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白金家の日記 -お姉ちゃんたちとのハーレム生活-  作者: 白金 将
第12期 あまあまポートフォリオ
349/375

場所取りの姉 2

 早朝のコンビニ。ちょうど商品が入れ替わる時間で商品棚にはおにぎりとサンドイッチがたくさん並んでよりどりみどりだった。客も自分だけで店員も一人しかいない、貸し切りともいえる店内で俺は籠を取ってサンドイッチ売り場の前に立つ。確か美香姉が欲しがってたのは……


(これと……そうだな、これも買っておこう。それで……)


 商品を選んでいる時、ふとコンビニ内の放送で聞き覚えのある曲が聞こえてきた。どうもコンビニ内でラジオ的な放送をやっているらしく、それでなんと理子姉が数年前に作った曲が流れている。後で美香姉にもこの話をしてあげよう。

 帰った時に美香姉と一緒に朝ご飯を食べる姿を想像してにやにやしてしまった。美香姉がぼんやりした様子でこちらへもたれかかってくるのが容易に想像できる。


(んじゃあ……)


 美香姉が好きそうな甘いチョコレートをいくつか選んでレジに持っていく。天井のスピーカーから流れる理子姉の声を聞きながら軽い足取りで店を出た。まだ若干寒い空気が頬を撫でてきて我に返る。

 遠くから橙色の光が差すのが見えてきた。光明が差す公園沿いの道をのんびり歩きながら近くで虫が鳴くのを聞く。緩やかなテンポの音楽が聴きたくなる朝だ。


「良かった、まだ場所取り間に合うみたい!」

「本当だよ。もうちょっと早く起きる予定だったのに!」


 ふと公園の入り口に戻ってきた時にブルーシートを持った女性二人組がせわしなく駆け込んでいくのを見つける。ちょっとだけ優越感に浸りながらこちらはのんびり歩いて美香姉の所へ戻ってきた。座ったまま毛布を被り、そのまま寝入ってしまうような彼女は薄目でこちらを見上げてくる。


「ただいま」

「ん……ありがと」


 徐々に小鳥のさえずりも聞こえ始める春の朝。

 美香姉の隣に座り、彼女が暖めていた毛布の中に入れてもらう。案の定彼女はすぐこちらへもたれかかってきて二度寝の体勢になった。


「横になるか?」

「ん……」


 はっきりしない返事を貰った俺は仕方なく彼女を優しく抱き、二人で一緒にブルーシートで横になった。姉さんから返事は帰ってこなかったけれどコアラが木にくっつくように抱き着いてきて離れない。むぎゅう、と優しく締め付けてくるのが心地よくてしばらくそのまま二人でごろごろする。


 日差しの色がオレンジから白へ変わり、早朝から朝になる。

 そうすると公園にもちらほらと人の姿を見るようになった。先程の女性たちのように場所取りに走る人もいれば、日課のランニングとして公園の周りを走っている人もいる。たまにこちらに気付く人もいるが、俺と美香姉の姿はどう見えているのだろう。


「美香姉、二度寝してもいいけど、そろそろ他の人もいっぱい来るからな」

「うん」

「えーっと、人の目は少しは考えた方が……」

「他の人に、見せつけちゃ、ダメ?」

「えっ」


 毛布の中から美香姉は顔をちょこんと出すと、上目遣いで甘えるような表情になってこちらへ訴えかけてきた。そんな顔をされたら無下に断ることもできず、かといってそのまま彼女と甘々しているところを他の人へ見せつけるわけにもいかない。


「や、でも」

「ダメ……?」

「あーっ……うん、わかったから、ちょっと落ち着いて――」


 一旦美香姉を落ち着かせようとした時、姉さんは毛布を頭まで被るとにゅっと首を伸ばして唇を重ねてきた。驚いている間にも俺は美香姉の身体の下敷きになってしまって抵抗一つできないままキスの襲撃を受け続ける。

 互いの口の間から息が漏れる度に色っぽい声が漏れてくる。それだけ激しい口づけで、美香姉の方も色々溜まっていたのだと分からされる。ああっ、声がえっちぃ……


「んん、好き……♡」


 ちゅぱ、ちゅぱ、ちゅぷっ……

 気が付けば俺も美香姉の腰に腕を巻いてぐっと力んでしまっていた。


「はあっ、将……将っ……♡」

「んっ、美香姉っ」

「好きぃ」


 美香姉は跨るような姿勢で下へ伸びると脱力したように動かなくなった。キスの応酬が終わった後も姉さんは首元をぺろぺろ舐めてきてくすぐったい。一息ついていると俺のスマートフォンが振動し、毛布から顔と片腕を出して画面を確認する。


『おはよー! 場所取りおつ! 今お弁当作ってるんだけどこんな感じだよ!』

「愛理姉か……おーっ、よくできてる」

「ん?」


 一緒に顔を出してきた美香姉に愛理姉から送られてきた画像を見せる。

 複数人用のおかずが入る大きな弁当箱に唐揚げやエビフライといったものが入っていた。そこには美香姉の大好きな甘い玉子焼きもしっかりあって姉さんの満足げな「んん……♪」をすぐ隣で聞くことができた。


「将」

「どうした?」

「ちょっと貸して」


 美香姉がスマートフォンを貸してほしいと言ってきたので手渡すと、彼女はお互いブルーシートでごろごろしたまま身体を僅かに動かして体制を整え、カメラを起動させて俺たちが入るようにして自撮り写真を撮った。寝転がっている俺の横に美香姉がぎゅっと抱き着いているのがよくわかる一枚で――


「……美香姉。それ、どうする気?」


 なんとなく嫌な予感がして聞くも、時にはすでに遅し。美香姉はその写真を「白金家」のタイムラインに上げて自慢し始める。というか俺のスマートフォンからやってるから俺のアカウントが姉さんたちに自慢する形になったじゃないか。


「ちょ、美香姉っ」

「あーあ……♡」


 小悪魔的な微笑みを浮かべた美香姉は愛理姉の『( ゜Д゜)』という返信を見るとしたり顔で振り返った。彼女がこちらへ背中を向けてしまったので仕方なく俺は後ろから抱きしめる体制だったが、よくよく考えればかなり密着しているわけで……


「人の目、考えるんじゃなかったの?」

「あ……」

「ばーか」

「美香姉っ……!」


 身体が暖まったのか美香姉は毛布から出るとその片付けをこちらへ押し付けてきた。周りの人からどう思われたのか想像もしたくないが、美香姉とラブラブできたと考えれば楽しめたのかもしれない、でも……と考えながら毛布を畳む。

 片付け終わった時には美香姉は俺がさっき買ってきたサンドイッチをもきゅもきゅ食べながら俺のスマートフォンをいじっている。頼み込んでやっとスマホを返してもらった俺は一息つくが、すぐに『(イライラ)』という理子姉の通知が入って震えた。


 なんか嫌な予感がしてタイムラインを開いてみる。


『昨夜は美香姉と抱き合いながらよく眠れました』

『美香姉めっちゃかわいかったです』

『さっきおはようのキスもしました』


 送った記憶のない文章を前にして背中を嫌な汗が伝った。そうしている間にも愛理姉や理子姉、百合姉からは『ふたりはお弁当抜きにします』『ずるい!!!』『その報告要るの?』といったお怒りの返信が届く。近くで美香姉がくすくす笑うのを聞きながら俺は必死に弁明のメッセージを送るのだった……

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