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誘拐される姉 後編 1

 気が付くと俺はリリィさんに抱かれている形になっていた。

 地面に足をつけて周りを見ると、そこはわかりやすい魔界である。

「……姉さんたちはどこですか?」

「あっちのライブハウスに行ったよ。ちょっと私は用事あるから一人で頑張って」

「え、ちょ、そんな」

「じゃーねー!」

 血も涙もねぇ……なんちゅう悪魔なんや。

 だがな、姉さんたちに会いたいのも確かである。死なないように気を付けないと。

 なんか怖いなぁ。あー、超能力の一つでも使えればいいのに。


 魔界にふさわしい、まがまがしい光景がそこには広がっていた。

 本当に姉さんたちがいるのか少し不安になってしまう。なんか怖いし。

 と思っていた矢先、後ろから声をかけられた。

「……おーい、ここに人間がいるぞ?」

「さっきの女たちの関係者か? 連れ戻しにきたのかな?」

 二匹。百合姉がさらわれた時もそうだったが、殺気が尋常ではない。

 近くに何かないか。何もない。戦いに使えそうなものはない。

「何かいいもの持ってねぇかな……へへ」

 つけてきた。多分俺にわざと聞こえるように言っているのだろう。

「そこの兄ちゃん……金目の物をよこしな!」

 体が危険を察知して、俺は気が付くと前の方へごろんと転がり込んでいた。

 すぐさま振り向き、状況を整理する。

「人間みたいな弱者はここで死ぬしかねぇんだよ。命あるだけでも感謝しな!」

「さあ、さっさと持ってるものみんなよこしてもらおうか」

 前に転がり込んで正解だった。一人は斧、もう一人は槍だ。素手ではどうにもならん。

 後ろに下がりながら考えるが、無理だ。勝ち目がない。

「逃げても何も出てこないぜ……観念しな」

 丁度その時だった。

「将君!」

 後ろから、愛理姉の叫び声が。

 ちらと振り向くと、そこには姉さんたちがいた。

 こんな形で会うとは思わなかったよ。俺死亡フラグ立ってんだが。

「丁度いいねぇ。後ろの女どもも頂いていきますか!」

「四人とも良い体つきしてやがるからなぁ」

 後ろから、姉さんたちの怯えるような声が聞こえた。

 その時、俺の頭の中で何かがプツンと切れるような感覚に陥る。

「……」

 右手が変な感じだ。そう思っていたら左手も。

 視線を下に落とすと……なんでや。手のひらから何かが出てきている。

「お、おい……奴、まさか……」

「信じられねぇ……逃げるぞ!」

 悪魔たちが尻餅をつき、その場で慌てて飛び立とうとした。

 その瞬間、俺の無意識の領域で何かが体を作り替えるような感覚を引き起こす。

「てめぇは俺を怒らせた」

 右手に持っている、一本の青い剣。

 左手に持っている、一本の赤い大鎌。

 腰、胸、脚の辺りから一気に何かが噴出し、意識が吹っ飛んだ。

 そして気が付くと、俺は血にまみれた剣を鎌を握って立っていた。

 二体の悪魔の姿はなくなっていて、後ろから百合姉が歩いてくるのがわかった。

「……将?」

「……百合姉」

 全身から力が抜けて、その場で俺は倒れてしまった。

 うっすら残った視界には、心配そうに見守る美香姉、俺を抱え上げようとする理子姉と百合姉、半分泣き出しそうな愛理姉がいた。

 なんだか、ごめん。


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