ハロウィンの姉 1
ハロウィン特別版
ハロウィンの夕方、俺は百合姉から届いたメールを見て唸っていた。その文面には、
「仮装をして待ってるから、お菓子を買って来て頂戴ね?」
とのことである。近くのコンビニで10個入りのクッキーを買い、俺は帰ることにした。
日も短くなってきたため、帰るころには暗くなっていた。家のドアを開けると、中は真っ暗である。明かりの一つすらついていない。
少々怖い気がしたが、俺は玄関からあがった。すると、少し先がぼんやりと明るくなる。キャンドルを持った、魔法使い姿の美香姉だ。黒いフード付きのコートを羽織っていて、それでいて小柄なのがなんとも愛らしい。
「トリックオアトリート」
「……なるほど」
百合姉がお菓子を持って来いと言った理由が分かった。俺は美香姉にクッキーをあげようとするが、バニラかチョコのどちらを渡すかです少し考える。美香姉は二つのクッキーをじーっと見つめ、俺の方を見てきた。はいはい。
「二つともあげるか」
「……ありがとう」
美香姉の顔がほんのりと赤く染まったような気がした。美香姉が案内した部屋に入る。
台所に入ると、そこにはメイド服姿の愛理姉がいた。いや、頭にはきつねさんのお耳がついているではないか。お尻の辺りにはかわいらしい尻尾も。その視線に気づいたのか、愛理姉はこっちを見ながらむーっとしている。
「……と、トリックオアトリート」
「ほい」
袋の中からクッキーを二枚とり、愛理姉の手に渡した。が、愛理姉は俺の目を見て何かをお願いし始める。も、もう一枚欲しいのか愛理姉。
「……ほい」
「あ、ありがとうございます、ご主人様」
きつ耳愛理姉が可愛すぎる。これは不覚だった。しかもメイド服。このまま愛理姉と戯れていたいのだが、理子姉たちが待っているに違いない。寂しそうな愛理姉を置いて、俺は次の部屋に向かった。
理子姉の部屋に入ると、そこには天女のような格好をした理子姉がいた。部屋も少し装飾がしてあり、いつもの音楽に溢れている部屋ではなく、とても神々しい部屋へと様変わりしている。
「将君、トリックオアトリート」
「お、おう」
クッキーを二枚渡すと、理子姉は俺の頭をなでてくれた。そしてそのまま理子姉に抱き着かれてしまい、何も出来なくなってしまう。理子姉の姿がそうなのかもしれないが、俺は何か大きな物に抱かれているような気分になった。
ずっとこうしていたい気持ちもあるが、百合姉が待っている。理子姉の顔を見ると、仕方なさそうに微笑んでくれた。余計に離れたくなくなってしまうが、俺は理子姉から離れると部屋を出た。




