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私達の星春群像奮闘記  作者: Remi
第2章 2年生  18節 新年度、怒涛奔動

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第316話 まるで

 私が無理矢理学校に行こうとして、失敗して。

 そして白上しらかみ 由衣ゆいさんと知り合った、次の日の午後。


 私は自分の部屋で、また言うことを聞かない自分の身体と戦っていた。



 段々早くなる鼓動に「落ち着いて欲しい」と願いながら、椅子に座っていた。




 私の身体がまた言うことを行かない理由、それは。




 もうすぐ、白上さんが来るから。




 始まりは今日の朝に「おはようございます!突然だけど今日の放課後、会いに行ってもいいですか?」というメッセージが来たこと。


 白上さんに昨日助けてもらって、話してみて。

 悪い人ではないとは思った。



 でもまた別の日に会うとなると、別の話になってしまう。



 頭では大丈夫とわかっていても、緊張してしまう。

 身体は、勝手に反応してしまう。



 でも、せっかく「会いに行ってもいいですか?」と聞かれたのに断るのは、どうかと思った。



 私は既に、来てくれた人に酷いことを言ってしまったのに。




 人は怖い。




 優しさは怖い。




 それは……変わってない。




 だけど。




 誰かを傷つけたいとも、思えない。




 だから私は「ありがとうございます。待ってます」と返事をした。


 そして今、午後4時前。

 学校も終わったはずの時間。



 もう、いつ白上さんが来てもおかしくない時間。



 私の身体は、徐々に言うことを聞かなくなってきた。



 頭の中に、恐怖と緊張が侵食していく。



 今、「来ないでください」とメッセージを送れば治まるのかもしれない。



 だけど、逃げたくなかった。




 もう、()()()()には会いたくない。




 でも私だって、学校に行きたい。




 そのとき。

 微かに「ピンポーン」と電子音が聞こえた。



 ……来た。


 

 私はすぐに椅子から立ち上がる。

 そしてスマホを持って、玄関へと向かう。


 でも、やっぱり身体が言うことを聞かない。


 だから、壁を伝いながら歩く。


 白上さんが来ることはお母さんには伝えている。

 そしてお母さんは私が昨日、白上さんに家まで送ってもらったときに顔を合わせてる。


 だから、心配はない。



 でも、白上さんは私に会いに来た。



 だから、行かなきゃ。



 なんとか玄関まで辿り着ついた玄関には、お母さんと紺色のブレザーを着た白上さんが居た。



 お母さん越しに私の姿が見えたみたいで、白上さんが「星鎖ほしくさりさん!」と声をかけてくれた。

 その声でお母さんが振り向いた。


彩千果さちか……大丈夫?」

「……うん」

「どうする?

