにくそうに、声を潜めて答えを告げる。
「大きな声では言えんし、公にはされていないがな、アレン様はな。縁談が、一回の例外もなく3日と立たずに破談になっているのだよ。」
え…。父様、それ本気ですか?アレン様ってそんなに冷たいの?それか婚約者候補たちの性格、そんなに悪かったの?それより、長らく会っていないけど、王族教育の先生方、何故そんな大切な情報を教えなかった?公にされてないからってメッチャ重要だろ。仮にルーク様とあのまま結婚してたとして、外交でアレン様相手に不用意な発言してたらどう責任取ってくれるわけ?下手したら私の首が物理的に飛ぶかもしれなかったんですけど!?それとも何?それくらい知ってて当然とか?ろくに社交界のも出ないで勉強してたのに、そんな無茶ぶりは勘弁してほしいわ。まあ、もう婚約破棄してるからいいけどね!まて。ということはさ、アレン様、こんな弱小王国の貴族に求婚しなくちゃいけないくらい話が破談になってるわけ?逆にすごいな。あと、私の勘も結構鋭くない?だって数時間前、アレン様に「殺人的にモテるのに、なかなか結婚できないタイプよね」って思ったけど、事実じゃない。まあ、そんなことは置いておいて。
「で、父様は即承知したわけですね。」
わかりきっていることではあるが、念のため確認しておく。
「もちろんだ。」
ああそうでしょうとも。別に構いませんがね。貴方は相手が王族とはいえ、娘を嫁にやることに少しも寂しさとかいうものがないのですね。しかも二回とも。王族からの話に拒否権がないことは重々承知の上ですが、あまりにも「娘を嫁にやりたくない父」というあるある感が当てはまらないのはどうかと思いますね。
そんな殺意がこもった心情に若干影響された、ほんのりと殺意を帯びた私の視線には気づかず、父様は明るい声でこう言った。
「じゃあ、明日からフィオに行って、王妃教育をみっちり受けてくるんだぞ。」
先日、友人に突っ込まれて初めて、この話が「悪役令嬢系」に分類されると知りました。今まで「悪役令嬢」のジャンルを読んだことがなかったので、気づきませんでした。(∀`*ゞ)テヘッ
でも、これからも「悪役令嬢」ではなく、「毒舌令嬢」でいきます。




