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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
17節 そして、世界は動き出す

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第282話 音沙汰なし

 大流おおながれ市でのケルベロス座概念体騒動から数日。

 そんな、ある春休みの昼過ぎ。


 俺は事件後初めて、友人達全員と話し合うために集合をかけた。


 場所はもちろん俺の家であるビルのフロア。

 そこに集合時間にかけて、ぞろぞろと集まってくる友人達。


 そして今、最後にやってきた志郎しろうがやってきて定位置に座った。


 すると俺の隣に座ってる由衣ゆいが雑談を止めた。

 そして俺の方に視線を向け「それで……」と口を開く。


「協会から連絡って、あったの?」

「……いや。残念ながら何にもない。音沙汰なしだ。

 こちらから窓口に連絡しても、繋がらない。

 つまり、進展はなしだ」


 その言葉の後。

 友人達6人の口から、ほぼ当時に落胆の声が零れた。


 ……それもそうだろう。


 あの事件の夜。警察の事情聴取も終わり、星雲市警察署まで警察車両で送ってもらった後。解散するときに俺は。


『流石に数日以内に協会から連絡が来るはずだ。来たら連絡する。

 とりあえず、明日はゆっくり休んでくれ』


 と言って、別れた。

 そしてそこから、丸一日は連絡しなかった。


 あれだけの戦闘の後だから、ゆっくり休んで欲しかったからだ。

 俺も疲れていたのと、報告書の作成があって忙しかったのもあるが。


 だが、この感じだと気は休まなかったのだろうか。


 そう言えば、由衣は「麻優まゆちゃんから荷物を受け取らないと!」と言っていた。

 ちゃんと受けられたのだろうか。


 ……いや、それはどうでもいい。


 それから2日経った今朝、俺は現状について話すために集合のメッセージを送った。

 友人達は「呼び出しがあったということは、進展がある」と期待したんだろう。



 しかし現実は、何も連絡が来ていなかった。



 そんな残念な空気の中、最初に「え……」と口を開いたのはやはり由衣だった。


「大丈夫なの?」

「知らん。こればっかりは俺に聞かれても困る」


 晴れることはない、落胆の空気。

 外を包む春の陽気とは対照的に、どんよりとした空気の俺の部屋。


 そこに、今度は向かいのソファーに座っている鈴保すずほが「そもそもさ」と口を開いた。


「協会って、本当に存在してるの?」

「ま、まー君はそういう嘘つかないって!!」


 食い気味に言い返す由衣。


 それに驚いたのだろうか。

 鈴保は「いや、本気で疑ってるわけじゃないけどさ」と少し声がブレながら言葉を返す。


「ただ、そんな疑問も浮かぶというか……」

「……それに関しては、俺がこの前まで秘密にしてたのが悪い。

 だが、俺はあれほど壮大な嘘を堂々と言える人間ではない」

「そう……よね。ごめん、疑って」


 鈴保のその言葉に、俺は「別に」と返す。


 俺が逆の立場なら同じ疑問を抱いていただろう。

 それにこの不信感は、俺が協会のことを黙っていたのが大きな原因であることは間違いない。


 そんな内省をしていると、「というか」と鈴保の隣に座る智陽ちはるが口を開いた。


多治見たじみさんに連絡は取ったの?