 上がってもらう?」


 ……どうしよう。


 でも白上さんは、私と話したくて来てくれたんだと思う。


 でも上がってもらうのは……ちょっと怖い。

 今はまだ、なんとか身体は言うことを聞いてくれる。



 だけど、これ以上悪化したらどうしよう。



 でも、このまま玄関で話すのは申し訳ない。



 ……そうだ。


「お母さん。縁側……使っていい?」

「いいわよ。

 ……行ける?」

「うん。大丈夫。

 白上さん、外からでもいいですか?」

「もちろん!」


 白上さんは笑顔でそう言ってくれた。


 ……笑顔が眩しい。


 そんなことを思いながら、私は前に進む。

 そして外に出るためにサンダルに足を入れる。


 すると、白上さんは先に外へと出た。

 私もお母さんの「何かあったら呼んでね」という声を背中に受けながら、外へと出る。


「こっちです」


 そう呟いた後、私は縁側の方へと向かう。


 そして私は、午後の日差しで温められた縁側に腰を下ろす。

 すると、白上さんは私の右隣に座った。


 ……聞いても、大丈夫だよね。


 私は自分に確認して、深呼吸をしてから「それで」と口を開く。


「なんで……来てくれたんですか?」

「それは……星鎖さん、『学校に行きたい』って言ったから。

 だから私がこうやって来て、学校のことを話したら、少しずつでも慣れることができるかな……って」


 私のリハビリに、付き合ってくれる……ってことなのかな。


 私がそう考えていると、白上さんが「それで……私は来ても大丈夫?」と聞いてきた。


 ……凄く緊張はする。

 怖いとも思う。



 でも、信じたいと思った。



 それにこんなに一生懸命で、表情がころころ変わる人に裏はないと思った。

 オーバーリアクションなのもちょっと可愛い。



 もし、白上さんのこれが演技で、偽りの優しさなら。

 きっと私は、何も信じられなくなると思う。



 でも今は信じたい。

 理由は分からないけど、そう思えた。



 だから私は「……はい」と言葉を返す。


「そっ……か。

 実は……さ。今日……私の親友……連れてきてるんだけど……」


 白上さんのその言葉を聞いて、心臓が跳ね上がった気がした。

 そして手足が、じんわりと痺れ始める。


 そこに。


「あ、もちろん女の子だよ!

 星鎖さんが少しでも話せる人が増えたらいいなと思って……着いてきてもらったんだ。

 もちろん、無理なら帰ってもらうけど……どうしよ?」


 そんな、白上さんの少し焦った声が飛んできた。



 あまりの突然のことで驚いてしまった。



 でも、白上さんの親友の女の子なら。

 それに、せっかく来てくれたのだから。



 会わずに帰ってもらうのは、酷いと思った。



「……大丈夫です。

 会って……みたいです」


 私のその言葉に、白上さんは「わかった」と呟いた。

 そして、神社の方を向いて「ひーちゃん!」と叫んだ。


 その数十秒後。

 白上さんと同じ、紺色のブレザーを着た女の子がやって来た。


水崎みずさき 日和ひよりです。

 由衣から星鎖さんの話は聞いてます」

「ごめんね、勝手に話して。

 でも、私もひーちゃんも、星鎖さんの力になれたら……って思ってくれてるから」


 両手を顔の前で合わせながら、そう言ってくれた白上さん。


 その気持ちが、本当に()()()()()()()()()なら、本当に嬉しい。

 私だって、そう信じたい。



 でも、身体は言うことを聞かない。



 手足の痺れと震えは、どんどん酷くなっていく。

 息をするのも少し辛くなってきた。



 ……やっぱり、早かったのかな。




 もう、元の身体には戻れないのかな。




 そう思ったとき。


「星鎖さん……大丈夫?」


 そんな白上さんの声が聞こえた。

 そして同時に白上さんは私の手を、右手が上で左手を下に包むように握ってくれた。


 ……いつの間にか、私は自分の両手を握りしめていたみたい。



 握られた瞬間、手を払いたいとは思った。



 でも、白上さんなら大丈夫。

 不思議とそうも思えた。



 きっと昨日、公園まで案内してくれたとき。

 白上さんの腕に掴まって歩いている間に、治まったのもあると思う。



 ……でも。


「なんで……ここまでしてくれるんですか?」


 思わず、そんなことを聞いてしまった。

 すると。


「それは昨日も行ったけど、やっぱり私が」

「そうじゃなくて」


 思わず、白上さんの言葉を遮ってしまった。


 でも、そうじゃない。

 私が聞きたいのは、そういうことじゃない。


「私が、学校に行けるようになるまで、どれぐらいかかるかわかりません。

 それなのに、どうしてここまで、してくれるんですか?

 ……白上さんだって、他にしたいこととかありますよね」

「それは……」


 白上さんは、口を閉じてしまった。



 心配してもらえるのは嬉しい。



 私は本当に、いつ学校に行けるかわからない。

 今でさえ、身体が震えているのに。



 そんな私に、時間を使ってもらうのは申し訳ない。



 ……それに。

 諦めてもらえれば、この優しさが嘘か本当かで悩む必要もなくなる。



 だけど。


「……何もできなくて、前のようにできないって辛いよね。

 でも星鎖さんは、()()()()()()()()んでしょ?

