王様ゲームのこっくりさん 1
今年の長編は割と更新期間短めです。
一週間以内に全部上がると思います
「こっくりさん?」
ある夏の夜、俺は携帯で健一を電話をしていた。
〈そうだ。こないだ彼女と一緒にやったけど面白かったぞぉ〉
「でもそれ、なんかいろいろマズイうわさも聞くけど、何か起こったりしなかったか?」
〈何か? うん、ものすごーく楽しかったことがあったぞ〉
健一は何故か嬉しそうな口調になり始めた。元からこっくりさんにいいイメージを持っていなかった俺は何だか不思議に思えてくる。しかし、楽しかったこととは。
〈彼女が取りつかれたのか分からんけどさ、いつもよりずっと積極的になったんだよ〉
「お前なぁ」
〈今は元に戻ったから心配するな。どれ、お前もやってみたらどうだい〉
「……あー、考えておくわ」
電話を切ってベッドに転がった。健一の事だからまぁそういう事だろうとは思っていたが、姉さんたちに同じことをやったら同じようになるのだろうか。いろいろな方面で危険な状態に近いことは承知であったため、やったら大変なことになりそうな気もするが。
その時ドアをノックする音がした。返事をすると、中に百合姉が入って来る。
「どうした?」
「これ、居間に置きっぱなしよ。ちゃんとしないと失くすからね」
そう言って渡されたのは、少し前に健一から借りてきた心霊関係の雑誌だった。健一はこれにあった「王様ゲームのこっくりさん」という項目を見たという。先ほどの健一との会話が頭をよぎったため、百合姉に聞いてみることにした。
「百合姉はこっくりさんって知ってるか?」
「こっくりさん? 私が高校生くらいの時に一回流行ったわねぇ」
百合姉の高校生姿を想像してしまった。周りの男共は鼻の下を伸ばしてただろう。そんなことを考えていると、それを見透かされたのか、百合姉にコンと頭を叩かれた。
「――やってみる?」
「え?」
百合姉は何かいいことが思いついたような笑みを浮かべていた。こ、怖い。
「王様ゲームこっくりさんって何だよおい」
「私が高校生くらいの時に、クラスで流行ってたの。こっくりさんを呼んだ後に、こっくりさんを王様に固定して王様ゲームをする。こっくりさんのいう事をちゃんと聞かないと大変なことになるって理由でやらなくなっちゃったんだけどね」
百合姉は昔を思い出しながら話してくれた。周りには理子姉、愛理姉、美香姉の他に、何故か千秋さんやなぎささん、希さんまでいる。夜になったため強引に呼ぶ形になってしまったが、千秋さんたちは特に何もなかったため、こうやって来てくれたのだった。と言っても呼んだのは百合姉であって、俺はそれに驚いている方である。
「こっくりさんってなんか怖い話聞くんだけど」
「私の頃は何にも起こらなかったわよ」
不安そうにつぶやく理子姉に百合姉は返す。百合姉の言葉に何も根拠という物がないように見えるが、千秋さんやなぎささんは何だかやってみたそうであった。
「愛理、用意してた割り箸を持ってきてくれる?」
「う、うん」
愛理姉がそこら辺に置いてあった割り箸を百合姉に渡した。人数より一人少なくなっていて、番号がちゃんと振ってあった。少し雰囲気が出て来たぞ。
「でも、こっくりさんと王様ゲームってどうやって一緒にやるの?」
「それはね」
百合姉はみんなが身を乗り出して聞き出そうとするのを見た後、一呼吸おいて話した。
「最初にみんなでこっくりさんを呼ぶの。まぁ、始めてみましょう。やったらわかるわ」
「な、何だか不安です……」
希さんががくがくと震えている。美香姉も不安そうな顔をしていた。だが、他の人たちはやってみようという気持ちになったのか、いそいそと輪を作り始める。
「じゃあ、始めましょうか。こっくりさんこっくりさん……」




