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私達の星春群像奮闘記  作者: Remi
16節 迷ってても、進め

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第280話 わかっているのか?

 星鎧が消滅すると同時に、全身の力が抜けてしまった。

 もう一歩も動けないので、俺は仕方なくその場に座り込む。


 するとやっと気が抜けたからか、呼吸が荒くなってきた。

 手足も震えている。


 だがどれも、緊張が解けたのと魔力回路の使い過ぎによる過剰反応のはずだ。


 なのでとりあえず、深呼吸をする。

 そして、全身の感覚を意識する。



 すると予想通り落ち着いてきた。

 なので顔を上げて、周りを確認する。


 友人達は荒れ果てた大都会の十字路を中心に、バラバラの場所で座り込んでいた。

 星鎧も消えている。


 ……星力切れなのか、自分で解いたのか。

 どちらかは分からない。



 だが、全員本当に満身創痍なんだろう。



 ……それも大事だが。



 やっと頭が回りだした俺は、慌ててもう一度辺りを見渡す。



 あちこちに破損やへこみ、道路の抉れがある十字路。

 周囲の建物や公共物も無事ではない。



 そして肝心の探していた由衣ゆいは、俺の少し後ろで仰向けの大の字でひっくり返っていた。


 ……いくら満身創痍とはいえ、外でそんな倒れ方はやめて欲しい。

 だが、今それを言うのは酷だろう。


 なので俺はそんな思いを押し殺しながら、「大丈夫か」と言葉を投げる。


「全身が痛いし……力が入らない……。

 でも……大きな怪我はしてない……」


 弱々しくそう返してきた由衣。


 とりあえず、大怪我はしてないようでよかった。


 本当なら近くまで移動したい。

 しかし俺も力が入らない。


 なので俺は座ったまま、「大怪我がないならいい」と返す。

 そして「で、由衣。さっきの」とまで口にしたとき。


 由衣が「そう!」と振り絞った声で叫んだ。


「木の根っこ!凄かったでしょ!」


 由衣の顔は見えない。

 だが、いつもからすると満面の笑みなのが余裕で想像できた。


 ……いや、そうじゃなくてだな。


 そう思っていると「だけどまぁ」という声が聞こえてきた。


「由衣の木の根が受け止めてくれたお陰で、俺は怪我をせずに済んだし」

「あと凄い量の花びらを出して、ケルベロスの動きを止めたんだよな!」


 その声で振り返ると、佑希ゆうき志郎しろうが近くまで来ていた。

 その後ろには日和ひより鈴保すずほもいる。


 そして由衣は「そう!そうなの!」と志郎の言葉に嬉しそうに返す。


 少しずつ、いつもの調子に戻ってきてる気がする。


 ……いや、だからそうじゃない。


 俺は気を取り直して「あのな」と口を開く。


「由衣、それが何かわかってるのか?」

「え……魔術じゃないの?

