悪魔世界の特別公演 6
翌日、理子姉のライブが開催される会場に来ていた。
ボーカルの理子姉。ドラムの百合姉。ベースの美香姉。エレキのリリィさんとハービィさん。シンセサイザーのリーンさん。みんな揃っている。
「リハーサルはする?」
「理子さんが大丈夫なら私たちもOKです」
リリィさんの言葉に、他の悪魔たちもうなずいた。百合姉、美香姉も大丈夫そうだ。
ただ、百合姉は昨日の事があるので心配だ。
「……」
「……百合姉?」
「大丈夫よ、美香ちゃん」
百合姉はそう言っているが、背中の辺りが何だか不穏である。もぞもぞしている。
まだ美香姉たちは百合姉の変化に気づいてないらしいけど。人間界にこのまま戻れたらいいなぁとは思うが、まずはライブだ。
「じゃあ、そろそろお客さん入れますか」
一時間後、理子姉のステージの周りはたくさんの悪魔で囲まれてしまった。
裏の方で俺と愛理姉は売り子をすることになったため、いろいろ準備をしている。
「予想はしてたけど、お客さんいっぱいだねぇ」
「空でも飛べれば良いんだろうけどな」
「でも、将君と一緒だったら頑張れるよ!」
そう言って愛理姉は俺に笑顔を見せてくれた。可愛すぎて憂鬱が吹っ飛びますよ。
と、俺がのほほんとしている時、愛理姉が急にその場でしゃがんで縮こまった。なんだか具合が悪そうである。
「愛理姉?」
「ご、ごめんね……ちょっと背中の辺りがむずむずして……」
「背中の辺り?」
涙目になった愛理姉が、かがんだ俺にすがりついてきた。そして俺を強く抱きしめると、その場でむーっと痛みに耐えるような声を出し始める。かわええ。
何も出来ずに慌てていると、愛理姉の背中から白い翼がぽんと出てきた。
「……翼?」
「ふぇっ!?」
愛理姉はすぐさま鏡の前に出て自分の姿を確かめる。自分の背中から生えた翼の存在に気が付いた時、その場でぴたりと動きが止まった。
「愛理姉、これって」
「……ふぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」




