第067話 情報共有
梨奈ちゃんと颯馬君と話した次の日の放課後。
私達4人はすぐに帰らず、屋上に出られるドアの前に集まっていた。
本当は屋上の予定だったんだけど、流石に日差しが痛かったので扉の前に変更になった。主に智陽ちゃんの要望で。
でもやっぱり、刺すような日差しは痛いよ。
でも、誰も来ない屋上の扉の前での作戦会議。
これはこれでなんか楽しくて、私のテンションは高かった。
別のクラスの志郎君が来て、全員揃ったところで私は「じゃあ」と口を開く。
「情報共有といきましょう!」
「おう!」
そんなテンションが高い私達に「何でそんなにテンションが高い」というまー君のツッコミが突き刺さる。
私は、まー君へ「だって」と反論を口にする。
「ひとけのないところに集まって情報共有ってそれっぽくない!?」
「な!テンション上がるよな!」
まー君は「遊びじゃないんだぞ」と言ってきた。
……ちょっと怒ってる声じゃない?
だけど、そこに予想外の言葉が飛んできた。
「……気持ちはわかるかな」
「だよね!?」
智陽ちゃんが、まさかの同意を示してくれた。
一方、まー君はため息をついた。
……多分呆れられてる。
でも智陽ちゃん。最初は何考えてるかわからなかったけど、最近少しずつ心を開いてくれてる気がして嬉しい。
「で、何か話すことがあったから集まったんだろ」
「そうそう!」
そう。集まってもらったのは昨日、梨奈ちゃんから聞いた鈴保ちゃんの話を3人に伝えたかったから。
でも、先に連絡をくれたのは志郎君。
昨日21時過ぎに「鈴保ちゃんを見つけれて、話ができた」というメッセージがグループに来た。
だから私もその時、私も何があったかをグループで改めて報告した。
そのときに、今日集まることも決めた。
「それで、どっちからだ」
「じゃあ、私からで!」
☆☆☆
「つまり……砂山さんは怪我によって、中学3年間頑張ってた陸上の最後の大会に出れなくなった。そこから陸上をはじめとした、何もかもが嫌になってしまった。それが原因で昔からの部活仲間と喧嘩してたと。
そして好井さんは砂山さんを待ってるけど、小坂君はそうでもなさそう、と」
「のようだな」
私と志郎君がそれぞれ聞いた話を話した後、智陽ちゃんが短く纏めてくれた。
まー君は黙って何か考えているみたい。
……私は、梨奈ちゃんの話を聞いたときから、鈴保ちゃんの力になりたいと思ってた。
そして今、志郎君が聞いた話を聞いて私は、さらに力になりたいって強く思った。
だって、せっかくの高校生活。笑えないのって苦しいと思う。
でも……どうしてあげたらいいんだろ……。
私だけでも考えても答えは出ない気がしたので、私は思い切って口にしてみる。
「ねぇ……私達、鈴保ちゃんのために何か出来ないかな?」
「俺も同じこと考えてた。何かしてやりてぇんだよな……。
まぁ調子に乗るなって言われたんだけどさ……」
どうやら志郎君も同じことを考えてたらしい。
そして志郎君と「う〜ん……」という声がハモる。
しかし、まー君は厳しかった。
「別に何もしなくて良いだろ。それは砂山が自分で解決する問題だ」
「まー君、澱みや堕ち星が関わらないと冷たくない!?」
「……不必要に他人の問題に首を突っ込む必要はないだろ。他のことに首を突っ込んで、本来するべきことが疎かになったら本末転倒だ。
俺達は俺達がやるべきことをやれば良い」
言ってることは間違いではないと思うんだけど……何というかこう……冷たい。
反論したいんだけど……言葉が出てこない。
そう悩んでいると、先にまー君が口を開いた。
「だがまぁ。蠍座の目的がわからない以上、昨日の2人には護衛をつけるべきだろう。志郎、砂山を頼めるか」
「おう!任せてくれ!」
「じゃあ、私は梨奈ちゃんだね?」
「あぁ。任せるぞ」
そう言い切ったまー君は、そのまま階段を降りて行く。
……え、待って?
あの巨大蠍が何なのか教えてくれてないよね?
私は慌てて「あの巨大蠍って結局何なの!?」と少し大きな声で、降りていくまー君を呼び止める。
まー君は1つ下の踊り場で足を止めて、私達を見上げてる。
「言ってなかったか」
「いや、聞いてないんだけど!」
すると、まー君はまた階段を上って戻ってきた。
「あの蠍は、星座概念体だ」
さっきと同じ場所に戻って来たまー君がそう言った。
「星座……」
「概念体?」
「……つまり堕ち星とは違う……ってこと?」
志郎君、智陽ちゃん、私の順番で言葉を口にする。
私達のわかってなさそうな反応を見て、まー君は言葉を続けてくれた。
「堕ち星は人間が星座の力で怪物になるが、星座概念体は星座の力単体でああいう姿になる。理由はわからないが」
「じゃあ……人が成ってるわけじゃないってこと!?」
「あぁ。だから普通に攻撃して、エネルギー切れ起こさせれば良い。
あれは星力の塊みたいなものだからな」
「つまり……由衣以外でも倒せるってことか?」
「あぁ。俺も概念体は倒したことはあるからそこは保証できる」
まー君がそう言ったとき。
どこからか小さくだけど、悲鳴が聞こえた。




