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私達の星春群像奮闘記  作者: Remi
17節 そして、世界は動き出す

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第284話 固めて欲しい

 春休みに制服を着て、学校に登校する。


 ……凄く変な感じがする。


 普段は色々な声や音が響き渡る学校が驚くほど静かなのも、その違和感を後押ししているのだろう。


 まぁ、部活動の生徒がいるため完全に静かという訳でもないんだが。


 そんなことを考えながらも俺は、下駄箱で靴を履き替える。

 そして目的地である職員室に向けて、また移動を始める。



 俺の部屋での友人達との話し合いから2日後の午前中。

 俺は1年の担任だったタムセンの呼び出しを受けて、春休みの学校に来ていた。


 呼び出しがあったのは、大流おおながれ市での戦いの翌日。

 その戦いで2つの星座を重ねた星鎧「二座視重」を初めて使った影響か、泥のように寝ていた時に電話がかかって来た。


 そのため「行く」とは答えたものの、用件を全く聞いていなかった。


 ……だがまさか、昨日もまた由衣ゆいと「来なくていい」と言い争うことになるとはな。



 職員室の扉の前に辿り着いた俺は扉を3回ノックする。

 そして「失礼します」と言いながら扉を開ける。


陰星いんせい 真聡まさとです。田村先生はいらっしゃいますか」


 そう言った後、職員室を見回してみる。


 やはり、春休み中だからだろうか。

 先生は数人ほどしかおらず、ほとんどの席が誰も座っていない。


 そう思っていると、職員室の奥から「お~陰星」という声が聞こえてきた。


 視線を声がした方へと向けると、タムセンが手を上げていた。

 しかし、視線は下を向いている。


「少しだけ待っててくれ。すぐに行く」


 その言葉に俺は「わかりました」と返して、廊下へ出る。

 そして「失礼しました」と言いながら扉を閉める。


 そのまま職員室出入り口から少し離れた窓際まで移動して、背中を預ける。


 ……教師は、生徒が来ない長期休みでも忙しそうだ。


 そんなことを思いながら、窓の外に見える中庭を眺める。


 麗らかな春の日差しに照らされ、穏やかな空気を感じる。



 その数分後。

 静かな職員室前の廊下に扉が開く音がした。


 同時に飛んでくる「待たせたな」という声。


 職員室の出入り口に視線を向けると、タムセンが出てきていた。

 左手には何やら紙とクリアファイルが握られているように見える。


 その姿を確認した俺は「大丈夫です」と言いながら、すぐ傍まで移動する。

 そして「それで、何の用ですか」と疑問の言葉を投げる。


「用が2つと、手伝って欲しいことが1つあるんだ」

「手伝って欲しいこと……ですか?」


 予想外の言葉に、思わず俺は反射的に聞き返してしまった。


 ……春休みに、生徒が何を手伝うんだ?


 あり得そうなものを考えていると、タムセンは「あぁ」と呟いた。


「新しい2年の教室の座席数のチェックと、移動を手伝って欲しいんだ。

 話はやりながらでもいいか?」


 なるほどな。そういう感じか。

 確かにそれ春休みにやるべきことだ。


 俺は今日、1日学校に居てもいいように予定を入れてない。

 そして、肉体労働はトレーニングにもなるだろう。


 そう考えた俺は「わかりました」と返事をする。


「悪いな。忙しいだろうに」

「いえ、別に。今日の予定は開けてきたので。

 行きましょう」

「助かる。

 こっちだ」


 そう言ってタムセンは職員室前の廊下を右側に歩き出す。

 俺はその後ろを着いて行く。


 そして、2人で静かな校舎内の階段を上る。


 その途中で突然、タムセンが「そうだ」と口を開いた。


「これ、先に渡しておく。

 失くしたら困るしな」


 そう言って手渡されたのは、先程から手に持っていたクリアファイル。


 俺はそれを受け取った後、とりあえず階段を上り切る。

 そして2階に上がってから、クリアファイルの中身を確認する。


 その中に入ってる紙の見出しは「創部申請書」と書かれている。



 ……え。


「いいんですか?」

「あぁ。職員会議では通ったからな」


 ……まぁ、そうだよな。

 そうじゃないと許可は下りないだろう。


 だが、俺が気にしてるのはそこじゃない。


御堂みどう教頭先生に、何か言われなかったんですか」

「あぁ……。反対はされていた。

 だけど、理事長が丸め込んでくれた」


 ……なるほどな。


 俺達が提案した「堕ち星の情報を集めるための部活」が御堂教頭に反対されるのは分かっていた。

 だがまさか、金城かねしろ理事長がまた助けてくれたとは。


 ……お礼を言いに行かないとな。


 その前に俺はタムセンに「ありがとうございます」と言った後、頭を下げる。


「いやいや。俺は職員会議で話をしただけだ。

 お礼は理事長に言ってくれ」

「もちろんそのつもりです。

 ……今日って、金城理事長はいらっしゃいますか?」

「いやぁ……それが、春休みの間は学校に来る予定はないらしい。

 だから、学期が開けてからだな」


 金城理事長は社長も兼任してるらしいからな。

 忙しくて当たり前だろう。


「わかりました」

「よし。

 2年生の教室は3階だからな。もう1つ上がるぞ」


 タムセンはそう言って、また階段を上っていく。

 俺はとりあえず、スクールバッグとクリアファイルを一緒の手で持って追いかける。


 そこで、俺の頭の中に1つの疑問が浮かんだ。


 タムセンは「用は2つある」と言っていた。

 部活の話が1つとして……もう1つは何だ?


