悪魔世界の特別公演 3
ドラムは百合姉、ベースは美香姉。ただ、他のエレキやシンセサイザーはリリィさんにあてがあるようだ。その人の所へ、俺と愛理姉はお願いをしに行っている。
「えーっと……ここでいいんだよね、将君」
「らしい」
俺がドアをノックすると、中から女性の声がした。
少し待っていると、少し背の高い悪魔が中からドアを開ける。
その奥に、シンセサイザーを前に何か考え事をしている悪魔もいた。
「おや、いらっしゃい。リリィから話は聞いてるよ」
彼女は真っ青な髪を腰まで伸ばしていたが、皮膚の色は人間と同じだ。背中から生えているギザギザの翼が特徴的である。
俺と愛理姉は中に入り、ライブのことについて少しお話をした。すると、青髪の悪魔は言う。
「つまり、エレキを担当してほしいってことだな」
「はい」
「エレキか……リーン、お前も参加してみるか?」
「……うん」
リーンと呼ばれた、シンセサイザーの前にいる悪魔はこっちを向いた。
髪の色は黒い。特徴的なのは周りにまとっているダークオーラか。
「……ハービィ、この子たちは?」
「お姉さんのバンドの依頼者よ。あ、私たちは協力させてもらうわ。そう伝えておいて」
俺と愛理姉は顔を見合わせた。
なんか、ぽんと話が付いたな。もっと難しくなるかと思っていたけど。
その日の夜、俺たち白金家は魔界のホテルに泊まることになった。
「わぁ、魔界だけど人間界のホテルと変わらないねぇ」
「人間界の監視役だけど、いいところは真似するってリリィさんが言ってたな」
もふもふのベッドに、お風呂とかも完備。日本人だけかと思っていたが。
愛理姉はベッドでぴょんぴょん飛び跳ねていて、美香姉はその隣のベッドで横になる。理子姉はベランダへ行き、百合姉は椅子に座って薄い本を読み始めた。
「……理子姉」
ベランダへ行き、理子姉に明日のライブについて聞こう。
「明日のライブ、本当に急だけど出来るの?」
「曲のレパートリーは決まったし、楽譜も全部向こうに渡したわ。あとは本番だけ」
理子姉の目は少し真剣だった。
ベランダからは、ライブの開催予定地がぽつんと見える。小さな点のような会場の周りをたくさんの悪魔が埋め尽くすのだ。理子姉ってやっぱりすごいな。
「楽器の担当者って、レベルはどれくらいか分かるのか?」
「……リリィさんが胸を張って言ってくれたんだ。任せてって」
「じゃあ従うしかないか」
理子姉はくすっと笑うと、部屋の中に入ってベッドに倒れた。愛理姉もどうやら寝付き始めたらしい。みんな明日のライブに備えているのだろう。
ただ、百合姉は未だに寝ていないが。
「……ねぇ、将」
「どうしたんだ? 百合姉」
百合姉が本を置いて、俺のいるベランダへやって来た。
なんだか、様子がおかしい。
「百合姉、どうした……おわぁ!?」




