甘える姉 3(終)
「……」
恥ずかしさと呆れが同時に押し寄せてきて、俺はその場で机に突っ伏した。
文面を一緒に見ていた理子姉は、なんだかむーっ、とご不満の様子で。
なんでこんなメールが急に来るわけだ、おい。
「パスタ……来たよ?」
「と、とりあえず食べよう。そうだ」
俺は理子姉からフォークをもらい、パスタをフォークに巻いて食べ始める。
心臓の高鳴りのおかげで、なんだか味が奇妙に感じるような。
「将君、あーん」
「え?」
「お口開けて」
理子姉はとても綺麗だった。
反応しようとして理子姉を見るだけで、俺の身体が凍り付いていく。
メールの内容から少し寂しそうにしている理子姉。でも、それがまたいい。
涙目寸前で俺を見られてしまうと、つい何も出来なくなってしまう。
「……あー」
「ほいっ」
理子姉のフォークが俺の口に入った。
パスタがおいしい。自然と笑顔になった俺を見て、理子姉もまた笑顔になった。
悲しそうな顔もいいが、やはり笑顔が一番だ。
「理子姉はとても綺麗だな」
「……ふぇっ!?」
理子姉が一瞬でオーバーヒートしてしまった。
一瞬でバカ姉スイッチが入った理子姉は、その場であわただしくパスタを食べ始める。
途中途中で喉を詰まらせ、俺がコーラを渡すとそれをくくっと飲んだ。
俺のコップだという事に気づくとさらにあわて、もふもふとか変なことを言い始める。
「……言葉は選んだ方が良かったな」
夜中、理子姉は俺のベッドにもぐりこんできた。
メールの件もあり寂しそうだったが、俺の隣で横になるとその場で笑顔になった。
「将君」
「なんだ?」
「うでまくらだよ」
理子姉が俺の頭の下に腕を通し、反対側の腕で俺を優しく抱いた。
当然ながら顔には理子姉の胸が。のわっ。
「むむむ」
「将君かわいいねぇ」
腕枕のまま強く抱きしめられてしまった。
そして、その場でわたわたしている俺に、理子姉が耳元でそっとささやく。
「お姉ちゃんと一緒に、またお出かけしない?」
「う、ううう、う、うんっ」
「えっ? ダメなの?」
「だ、大丈夫だよ!」
「ふふっ」
俺を抱き枕代わりにした理子姉は、俺の額に軽くキスをした後そのまま眠りにつく。
一方、動きを封じられた俺は、理子姉にくっついたまま寝る以外にすることはなかった。
「……これでいっか」
せめて明日まで、この至福の時を。




