大晦日の姉 1
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大晦日。一年の最後の日はどこの家も忙しい。俺の家も例外ではなく、愛理姉が料理を作っていたり、理子姉の仕事が忙しかったりと一年の終わりを感じさせてくれる。夜になると定番の歌合戦を見ることが通例らしく、今年もその例に漏れず、家では百合姉たちがテレビを見ながらテーブルに並んでいる豪華な食事をもしゃもしゃ食べていた。
俺は少し腹を満たすと、台所でそばを作っている愛理姉の所へ向かう。台所の中に入るとそば粉の匂いが少しした。愛理姉は俺に気付くと、こねこねしながら俺の方を見た。
「何か手伝えるか?」
「うーん……じゃあ、エビ天作るから手伝ってくれる?」
「おう」
愛理姉に言われたとおり冷蔵庫から食べ物を出す。年末のお買い物のおかげで冷蔵庫の中はいっぱいいっぱいになっていた。卵とエビと天ぷら粉を出し、それらを作業台の上に載せる。愛理姉がいろいろと教えてくれた。
「それをそうして……うん、上手だよ将君」
「い、いや。これを……こうか」
「うんっ。お姉ちゃん助かっちゃうなぁ」
こねこねこねこね。こねこねこねこね。俺の事を見ながら愛理姉が必死にうにゅー、と声を出してこねる姿が可愛い。エプロン姿もそう見せるのを手伝っていた。また、頭に巻いていたバンダナの柄もこれまた可愛く、愛理姉が台所の天使のように思える。
俺が天ぷらを揚げ始めると同時に、引き出しからなたを取り出してそばを切り始めた。愛理姉には前科があるため、俺は鍋から目を離さずに釘を刺す。
「愛理姉、手を切らないようにね」
「う……わ、わかってるよ」
愛理姉がそばを切る速度が若干遅くなったような気がした。カラッと揚がった天ぷらをクッキングシートの上に移していると、油が一滴はねて俺の頬に直撃した。
「おわたぁぁぁぁ!」
「将君!」
愛理姉がなたを置いてこちらへ向かってくる。やけどをしたところを触っていると、愛理姉が急にそこにキスをし始めた。鍋に天ぷらは残ってないため、俺は鍋にかけている火を止める。愛理姉が台所の隅で抱きついてきた。
「これで熱くないでしょ?」
「……体全体が熱くなってくるんだが」
「お姉ちゃんもいっしょだよ」
そう言われてみると、愛理姉の顔も火照って赤くなっていた。俺も愛理姉とキスをしたくなり、お互いに抱き合ってしばらくキスをしていると、廊下から足音が聞こえてきた。そのまま慌てて自分の持ち場に戻った頃に百合姉が入ってきて、愛理姉の切っているそばと俺が作った天ぷらを交互に見る。
「大分出来てきたじゃない」
「う、うん。将君が手伝ってくれたからね」
「いや、天ぷら位しかやってないよ」
「天ぷら『くらい』?」
百合姉が突然そこを突っついてきた。俺と愛理姉はその言葉にたじろいでしまい、それを見た百合姉は目を細めて愛理姉の肩を叩く。びくびくとしながら愛理姉がうなずいていると、百合姉は愛理姉の首筋を一回ペロリと舐めた。
「ひゃぁ!?」
「今度いけないことしたら服の中に手を入れるわよ」
「ご、ごめんなさい……」
百合姉が去ってから、俺は愛理姉に一言謝った。愛理姉はいやいいんだよと返してくれたが、どうももやもやが残る。というより愛理姉、若干喜んでいた気が……




