強引な姉 1
夜、百合姉が俺をドライブに誘った。それに従い、俺は助手席に乗る。百合姉は少し遅れて運転席に座った。飲み物の所には、おそらくコーヒーが入っているだろう水筒があった。俺は財布と携帯以外は何も持ってきていない。
「百合姉、どこに行くんだ?」
「将、明日休みでしょ?」
「そ、そうだけど」
「ならいいわね」
結局答えを得られないまま車は走り出した。車は高速道路に走り、百合姉は片手で缶コーヒーを飲みながらハンドルを操る。最近暖かくなってきているせいか、百合姉は薄着の黒い服を着ていた。それにうっすらと黒い下着が透けている。わざと見せているのか、全く意識していないのか。
「どこ見てるの?」
「あ、いや、その……すいません」
「ねえ」
百合姉が急に声を低くした。何を言われるのか、とこちらは少し心を構える。
「そろそろ、正直になったら?」
「え?」
「将だってしたいことあるんじゃない?」
百合姉が元の高さでつぶやいた。この間の、理子姉とのあれを全部見られてしまったのだからそう言われても仕方はない。だが、百合姉に許してしまうとあとはもう歯止めが利かなくなる気がする。百合姉の身体に溺れたい自分もいるんだけど。
「百合姉はシャレにならん」
「理子の胸は触ってたのに?」
「う」
「……私の事、好き?」
声の調子が落ちた。夜である雰囲気も合わさって、百合姉に踊らされてる感が増幅されている。どうにか切り抜けないと、と思っている自分もいれば、このまま踊らされていたいという自分もいる。百合姉の身体をちらりと見ると、余計にそうなってしまった。体目当てという訳ではないが、その主張が激しい胸は自分をそう錯覚させてしまう。
「好きです」
「かしこまっちゃって」
体がガクンと横に揺れた。外を見ると、どうやら百合姉が車をサービスエリアの一番端っこに止めたらしい。時間も時間なのか、車が止まっているのは建物の正面だけで、端っこに止まっているのは大型トラックくらいだった。誰もこちらに気付いてはいない。
「それじゃあ、ゆっくり話を聞こうかしら」
百合姉がこちらを見てニコリとした。目つきは鋭い。
百合姉が俺の肩を掴んだ。さっきからずっと百合姉から目をそらすことが出来ない。向こうの顔が徐々に近づいてきて、鼻に息がかかった。いい匂いがする。
「ここまで来た理由、将ならわかるわね?」
「わ、わかりたくないです」
「本当はわかっちゃったんでしょ?」
百合姉の左手が俺の脚を撫でた。何だか身体の支配権を全部向こうに奪われたような感覚になってしまい、百合姉に抵抗をすることが出来ない。何より、百合姉から発せられる匂いがたまらない。女の匂い、とも言ったらいいのか、興奮しないではいられない。
「私に嘘をつくのって、大分生意気な弟になったのね、将」
「ひいっ!?」
百合姉が俺を突然引き寄せた。そのまま百合姉とキスをしてしまう。一度こうなると、口の中の濃厚な百合姉の唾液が欲しくなってたまらない。他の姉さんたちとは違う。百合姉の全てを絡め取りそうな舌、艶美な雰囲気を作り出す唾液、そして大人の女性の匂い。
百合姉の身体に捕まると逃げられないのはこのためであった。百合姉「様」に支配されるこの上ない喜びを身体が分かってしまっている。
「んっ……大人の味になって来たわね」
「ど、どういう事で」
「将の雰囲気が良くなったのよ」
胸を顔に押し付けられた。一番わかりやすいやり方なのだろうが、やはり逃げられない。柔らかい感触があまりにも気持ちよすぎて、結局は百合姉の思惑通りになってしまう。百合姉の手の上でころころと転がされ、そして徐々に彼女の虜になってしまう。
「どう? 興奮してる?」
「ふぁ、ふぁい……」
「最初に会った時よりもたくましくなって、男らしくなって……」
百合姉がつぶやくように言った。褒められているのかな、と思った矢先。
「そして、こんなに変態になっちゃって。傍から見たらシスコンの変質者よ?」
「す、すいませんでした」
「……そうね。せっかくここまで来たんだし、家じゃ出来ないことをやるわ」
百合姉はそう言うと、どこからともなくロープを取り出した。
「縛りプレイ、ていうのも悪くないかしらね?」