 後、レヴィさんは?」


 多治見さん。

 あの事件に偶然居合わせ、俺達に魔法薬を提供して応急処置をしてくれた薬師。


 多治見さんは事情聴取を受けた後、「私は協会に戻って、報告を上げるから」と言っていた。そのまま大流市で別れたので、恐らく日本支部に戻ってるはずだ。


 そしてレプリギアを製作してくれる技術科のレヴィさん。

 秋頃に一度、俺の部屋まで訪ねてきたので日和ひよりと鈴保以外とは面識がある。


 2人とも、俺が持つ数少ない協会内での繋がり。


 そしてもちろん。

 昨日に連絡を取ろうとしてみた。


 だが。


「してみた。だが、通話に出てくれなかった。

 メッセージを送っても既読が付かない」

「え……そんなこと……ある?」


 信じられないという声でそう呟く智陽。


 だが、実際に今起こっていることだ。

 俺もどうしたらいいのかわからない。


 するとそこに、また由衣が「じゃあさ」と口を開いた。


「確かめに行けないの?」

「行けないことはないが……」


 今、この状況では行かない方が良い。


 しかし、その言葉を口にする前に由衣は「どうなの?」と詰め寄って来た。


 ……全部説明するか。


 俺はため息を堪え、思考を纏めながら口を開く。


「確かに行けないことはない。

 だが連絡が取れない以上、いろんなことが考えられる」

「色んなことって?」

「もちろん。ただ単に、今回の件の対応でパンクしてるだけの可能性はある。

 だが、何者かの襲撃によって壊滅してる可能性だって考えられる」

「それ……ありえるのか?」


 鈴保の隣に座っている志郎しろうが、信じられないという声で聞き返してきた。


 ……話は最後まで聞け。


「あくまで可能性の話だ。

 だが向こうの状況がわからない以上、最悪の想定をした方が良い。

 その最悪の場合、俺が行って帰ってこれないという可能性もある。

 そしてへび座が何かを企んでる今、この街を長期間離れたくはない。

 だから、待つしかないんだ」


 俺のその言葉で、部屋は本日何度目かの重苦しい空気に包まれた。



 しかし、そんな空気を由衣が「じゃあさ!」という声で破った。


「私が行ってくる!だから場所教えて!」


 自信満々、「良いこと思いついた」という声でそう叫んだ由衣。


 部屋の空気は、そのとんでもない言葉で一気に驚きの空気と成った。

 実際に日和と鈴保と智陽の口からは「はぁ?」という言葉が零れた。


 しかし志郎が「そうじゃん!俺達が行けばいいんだよ!」と肯定の返事をする。

 それに対して嬉しそうに「でしょ!」と返す由衣。


 ……テンションが上がり始めてる。


 一方、俺はため息を堪えていた。



 だが、答えられるのは俺だけだ。



 なので俺はそのため息を飲み込み、「残念ながらな」と口を開く。


「協会本部に行くのは無理だ。遠いし、俺も行ったことはない。

 そして日本支部に行くにもそこそこかかるし、どちらもだが事前連絡がいる。

 加えて、俺以外は全員魔師としての初期登録すらされてない。

 だから無理だ」


 すると予想通り、由衣の「えぇ~~!?」という声が部屋に響いた。

 志郎も同じく、落胆の「マジか……」と呟いた。



 そもそも、由衣が居なくなると堕ち星を元の人間に戻せる奴が居なくなって困るんだよ。



 しかし、由衣は諦めない。またしても「じゃあさ」と口を開いた。

 今度は、場所が足りないので椅子に座る佑希ゆうきの方を向いて。


「ゆー君は無理なの?

 まー君みたいに、焔さんに特訓してもらってたんでしょ!?」


 またしても「良いこと思いついた」という声でそう言った由衣。

 しかし、それに対して佑希は「いや……」と口を開いた。


「確かに焔さんに稽古はつけてもらってた。

 でも、協会の建物には行ったことがないんだ」


 その返事に、由衣の口から「えぇ~……」という声が漏れる。

 そのままソファーに沈み込んでいく由衣。


 ……恐らく、万策尽きたんだろう。



 そこで俺は、今日言うつもりだったことを言うために「というわけだ」と言葉を投げる。


「現状、俺達にできることは残念ながらないんだ。

 何か連絡あれば、また言う。

 だからそれまでは普通に、いつも通り過ごしてくれ」


 すると何人か。

 日和と志郎と鈴保から歯切れの悪い返事が飛んできた。


 ……まぁ、すっきりしないよな。この状況。


 そう思っていると、智陽が「それはそうだけど」と口を開いた。


「この状況、真聡はどうするつもりなの?」


 ()()()()


 恐らく智陽のことだから今の話とは別の話題だろう。


 しかし、だからこそ。

 俺はその言葉の意味が分からなかった。


 そのため、俺は「この状況?」と聞き返す。


「テレビとか、SNS。

 怪物の話とか、私達の話とか。推測とか考察飛び回ってるけど」

「あぁ。あと、デマも出てる」


 智陽と佑希が口にしたその事実。



 それによって、俺の部屋の空気は一段と重みを増した。

 まるで、光が差さない泥沼の中のような息苦しさに。

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