音楽家な姉 4
目を覚ますと、俺は理子姉に抱き枕にされていることに気付いた。外はまだ暗く、どうやら11時くらいのようだ。ベッドの上で俺は抱きつかれており、理子姉はまだ眠っている。その寝顔はとても安らかで、ずっと見ていたくなるほど美しかった。
理子姉の身体にさらにくっつくと、嫌なことを全部包み込んでくれるような温かさが俺の体を覆った。どうやら理子姉も目を覚ましたらしく、俺の様子を見て微笑み、さらに抱きしめ返してくる。そうしてまた温かくなる。
「おはよう。将君」
「お、おはよう、理子姉」
少々ぎこちないあいさつになってしまった。だが、理子姉は俺の頭をそっとなでてくれる。子供に戻ったような気持ちになり、もっと理子姉のそばにいたいと理子姉に寄り添う。
「……将君」
「何?」
「将君って、その……女の人の身体には興味ないの?」
「か、身体?」
予想の斜め上を飛んでいく質問に俺は戸惑った。理子姉はなんだか心配そうな目で見つめてくる。俺は理子姉の目を見て言った。
「俺はこうやって一緒にいれたらいいな、て思ってるよ」
「……ありがとう。将君」
理子姉はどうやら安心したようだった。しかし、どうしてこんなことを聞いたのだろう。そう思っていると、俺が尋ねる前に理子姉が答えてくれた。
「こうやって抱きつくことに私を利用してるんじゃないか、て少しだけ不安になっちゃってね。……突然変な事聞いてごめん」
「理子姉……」
「ほら、他の芸能人とかって浮気のニュース多いでしょ? この前私の友達が浮気された、て言うから、その……将君は、どうなのかなって」
理子姉の言葉が何だか言い訳にしか聞こえてこないのだが、突っ込んではいけないような気がした。俺は何も言わずに理子姉を抱きしめる。理子姉も抱きしめ返してきた。
「新しい曲、なんか思い浮かんだ気がする」
「本当か?」
「うん。将君のおかげだよ」
「……こちらこそ」




