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私達の星春群像奮闘記  作者: Remi
17節 そして、世界は動き出す

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第291話 わからない

 祖父母の家にある神棚の開かずの引き出しから、謎の箱が出てきた。

 そしてその箱を縁側から外に出て開けると、中からは謎の星座が刻まれたプレートが出てきた。


 その正体を調べるべく、俺と由衣ゆいはそれぞれ自分のスマホとプレートを交互に見比べる。

 そんな俺たち2人を、祖父ちゃんと祖母ちゃんが眺めている。



 聞こえるのは、鳥の声や風が木々を揺らす音。

 あとたまに、祖父ちゃんと祖母ちゃんが話す声。



 そんな静かで、のどかな時間が数分続いた後。



 由衣の「え……?」という声が、静寂を破った。



「この星座……ないよ!?」


 同じ結論に辿り着いていた俺は、「あぁ、ないな」と返す。


 しかし、由衣は理解できていないらしい。

 顔を少ししかめながら、「どういうこと?」と言葉を投げてきた。


 ……今まで、2回は同じことがあったんだがな。


「恐らく、今の88星座にはない星座なんだろう。

 しぶんぎ座やケルベロス座と同じように」

「あぁ~……そういうことね?」


 どうやら思い出してくれたらしい。


 そしていくら纏められたサイトとはいえ、現在使われていない星座までは載っていない。

 だがそうなると、このプレートが何座かが本当に分からない。


 こうなったら……仕方ない。


「使って試すか」

「え……大丈夫なの?それ……」

「それぐらいしか方法がない」


 俺はそう言いながら、また家から距離を取る。

 途中でスマホをポケットに入れ、プレートを右手で持つ。


 そしてある程度距離を取ったところで、家に身体の右側を向けて足を止める。

 そこで、いつものように左手でお腹を右から左になぞってギアを喚び出す。


 するとギアは紺色の光と共に現れて、俺のお腹に巻き付いた。

 いつもより遠いのにも関わらず。


 とはいえ……少し怖いな。



 だがまぁ、身体が痛むだけだろう。



 覚悟を決めて、正体不明のプレートをギアと一緒に右脇腹に呼び出されたにリードギアに差し込む。

 そしていつもの手順で生成したプレートを差し込み、左腕で目元を隠す。


「星鎧生装」


 その言葉と同時に、左手でギア上部のボタンを押す。


 するとギアの中心から山羊座が飛びだして、紺色の光が俺の身体を包みこむ。

 その光の中で俺の身体は紺色のアンダースーツと紺色と黒色の鎧を身に纏う。



 そして、光は晴れる。



 本題はここからだ。


 俺はすぐに、リードギアのボタンを押す。

 すると、いつものようにリードギアにプレートに描かれた星座が。




 浮かび上がらない。




 リードギアは、うんともすんとも言わない。




 今まで一度もなかったことに、思わず思考が止まる。



 ……何故だ?


 リードギアはいつも詠唱も手順もなく、星座の力を引き出すことができる。

 失敗したとしても、身体に痺れる痛みが走る。



 しかし、今回はどちらも起こらなかった。



 ……このプレートは強い力を秘めていて、詠唱がいるのか?



 そう考えた俺は、言葉を紡ぎ始める。


「星座の神遺を宿すモノよ。我、同じく星座の神遺に選ばれし者也。

 その縁のもとに。願わくば、汝のその力を我に分け与え給え」


 紡ぎ終えると同時に、もう一度リードギアのボタンを押して起動させる。




 しかし、結果は変わらなかった。




 ……どういうことだ?



 混乱していると、縁側から「どうなってるの~!?」と由衣の叫び声が聞こえてきた。


 いや、俺だってわからないんだが。



 リードギアでは使えない……。



 ……もしかして。



 1つの可能性に思い当たった俺は、リードギアから謎のプレートを抜き取る。

 そして、左手でそのプレートをグッと握る。



 すると、謎のプレートは綺麗に2つに割れた。



 これはできるのか。

 だがこれなら、俺の予想は正しいのかもしれない。


 そんな期待と共に、俺は割れて2つになったプレートをギアの両側に差し込む。


 そして、いつもの星鎧を生成する手順を取った後。

 左腕を目元を隠すのに合わせて、左手首と右手首が十字に重なるように右手を上げる。


「二座視重 星鎧生装」


 その言葉と同時に、両手を下ろしながらギア上部のボタンを押す。

 すると、ギア中心部から山羊座と謎の星座が。



 飛び出さない。



 ……何でできないんだ。



 もしかして……省略詠唱だからか?



