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差し入れの姉 3(終)

 なぎささんの車に乗り、カフェからデパートまで移動した。理子姉は他の人にはばれないように見た目を少々変える。デパートのスイーツ売り場にやって来た。以前美香姉と一緒にスイーツ巡りをした場所でもある。

「二人で将君に一つずつ差し入れを買って、どっちの差し入れが嬉しかったかで勝負するよ。これでいいよね、なぎさちゃん?」

「大丈夫です。それなら自信がありますから」

「言ったなぁ」

 二人は視線でバチバチと火花を散らしたのち、スイーツ売り場の奥に行ってしまった。しばらくぼうっと立っていると、こちらからも理子姉の姿が見えた。ガラスケースの中にあるケーキをじっと見て、どれにしようかと考えているようだ。その反対側のお店で、なぎささんが和菓子を選んでいる。顔は真剣だ。

「……二人ともそこまで真剣になるのかな」

 二人がなぜそこまで勝負にこだわるかは知らなかった。知りたくないから知らなかったことにしておく。仕事が一緒だからてっきり仲が良いと思っていると、意外とそうでもなく、ライバル意識という物はあるようだ。何のライバルかは考えないでおく。

 お、理子姉がケーキを買うためにレジに並んだ。なぎささんも和菓子のお店のレジに並ぶ。二人は何を買うのだろうか。少し経って、二人がこちらへ来た。

「何を買ったんだ?」

「私はね……チーズケーキだよ!」

 理子姉が出したのは、洋菓子店自慢のチーズケーキだった。チーズにいいものを使っているらしく、お値段も結構するのだと言う。彼女の好物でもあり、俺の好きな種類のケーキでもある。理子姉の目はきらきらしていた。

「それじゃあ、私の番ですね。私は……これです」

 なぎささんが出したのは、和菓子店の伝統の味、ようかんだった。昔からの味を受け継いでいる店ならではの独特な高級感、そして、どっしりと重みのあるそれは、何十年もの間勝者であり続けた誇りをも兼ね備えていた。

「で、どっちがいいの?」

「これで決着を付けますからね」

 理子姉となぎささんは再び、じいっとこちらを見つめてきた。返答に困っていると、俺の携帯電話がブルブルと震える。百合姉からメールが届いていた。


『これから千秋の店に行くけど、将は焼き鳥食べに行く?』


 む、口元がにやりとしてしまった。それを二人は見逃さなかったらしく、携帯をぶんと奪い取ってはそのメールをじっと見た。こ、これはまずいぞ。

「……なぁんだ、私となぎさちゃんよりも百合姉や千秋の方がいいんだぁ」

「期待して損しちゃいましたね」

 二人はぶーっと膨れ上がり、俺の携帯を持ったまま去って行ってしまう。俺は二人の後ろを慌てて追いかけた。

「ちょ、ちょっと待って、さっきのにはわけが……」

「将君にもてあそばれたぁ」

「将さんは歩きで大丈夫ですよね?」

 二人は仲が良いじゃないか。だけど置いていくのはやめてくれぇぇぇぇ。


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