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音楽家な姉 6(終)

 次の日、理子姉の新しい曲の大枠が完成した。名前さえまだ決まっていないが、ギターの音色は理子姉の優しさそのものを表している。俺を優しく、それでも強く包み込んでくれるような暖かさに、理子姉自身の悩みも入り混じったような一曲。歌詞はついていなかったが、逆にそっちの方がいいような気がする。

 途中にあるエレキギターのソロは、理子姉の隠された一面的なのを表しているらしい。音に色気という物が存在するなんて知らなかったが、確かにそんな感じだ。昨日の夜の事を思い出しながら聞いていると、より一層引き込まれてしまいそうな音だ。

 理子姉は今度はシンセサイザーをいじっていて、その新しい曲にあったフレーズを考えているらしい。理子姉らしい一曲が出来上がるのが楽しみだ。

「うーん……こっちの方がいいかな?」

そう言ってシンセサイザーを鳴らす理子姉は笑顔だ。本当に、音楽に携わることを楽しんでいるかのようにも見える。それを見ていると、理子姉は俺の方を向いた。

「昨日、将君を抱きしめてたらこんなメロディーが浮かんだんだ」

 理子姉はそう言ってシンセサイザーを鳴らす。ゆったりとした、心地よいメロディーが部屋の中を流れた。俺がうなずくと、理子姉は少し嬉しそうな顔を返す。

「それで、将君を可愛がってる時にこんなメロディーが浮かんだんだ」

 次に流れたのは、まるで悪魔が迫ってきているような音だった。理子姉の裏の顔が現れているような部分で、悪魔から逃れようとしても逃れられない、そんな何か。

「あとはいろいろやって曲を完成させるだけ。楽しみにしててね?」

「おう」

 そういって再びシンセサイザーに向かう理子姉の背中は何だか楽しそうだった。


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