 その可能性を考えた俺は、もう一度同じ手順を取る。

 そして。


「二つの星座を視て、ここにその力を重ねる。

 星座の神遺を宿す鎧、生成」


 その言葉と同時に、両手を下ろしながらもう一度ボタンを押す。

 すると、今度こそギア中心部から山羊座と謎の星座が。



 やはり飛び出さない。



 痺れを切らした俺は、続いてもう一度ボタンを押す。




 しかし、何も起きない。




 そのとき。

 「ねぇ~~どうなってるの~~???」という由衣の声が家の外に響いた。



 とても、不機嫌そうな声で。



 ……しまった。

 考えるのに夢中で、途中から由衣を完全に無視している状態になっている。


 そして二座視重もできなかった以上、これ以上の実験は時間の無駄だろう。


 そう判断した俺は、2つに分けた謎のプレートをギアの両端から抜き取る。

 その2つを合わせて左手でもう1度握り、元の1枚の状態に戻す。


 次に右手でギアから山羊座のプレートを抜き取り、元の姿に戻る。

 すると、ギアとプレートは紺色の光を放ちながら消滅した。


 ギアはどうやら、ちゃんと俺の部屋に転送されたらしい。


 そしてようやく、俺は由衣に向かって「悪い」と言葉を返す。

 すると由衣は口を尖らせながら「……それで」と口を開いた。


「どういうことなの?」

「それは俺にもわからない。

 俺自身の力不足か、使い方が間違ってるのか。

 とにかく今わかるのは、『今は使えないということ』だけだ」


 その説明に対して、由衣は「ふぅ~ん」と呟く。


 すると入れ替わるように、祖父ちゃんが「わからんこと、まだあるのか」と呟いた。

 俺は素直に「山ほどあります」と言葉を返す。


「そもそもあのギアだって、まだわからないことが多いんです」

「そうなの。

 仁人ひびと満澄ますみさんとあんなに頑張って研究してたのにねぇ」


 今度は祖母ちゃんがそう言った。


 確かに。父さんと母さん、そして時代錯誤異物研究所の人達は必死に研究していたのだろう。

 だからこそ俺は今、ギアを使って堕ち星と戦えている。



 でも、それでもわからないことは山ほどある。



 神遺とは、それほど人智を超えた力なんだ。



 そして今度は由衣が「それで……どうするの?」と聞いてきた。


「このプレートはいったん保留だ。

 時間があればまた考えるし、レヴィさんやほむらさんと連絡が取れたら相談してみる。

 今はそれより、蔵を調べるのが優先だ」

「え、まだ探すの!?」


 まるで「信じられない」と言わんばかりに、そう返してきた由衣。


 ……やっぱり由衣、今日来た目的を間違えてないか?


 そう思いながらも、俺は「当たり前だろ」と言い返す。


「まだ探せてない場所が沢山ある。

 わざわざ来たんだ、ギリギリまで探すに決まってるだろ」

「えぇ~……。

 せっかくプレート見つけたのに……」


 口を尖らせて、頬を膨らませてそう呟く由衣。


 いや、このプレートが入っていた神棚の引き出しを開けたのは俺だが。



 ……いや、その神棚に目を付けたのは由衣か。



 つまり……「開けるな」と止めた俺に対して怒ってるのか?



 確かに、結果論であるが由衣の目の付けたところは間違ってなかった。

 そして由衣の機嫌が悪くなるのも、拗ねられるのも困る。


 覚悟を決めた俺は「由衣」と名前を呼んで、視線を合わせる。


「な……なに?」

「その……止めて悪かった」


 俺の言葉に、うんうんと頷く由衣。



 しかし、その途中で「あれ?」と呟いて首を傾げた。



 ……俺は、何か間違ったことを言ったか?



 そんな不安を抱きながらも、俺は「なんだ」と言葉を投げてみる。


「あ、いや。なんでもない。

 気にしないで、うん」


 俺から視線を逸らして、そう返してきた由衣。


 ……余計何もわからないが?


 すると、そんな由衣の横でにこやかにほほ笑んでいる祖父ちゃんと祖母ちゃんが目に入った。


 我慢が出来なくなった俺は「なんで笑ってるんですか」と言葉を投げる。


「いいのよ。気にしなくて。ねぇお父さん」

「あぁ。若いうちにたくさん楽しみなさい」


 その言葉の後、揃って笑いだす祖父ちゃんと祖母ちゃん。


 3人揃って……本当になんなんだ……。



 ……いや、こんなことをしてる場合ではない。


「とりあえず、俺は蔵をまた調べます。

 由衣、次は手伝ってくれ」


 その言葉に「えぇ~?」と不満げな返事をする由衣。


 だから、今日は蔵を調べるために来てるんだが?


 ……仕方ない。


「神棚からプレートを見つけたんだ。

 その勘の良さを蔵でも発揮してくれ」

「ん~~……わかったよぉ」


 そんな会話をしながら。

 俺はまた蔵に入るための準備をするために家の中に戻った。

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