 それなら私は、そんな星鎖さんを応援したい。


 だって高校生活ってさ、人生で3年間しかないんだよ?

 そんな高校生活がさ。辛いことや、悲しいことしかないって、私は嫌だ。

 せっかくなら笑って、最後は『楽しかった~!』って言える高校生活が送れたらいいなって、私は思ってる。

 私は、そんな高校生活を送りたい。


 だから私は、星鎖さんを応援したい。

 星鎖さんのその怖い思いが平気になって、学校に来れるようになったら良いなって思ってる。

 それで一緒にお昼食べたり、放課後にどこかに行ったり、イベントを楽しんだり。

 色々、楽しい思い出を作りたいって思ってる。


 そのために私は、私にできることをしたいって思ってる。

 だから私は、星鎖さんに会いに来るよ」


 白上さんは、そう言ってくれた。

 いつものような明るい声だけど、いつもよりも芯が通った声で。



 そう思ってもらえるのは嬉しい。

 でも私は引っ越して、転校までしても学校に行けてない。



 ……あんなことがなければ。




 こんな身体ならなければ。






 …………あれ?




 息が、普通にできる。




 足も痺れてない。




 白上さんに握られた手は、もう震えてないない。




 突然の変化に、私の口から「え」と声が零れる。

 私はそのまま立ち上がり、庭先へと歩いていく。


 突然の私の行動に、白上さんは手を離した。

 後ろから「星鎖さん?」という声が聞こえる。



 でも私は、それどころじゃなかった。



 手も足も震えない。

 普通に息ができる。



 そして頭の中が、すっきりしている。

 まるで今日の青空《空》のように。



 ……こんなの、いつぶりだろう。



 そう思っていると。


「星鎖さん……大丈夫?」


 そんな声がすぐ傍から聞こえた。


 右隣を見ると、白上さんが来ていた。

 私はとりあえず「はい」と返事をする。


「なんか急に……治まったんです。

 なくなったわけじゃないけど、どこか遠くに行ったみたいで。

 私……学校に行けるかもしれないです!」


 その言葉を聞いて、白上さんはその隣に居る水崎さんと顔を見合わせた。



 私でも、なんで急にこうなったのかはわからない。

 ただ、白上さんに手を握られて話をしていただけなのに。



 まるで、魔法みたい。



 ……でもこれを言っても、信じてもらえるかな。



 そう思っていると。


「やったじゃん!」


 白上さんが私に視線を戻して、そう言ってくれた。

 水崎さんも「よかった」と言ってくれた。



 ……今なら、言える気がする。



 私は深呼吸をしてから「あの……」と口を開く。


「どうしたの?」

「私と、友達になってくれませんか?」


 そう言った瞬間。

 白上さんの顔に、パッと笑顔になった。


 まるで、花が咲いたように。


 そして。


「もちろん!

 ね、ひーちゃんもね!」

「うん、もちろん」


 ……よかった。



 やっぱり、この2人は()()()()()()()とは違う。



 そう思っていると、白上さんの「そうだ!」と言う声が飛んできた。


「由衣って呼んでよ!

 それで、私も彩千果ちゃんって呼んでいい?」

「……もちろんです!」

「私も。日和って呼んでいいから、彩千果ちゃん」

「はい!」


 私のその返事の後。

 由衣ちゃんは「やった~!」と言いながら、日和ちゃんにハイタッチを求めている。


 日和ちゃんは渋々それに応えている。


 ……いや、渋々じゃないのかも。



 そこで、私はもう1つ大事なことを思い出した。



 ……由衣ちゃんは、私と同じクラスって言ってた。

 もしかすると、私が会いたい人を知っているかもしれない。



 そう思った私は、深呼吸をしてから「あの」と口を開く。


「私、謝りたい人がいるんです」

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