 まー君が普段使ってる蔓を出してるのと同じでしょ?」


 予想外にも、由衣はするっと答えを口にした。


 ……確かに、問題はない。

 木の根だけではなく花びら、俺より草木魔術で生成できるものが多いことには驚いたが。


 むしろ、戦略が広がるので良いことですらある。



 しかし、何とも言えない複雑な気持ちが胸の中にあるのもまた事実だった。



 そう悩んでいると、いつの間にか由衣の隣で座っている日和が「でも」と口を開いた。


「今日、一番頑張ったのは由衣だと思う

 私達が来るまで1人で戦って。星鎧が消えた後でも、いきなり使えるようになった魔術で援護してくれたんだから」


 すると志郎が「それは間違いない!」と言った後、由衣の隣へと歩いていく。

 そして傍でしゃがんで「ありがとな!」と声をかける。


 それに対する「そ、そんなことないよ~!」という由衣の言葉と一緒に、照れくさそうな笑いが聞こえてくる。



 しかし、数秒後。

 由衣は「あ」と呟いてから、身体をゆっくりと起こした。


「私、星鎧が生成できなくなっちゃったんだけど……」

「……それは魔力や星力が、星鎧を生成するほど残ってないだけだ。

 ゆっくり休めば、遅くても数日後には元に戻る」

「そ……そう?」


 少し不安げな声でそう返してきた由衣。


 何か安心させれる証拠は……そうだ。


「左手の星座紋章は。消えてないだろ」


 星座紋章は星座の神遺に選ばれた証。

 星鎧が生成できなくても、消えることはない。


 むしろこれで消えていたら本当にマズい。


 そして由衣はその言葉で、自分の左手を目の前まで持ってきた。

 隣にいる日和と志郎も一緒に覗き込んでいる。


「うん。消えてない」

「じゃあ大丈夫だ」

「よかった~~!!」


 そう叫びながら、由衣はまた仰向けに倒れた。

 そんな由衣に日和が「ちょっと」と言葉を投げる。


 しかし、その隣で志郎まで「俺もちょっと疲れたわ……」と仰向けに倒れた。


 ……しばらくはそっとしておこう。


 そう思ったとき。

 今度は「はいこれ」という鈴保の声が飛んできた。


 前に視線を戻すと、鈴保が右手でプレートを差し出してきていた。

 とりあえず、受け取る。



 しかし、完全に見覚えのない星の並びが刻まれている。



 だが恐らく……。


「ケルベロスが落とした奴。

 やっぱりあれ、概念体だったんだね」


 どうやら拾ってきてくれたらしい。

 拾いに行きたいとは思っていたが、動けないから困っていた。


 なので俺は、まず「悪い。助かった」と感謝の言葉を口にする。


「もうわかってると思うが、あのケルベロスは星座概念体だった。そしてへび座も関係しているらしい。

 だが、へび座が何を考えているかまではわからない」

「その話は別に今じゃなくていい。頭使いたくないから。

 それよりさっきの姿、何?」


 その鈴保の言葉に続いて、佑希も「それ、俺も説明が聞きたい」と言って来た。


 ……確かに、説明がいるよな。

 とはいえ、どこから説明するか……。


 悩みながらも俺は言葉を選んで、口を開く。


「吹き飛ばされた後、戻る前に『リードギアでこぎつね座の力を使って、時間を稼げばいい』と思いついたんだ。

 そして智陽ちはるからプレートを受け取った後、握っていたこぎつね座のプレートが割れた。同時に、頭の中に『割れた両側を差すイメージ』が浮かんだ。

 それで実際にやってみたらできた、という訳だ」


 これでざっくりとした説明はした。


 しかし、佑希と鈴保は何とも言えない顔をしていた。


 ……いや、ちゃんと必要なことは言ったが?


 そんなことを考えていると、佑希が「つまり……」と口を開いた。


「あの星鎧の姿は、2つの星座の力が宿ってるってことか?」

「たぶんそういうことだろう」


 すると佑希は「なるほどな……」と呟いた。


 実際、俺もこの力についてはよくわかってない。

 頭の中に浮かんだイメージの「2つの星座を重ねる」に少し手を加えて省略詠唱を定義しただけだ。


 万全の状態からどれぐらい長さ使えるのか。今、手元にあるすべてのプレートで出来るのか。

 まだわからないこと、気になることだらけだ。


 あと、協会から今回の事件の後片付けも丸投げされるだろうしな……。



 そんなことを考えていると、「みんなお疲れ、大丈夫?」という声が聞こえてきた。

 同時に、「お~……みんな満身創痍だねぇ……」という声も。


 俺はその声のした方向、鈴保と佑希の後ろに視線を向ける。


 そこには、プレートが入った黒いケースを持った智陽が居た。

 そしてその隣にはスーツケースと共に立つ女性、多治見たじみ 世菜せなさんの姿もあった。


 ……やはり、約束はしっかり守ってくれる。


 すると後ろから「ち~ちゃ~ん!!」という由衣の声が飛んできた。


「ありがと~~!!大丈……誰?」

「……誰だ?」


 そんな由衣と志郎の言葉を受けて、多治見さんが「私はねぇ」と呟いた。


 だがそのとき、凄く嫌な予感がした。

 なので俺は割り込むように急いで口を開く。


「この人は多治見 世菜さん。俺の中等部の頃の知り合いで、薬とか医療が専門の人だ。腕()信頼できる」

「ちょっと真聡まさと君?何で遮るの?」

「あなたが話すと、余計なことを言いそうだからです」


 俺の言葉に「言わないって~」と不満そうに返してくる多治見さん。

 だが先程既に余計なことを言っているので、俺の中の信頼はない。


 ……やはり友人達とは別に会うべきだったか。


 そう悩んでいると、多治見さんはまたキャリーケースを広げ始めた。


「それで、みんな怪我とか大丈夫?

 応急処置ならできるけど?」


 そう言った多治見さんの両手には既に、ガーゼと消毒液が握られている。


 医療人としての自覚はやっぱり高い。

 いつもこうならいいんだが。


 そこに由衣が「怪我より……身体が重いです……」と言葉を投げてきた。


「それってどんな感じ?」

「えっと……全身が痛重くて……力が入らない感じです……」


 その由衣の言葉に「あぁ、俺も……」と続く志郎。

 由衣を挟んで反対側にいる日和も頷いている。


「なるほどね。魔力切れと魔力回路の使い過ぎだろうねぇ。

 真聡君、みんなに痛み止めと魔力回復促進薬を渡してもいい?」


 多治見さんのその言葉に、俺は固まってしまった。


 俺達はこの1年、協会からの支援をろくに受けれずに戦ってきた。


 俺が友人達に話さなかったのもあるが、本当に受けれなかったも事実だ。

 そのため、さっき魔法薬を飲んだのも数カ月ぶりだった。


 つまり、友人達は初めての魔法薬だ。


 ……拒否反応とか出ないよな。


 それに多治見さんも大量に持ち歩いているわけではないだろう。


 俺がそんなことを考えてる間。

 由衣と志郎が多治見さんに魔法薬についての質問をしている。


 ……悩むだけ無駄か。


 そう思った俺は「多治見さん」と声をかける。


「いただけるのは嬉しいですけど、渡して大丈夫なんですか。後で困りませんか」

「あぁ~……。持ち歩いてる分はなくなるかもだけど……まぁ大丈夫!状況が状況だし!

 あとで報告書と一緒に経費であげればいいし!」


 そう言った後、「じゃあ、渡して来るね~」と言いながら、多治見さんは由衣と志郎と日和のところへと行った。


 すると佑希がその背中を見ながら「あの人……大丈夫なのか?」と呟いた。


「腕は信用できる、腕はな」

「真聡の消毒の手際も良かったし、喋ってみても悪い人じゃないし。

 ……ちょっと変だけど」


 俺に続いてそう口にした智陽。

 その言葉を聞いて、佑希と鈴保は何とも言えない表情で、また多治見さんの方を見る。


 ……俺が居ない間に智陽は多治見さんと何を話してたんだろうか。



 そう思ったとき。

 今度は「遅かったか……」という声が聞こえてきた。



 その声は正面右側。智陽と多治見さんが出てきた方からは反対の道路。


 そこから、赤髪の男。



 鳳凰ほうおう ほむらさんが現れた。

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