飲んだくれる姉 3
千秋さんの店の手伝いをし終えたころにはもう1時を少し過ぎていた。俺があくびをしていると、千秋さんは俺に暖かいココアの缶を渡してくれた。おそらく、元から店にあった物なのだろう。お礼を言って飲むと、冷えてきた体が暖まった。
「ホテルって言ったけれど、ここからは少し遠いから家でもいいかしら?」
「そうさせていただくな」
「あれ、百合姉、酔いは……」
「そんなものとっくに冷めてるわよ」
百合姉の人差し指が俺の額をつん、と。そうか、千秋さんがうちに泊まるのか。と考えていると、どうやら家に帰る準備が整ったらしい。千秋さんが車に乗っている。赤のランエボだ。詳しくは知らんが。
「運転は私がするよ」
「ありがとね」
「あ、ありがとうございます」
「お前はさっさと成人しろってんだ。一緒に酒飲めねぇじゃねぇかよ」
車を走らせ、家に帰って来た。午前2時である。家の中に入るが、やはりまだ夜遅いのか誰もいない。百合姉が人差し指を口に当てながら、千秋さんを自分の部屋に案内していた。俺もついていくと、百合姉が自分の部屋の前で話しかけてくる。
「あれ、将は自分の部屋じゃないのかしら?」
「あ、そ、そう?」
「私は別にいいけどな。将がどうしてもって言うなら……一緒に寝るのもな」
「そうかぁ、将もそうだよねぇ。こんな綺麗なお姉さんと一緒に寝たいよねぇ」
言われることがことごとく図星である。千秋さんと一緒に寝たい、という気持ちもないわけではない。何一つ否定が出来ないので黙るしかないが、うつむいていると百合姉が俺を部屋に押し入れた。
想定通り、百合姉のベッドは2人用だった。百合姉とは何回かここで一緒に寝たことがあったが、3人寝るくらいの大きさはあるのか。俺がそう考えていると、百合姉と千秋さんが先にベッドに入った。




