音楽家な姉 2
前に、この曲の和訳をざっくりと理子姉から聞いたことがあった。スカボローの街に行くなら、私の昔の恋人によろしく言っておいてください、という感じだったような気がする。途中の野草は何か別の意味も持っている、とか聞いたこともあった。
理子姉の歌を聞いていると自然と瞼が重くなって来てしまった。向こうはそんな俺の様子を察したのか、仕方なさそうに微笑む。そんな理子姉の姿が、まるで人を癒す女神のように俺の目に映った。理子姉は少し息を吸うと、曲の続きを歌い始める。
Tell him to make me a cambric shirt,
Parsley, sage, rosemary and thyme,
Without no seam nor fine needlework,
And then he'll be a true love of mine.
理子姉は俺の事を優しく見守りながらギターを奏で続ける。そんな彼女の目を見ていると、自分の心が全て透かされているような感じがした。こちらが理子姉の事をどう思っているのか、一体何をしてほしいのか、全部が彼女にわかってしまうようだ。体中から力が抜け、魂がその辺りを漂っているような感覚に陥る。理子姉の演奏が優しすぎて、体がむず痒い。




