こっそりな姉 2
遊園地にて、千秋さんは俺の右手を握ったままずっとうつむいていた。
何だか落ち着きがなくなっているようなので、しばらく休憩所で何か食べることに。
「希さん、なにがいいですか?」
「そ、その……えーっと……ソフトクリームで」
店員さんに頼み、待っている間に携帯電話を見る。
む、理子姉からメールが来てる。
〈二人で楽しんできてね☆ キスとかするの期待してるよっ〉
希さんもこっそりと見ていたらしく、ぼわぼわっとぴーぴーな顔ですーはーすーはーと呼吸を整えている。希さん、落ち着いて、落ち着いて。
「……姉さん見てたりするのかな? いないように見えるけど」
「お姉ちゃん、あーん」
「あーん……将と希も順調の様ね」
「そうだねぇ」
「愛理も何故か来てるけれど」
「ねぇ、百合姉」
「何?」
「その……してくれるかな?」
「な、何を?」
「あーん」
「あ、よ、良かった」
遊園地にはいろんなアトラクションがあり、見て回るだけでも日が暮れそうだ。
何とか気を取り直した希さんと歩いていると、近くの宣伝の人が声をかけてくる。
「お二人さん、お化け屋敷はいかかですか? 二人の距離も一気に縮まりますよ?」
「お、お化け屋敷?」
「……い、行きますっ」
希さんがだめそうだから、と断ろうとした矢先、希さんがイエスと言ってしまった。
あれ、幽霊とかの耐性あったのかな……希さんが心配だなぁ。俺も怖いの苦手だけど。
いや、断れなかったのか。希さんひょっとして押しに弱いタイプ?
「よし、じゃあカップル一組いらっしゃい!」
俺の横で希さんが硬くなった。




