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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
3節 戦えない誰かのために

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第035話 鋭い爪

 俺、平原ひらはら 志郎しろうは住宅地を走ってる。


 なぜ走っているのか。

 それは数分前の出来事が原因だ。


 まぁ、簡単に言えば……俺の家の空手道場が堕ち星って怪物に襲われた。

 だけど今日はたまたま、堕ち星と戦える力を持つ白上しらかみ 由衣ゆいが来ていたので、俺達は逃げることが出来た。


 だけど、どうやら狙いは俺らしい。


 怪物はいつの間にか俺を追いかけてくる。

 だから全力で走って逃げているって訳だ。


 体力には自信はある。だけどずっと走ってるのは無理だ。

 そもそも相手が人間じゃない怪物。


 俺は残念ながら追いつかれてしまった。

 というか俺の後ろから走ってきて、俺を飛び越して目の前に現れやがった。


「逃げやがっテ……!」


 明らか人間じゃない赤黒い色をした異形が唸りながらそう呟いた。


「なんで俺を狙うんだよ!」

「お前ガ……憎いからダ……!」


 そう叫びながら怪物は殴りかかってきた。というか引っかいてくる。


 その拳には鋭い爪が見える。

 あれにやられると確実に病院送りになりそうなので、なんとかして避ける。


 というか……由衣はどうしたんだ!?


 だけど怪物は休まずに襲ってくる。


 もう一度襲い来る爪を避けて、俺は反撃の拳を叩き込む。


 しかし、怪物の身体は硬い。

 打った拳が逆に痛い。


「ハハハ……お前はもウ……弱イ!」


 怪物は笑いながら、俺を蹴り飛ばした。


 俺は吹き飛ばされて、住宅街のアスファルトの地面を転がる。


 いやマズいなこれ。

 この怪物は地面から湧いてくる黒い怪物とは比べ物にならないくらい強い。



 怪物が近付いてくる。



 逃げても逃げきれない。立ち向かっても全然敵わない。



 ……どうしたらいいんだよ。



 俺はここで死ぬのか?



 そう思ったそのとき、風が吹いた。



 怪物は吹き飛ばされ、吹き飛んでいく。



 そして俺の前には、鎧を着たやつが立っていた。



 だけどその鎧は、さっき見た紺色と赤色ではない。

 前に見た紺色と黒色の鎧だ。


 その鎧が「ギリギリ間に合ったな」と呟いた。


「その声……陰星いんせいか!?」

「俺以外に誰がいる」


 怪物が現れた直後。

 由衣からスマホを渡され、陰星に連絡してくれと頼まれていた。

 前に「2度と顔を見せるな」と言われたから、来てくれるか不安だったが……本当に来てくれたんだな。


 由衣も「絶対来てくれるから!とりあえず連絡して!」と言っていた。



 態度はちょっとあれだけど……陰星は由衣の言葉の通りの人間かもな。



 そして俺は、助かったとようやく実感がわいてきた。


 そこに「また邪魔カ……」という呟きが聞こえてきた。

 怪物が立ち上がって、俺を真っすぐ見ている。


 そんな怪物に陰星は杖を構えていた。

 その杖の先から火が出て、怪物を襲う。


 流石に燃やされたら怪物もただじゃすまない……よな?



 けど怪物はその炎を避けて、陰星の横を取っていた。



 爪が振り下ろされ、金属がぶつかるような音が鳴り響く。



 陰星は怪物の攻撃を杖で受け止めていた。

 そして、怪物を杖ごと投げ飛ばす。


 怪物は飛ばされながらも、空中で体勢を立て直す。

 そして綺麗に着地をして、すぐに距離を詰めなおそうとしている。



 だけどそれよりも先に、陰星が怪物との間合いに入っていた。



 そして炎を纏った拳が怪物に入った。



 それを受けて怪物は少し後ろに下がる。

 陰星は間を置かずに、今度は蹴りを叩き込む。



 しかし、その一撃は受け止められた。



「おまエ……我流だナ?」

「だったらなんだ」

「なら敵ではないナ!」


 怪物が叫びながら受け止めた足を押しのけて、反撃の拳を叩き込む。


 一撃で止まらず、拳、蹴り、拳、拳と続いて。


 鎧が打たれる音が住宅街に響く。



 その動き方には見覚えがあった。



 でも、今の俺にはどうもできない。



 そのとき。

 怪物の後から羊が走ってきて、怪物にぶつかった。

 その瞬間、連撃が鈍った。


 陰星はその瞬間を見逃さなかった。


 反撃の拳が怪物に入り、また吹き飛んでいく。


 陰星はどこからか取り出した杖をまた構えた。

 杖先から今度は大量の水が噴き出して、怪物を飲み込む。



 そして怪物の姿は見えなくなった。


 俺は陰星に近づいて「倒した……のか?」と聞いてみる。


「いや、まだだ」


 陰星は怪物の方を見つめている。

 俺も同じように視線を戻す。


 するとそこには、ずぶ濡れになった怪物が立っていた。


「我流のくせニ……この強さは何ダ……?」

「これが俺の戦い方だ」

「……まぁいイ。目的は達成しタ!」


 そう言い残すと怪物は飛び上がって、家の屋根を飛び移っていって姿を消した。 


「逃げられちゃった……ね」


 そう呟きながら現れたのは紺色と赤色の鎧。俺を逃がしてくれた由衣だ。

 怪物にやられたわけじゃなかったんだな。


 そして真聡は由衣の言葉にため息をついた。

 そして「由衣、お前何してたんだ」聞き返す。


 言葉を発すると同時に陰星はベルトから何かを抜き取った。

 由衣も同じように何かを抜いた。


 すると鎧は光のように消えて、ジャージ姿の高校生が現れた。


 けど……陰星のって星芒うちの高校のやつじゃないよな?


「あの堕ち星に吹き飛ばされたあと、周りにいた澱みの対処をしてました……」

「……そうか。怪我は?」

「それは大丈夫!してないよ!」


 その返事の後、真聡が俺の方を見た。

 そして「平原 志郎。お前は」と聞いてきた。


 俺は少し戸惑いながらも「お、おう。俺は大丈夫だ」と返す。


 蹴飛ばされたときにかすり傷ぐらいは出来たと思う。けどこんなのまぁ……よくあることだ。


 そして陰星は俺と由衣を交互に見て、ため息を付いた。



「で、由衣。他にも俺に言うことがあるんじゃないのか?」



 その声はさっきとは違い確実にキレてる声だった。

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