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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
5節 逃げるか、逃げないか

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第061話 言葉の切れ味

 階段を上り、ビルの5階フロアにある自宅に辿り着いた。

 そしてドアの鍵を開けて中に入る。


「お邪魔しま〜す」


 まず鞄を定位置に置き、作業スペースにある椅子に腰を下ろす。

 そしてノートパソコンを開けて、今までの記録などを呼び出す。


 さて、あの蠍座をどうするか。


 1番現実的なのは「戦って星力切れを起こさせて、プレートになったところを回収する」だろう。

 わし座もそうやって回収した。


 しかし、相手は12星座である蠍座だ。強敵であることは間違いない。

 倒しきれるか不安だが、やるしかない。



 それにしても……あの感じだと、蠍座はまだ誰も選んでないということだよな。

 回収したら俺が蠍座の力も使えないだろうか。


 だが、1人が複数の星座の力を使うなんて先例は存在しない。


 ……星鎧生成したのが俺が史上初なので当たり前のことなんだが。


 しかし、やってみないとわからないのも事実だ。

 幸い、俺が実験で使う用のレプリギアをまた1つ作って届けてもらった。


 ギアが複数あれば複数の星座を使えるのかを試せる。

 まぁわし座やはえ座では無理だったが……。


 だが12星座であれば話は変わるかもしれない。

 そもそも現在、星鎧が生成できたのは12星座だけだ。


 データ収集という意味でも蠍座はなんとしても回収したい。


 こんなときこそほむらさんがいると助かるんだが…あの人は今どこにいるんだ……。


 そのとき。

 「いやぁ……」と誰かの声が俺の耳に入った。


陰星いんせい君の生活も凄いね」

「……待て、何でお前がいる」


 声がした方向を見ると華山はなやま 智陽ちはるがソファに座っていた。


「追いついたときには声をかけたし、入るときもしっかりお邪魔しますって言ったよ?」


 ……全く気づいてなかった。いや、気にしていなかったの間違いか。


 言われてみれば途中で声をかけられた覚えがある。

 この部屋にも一緒に入ってきた気がする。


 ……考え事や右腕の回復に集中しすぎていたのか。

 そのお陰で右腕にはもう違和感は残っていないが。


 どうやら誰かと行動を共にする時間が増えすぎて、人と行動することに違和感を覚えなくなっているのかもしれない。


 考え事をしながら歩くのも気をつけないといけないが、もう少し気を引き締めないとな……。


 俺は自分の変化に呆れながらも、華山に疑問を投げかける。


「何でついてきた」

「なんとなく」


 ……相変わらず、何を考えているかわからない奴だ。

 それに……。


「華山、普通に俺達と行動するようになってきたよな」

「悪い?」


 ……言わない方が良かったか。

 そう思いながら「そうは言ってない」と返す。


 しかし、華山からの返事はない。


 おかしいと思い手元のパソコンから華山に視線を移す。

 すると、華山は俺に鋭い視線を向けていた。


 だが睨んでるわけでもなさそうだ。

 ……どういう感情だ、あの目は。


 しばらく視線が合い続ける。


 先に口を開いたのは華山だった。


「前に、陰星君が私に口調について質問したの覚えてる?」

「あぁ……したな。それがどうした?」

「今頃答えるけど、絶対直した方が良いよ」


 あぁ。こいつ、さてはこの話をするために来たな。


 ……面倒だが、部屋にまで入られている以上逃げられない。

 俺は仕方なく「何だ、さっきの話か」と言葉を返す。


「俺は事実を言っただけだぞ」

「あのね、例え事実でも言わない方がいいことだってあるの。事実は人を傷つけることもあるから。だから、もうちょっと言葉の切れ味を落とした方がいいよ」


 ……確かにそうだ。


 だけど、優しい言葉だけで、人間は生きていけない。



 でもそれを、こいつらに言っても仕方ない。



 俺はなんとか「……だが鋭くないと、負けるだけだぞ」と言葉を捻りだす。



 すると、華山はため息をついた。 


「……言いたいことはわかるけどさ。今陰星君が戦うのは怪物であって、人じゃないでしょ」


 ……それはそうだ。

 星芒高校は同級生が敵だった《《あの学校》》とは違う。


 ……あの学校の《《連中》》は思い出すだけでも忌々しい。

 自分の記憶に悪態をついていると、華山は追い討ちをかけてきた。


「それに、怪物の情報収集のためには、人と話すことだって多くなるでしょ。

 だったら絶対言葉遣い直したほうがいい。せめてもっとオブラートに包んで話せるようになった方が良いと思う」


 確かにそうだ。

 まず戦いはどれくらい続くかわからない。

 これから、どれだけ初対面の人と会話することになるかわからない。


 残念ながら、華山の言うことはもっともだ。

 以前にも志郎や長沢ながさわにも直したほうがいいと言われている。


 ……流石に何とかするか。


「……善処はする」

「それと、今度砂山(さやま)さんにあったら謝った方が良いと思うよ」

「それは相手次第だ」


 華山がため息をついた。

 これは呆れによるため息だろう。流石にわかる。


 そのため息以降、華山は口を閉じてスマホを見始めた。


 俺はパソコンに視線を戻して、情報整理作業に戻った。

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