 そんなことを考えながらも、俺はタムセンを追いかけて3階まで上がってきた。


 そして、タムセンは「さて」と口を開いた。


「去年の2年生と来年の2年生はクラスごとの人数が当然違う。

 だから今からクラスごとに座席数を数えて、余っていれば外に出す、足りなければ記録しておく。

 という感じでやっていくぞ」


 その説明に俺は「わかりました」と返す。

 そして俺とタムセンは1番階段に近い端のクラスに入り、作業を始める。


 当然、クリアファイルは鞄の中に入れてから。



 俺が通う星芒高校は、2年生から進路によってクラスが分かれる。

 文系進学コース、理系進学コース、一芸入試コース、そしてどれにも当てはまらない進学と就職コースの4つ。


 もちろん人数の都合上、1つのクラスが丸々そのコースの生徒だけで構成されることはないらしい。

 しかし選んだコース次第では、もう同じクラスになれない組み合わせもあるらしい。


 ちなみに、俺は文系進学を選択している。



 一方、作業は順調に進んでこれから3つ目の教室に移動してきた。

 そして作業を始める直前、タムセンが「その前に」と口を開いた。


「2つ目の用なんだが。

 クラス分けについての相談なんだ」


 ……それ、生徒にしていいものなのか?


 そんなことを考えながらも、とりあえず俺は「はぁ」と返事をする。


「陰星たちは、2年生になっても怪物の戦いは続くだろ。

 それなら、クラス分けで固めて欲しいとかあるかと思ってな」


 ……確かに。


 俺達は授業中に堕ち星が現れた場合、途中で抜けないといけない。


 去年はそういう事例は少なかった。

 だが今までほとんどなかったからと言って、これからもないとは限らない。


 そうなると……メンバーはある程度クラスが固まっていた方が助かるだろう。

 もちろん、それは俺達を管理する側にある先生達にも利となるだろう。


 だが……。


「お気遣いは嬉しいですけど、大丈夫なんですか?

 その……御堂教頭先生に何か言われませんか?」

「その点は大丈夫だ。

 むしろこれも、理事長の提案なんだ」


 その言葉に、俺の口から「あぁ~……」という声が零れる。


 ……また理事長に借りが増えてしまった。


 というか、金城理事長は一体何者なんだ?


 気にはなっていたので、前に智陽ちはると一緒にざっと調べた。


 しかし、特に怪しい点は何もなかった。

 敵ではなさそうだが、謎が多い人だ。


 ……いや、今はそこじゃないな。


 俺は思考を戻して、タムセンへの返事を考えて「では」と口を開く。


「選択したコースの中で固めてもらえると嬉しいです。

 コースを超えると色々面倒でしょうし、他の生徒から文句が出ても困りますし」

「わかった。じゃあそう分けれるように努力する」


 タムセンの言葉に、俺は「ありがとうございます」とまた頭を下げる。


 ……俺の1年の担任がタムセンでよかった。


 そんなことを考えていると、タムセンが「さて、続きをするぞ」と言葉を発した。

 俺は「はい」と返事をして、作業に戻る。


 そこからは再び淡々と、机を数えて揃える作業。

 そして多ければ外に出し、足りなければ記録しておく。


 何かあったと言えば。

 途中、タムセンから大流市での話を聞かれたぐらいだ。


 タムセンは、俺達が鎧を纏って怪物と戦っていることを知っている。


 だが、協会のことについては何も話してない。

 いくら担任でも、話せば「不必要に一般人に神遺について話した」として秘匿違反になる。


 なので「他の奴らも元気にしている」、「なぜ急にテレビやSNSで怪物や俺達の話が出始めたのかはわからない」、「鎧の中身が俺達ということは誰にも言わないで欲しい」と言っておいた。


 その話をして思いだしたが、大流の事件以降に射守いもり矢持やもちと会っていない。

 由衣は矢持と連絡を取って、お礼を言ったらしいが。


 ……俺も一度会って、直接お礼を言った方が良いだろう。


 いくら嫌われていて、向こうにその気がなかったとしても。

 力を貸してもらったのは事実だ。


 そんなことを話したり考えたりしてる間にも。

 身体はちゃんと動かし、学年が代わる事前準備の手伝いは着々と進んでいった。



 そして、最後の教室に移動しようとしたとき。




 どこからか悲鳴が聞こえた気がした。



 タムセンも聞こえたらしく、「今なにか……」と呟いている。

 俺はそんなタムセンを無視して、両目に感知魔術を発動させる。


 そして辺りを見回す。



 すると僅かだが、黒い靄のようなものが遠くに見えた。



 ただ壁を無理やり透視しているような状況で、黒い靄もとても小さい。

 これでは正確な位置や量がわからない。


 方向的に……駐輪場の方だろうか。



 だがとにかく、行かないといけない。



 そのため俺は「すみません」と口を開く。



 すると。


「やっぱり行くのか」


 タムセンの方が先に言葉を口にした。


 俺は少し驚きながらも「はい」と返す。


「どういう状況かがわかりません。なのでどのくらいで戻ってくるか断言できません」

「そこは大丈夫だ。残り1クラスだから俺1人でやっておく。

 それより、鞄置いて行っていいから早く行け」

「……ありがとうございます」


 そう返した後、俺は手ぶらで無人の廊下へ飛び出す。



 そして、黒い靄が見えた方向へと走り出した。

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