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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
16節 迷ってても、進め

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第278話 二座視重

 智陽ちはる多治見たじみさんに別れを告げ、急いで戦場に向かう。

 俺は再び、ビルの間の無人の車道を走る。


 ……結局、何故多治見さんは大流市ここに居たのだろうか。


 疑問、あと頼みたいことはある。


 だが、今は話してる場合ではない。

 それよりも、早くケルベロス座を無力化しないといけない。



 そのとき。

 激しい衝撃音と振動が響いてきた。


 焦りながらも、目の前の路地を曲がる。



 すると、さっきも走り抜けた大通りに出た。



 そしてもう1つ向こうの十字路で、ケルベロス座がひっくり返ってるのが見えた。

 その手前には橙色がメインの鎧、志郎しろうの姿も。


 志郎が投げたんだろうか。


 そんな疑問が頭をよぎる。

 だから、今は考え事をしてる暇はない。


 何度やったかわからない問答を1人で繰り広げながらも、左手でお腹の上を右から左になぞる。

 そのままいつもの手順で、生成した山羊座のプレートをギアに差し込む。


 同時に左ポケットから、こぎつね座のプレートを取り出す。



 そして、足を止める。



 さっきプレートが割れたときに、頭の中に浮かんだことが正しければできるはずだ。



 ……いや、できないと困る。



 人々を、友人達みんなを守るに。

 俺はもっと、強くならないといけないんだ。



 そんな思いと共に、左手に力を込めて握る。



 すると手の中で、プレートがまた2つに割れたのを感じた。



 その割れたプレートの右と左をそれぞれの手で持つ。

 そして、ギアの右側と左側に分けて差し込む。



 入った。



 同時にギアが巻かれているお腹を中心に、魔力回路が痺れるように痛み始めた。

 その痛みは、すぐに全身に広がる。



 だけど何故か「行ける」という確信があった。



 俺はその痛みを堪えながらも、身体に力を入れて背筋を伸ばす。

 そして左手を時計盤の9時の所に掲げ、時計回りに一周する。


 そのまま左手を左に伸ばした後、目を隠すように戻す。

 同時に顔の右横で手首が重なるように右手を上げ、両手をグッと握る。


二座にざ視重しじゅう 星鎧生装」


 そう言葉を紡ぐと同時に、俺は両手を下ろす。

 その途中、左手でギア上部のボタンを押す。


 するとギアから紺色の光を放ちながら山羊座が飛び出した。

 続いてこぎつね座も。


 その2つの星座が放つ紺色の光に、俺の身体は包まれる。



 光の中で、俺は紺色のアンダースーツと紺色といつもより黒い鎧を身に纏う。



 そして、光は晴れる。



 同時にまた全身を襲う、痺れるような痛み。



 だけど、星鎧は生成できた。

 なら後は早く終わらせるだけだ。



 人々を、友人達を助けるために。



 俺はそんな決意と共に、再び戦場に向かって歩き出す。

 途中、言葉を紡ぎながら。


「星座の神遺を借り受けて。我人々に、仇名す敵を打ち払う。

 此度こたび魅せるは幻覚の舞。現れ出でよ、我が分身!」


 そう唱え終わると同時に、手を1度だけ叩く。



 その音は、睨み合いが続く静かな戦場に響き渡った。



 その直後。

 ケルベロス座の周りに紺色と黒色、俺と同じ鎧の姿が10体ほど現れた。


 その鎧、俺の分身は一斉にケルベロス座に襲い掛かかる。


 どの分身もケルベロス座の攻撃を避けながら、近接攻撃を食わらせる。


 ある分身は爪を避け、ある分身は1つの頭を掴む。

 そしてまたある分身は、別の頭に蹴りを叩き込む。



 とりあえず、これでなんとか時間は稼げるだろう。



 そう考えていると、「真聡まさと!」という声が聞こえた。

 近くに視線を戻すと、志郎が駆け寄ってきていた。


「大丈夫なのかよ!?」

「あぁ」

「『あぁ』じゃないでしょ」


 その声と共に鈴保すずほを始めとした他のメンバーも集まって来た。


 ……幻覚の分身で時間は稼げても、説教を聞く時間は存在しない。


 そのため俺は先に「さっきの件については後で話を聞く」と言葉を投げる。


「それより先に、ケルベロス座の概念体を無力化する。

 これ以上の戦闘は全員キツいだろ」


 その言葉に、誰も言葉を返してこなかった。


 やはり、全員既にふらふらなのだろう。

 集まってくるときの動きにも、キレがなかったしな。


 ……俺がへび座との会話や人命救助、そして吹き飛ばされて戻ってくるまでの間。

 みんなはずっと、戦ってくれていたのだから。


 そしてその4人よりも先に戦い始めていた由衣ゆいに至っては、星鎧を纏ってすらない。


 ……この1回で、決めなければ。


 俺は頭を切り替えて、状況を把握するために「流星群は撃ったか?」と疑問を口にする。

 すると志郎が「撃ててねぇ」と答えてくれた。


「隙がねぇんだよあいつ」

「あぁ。どの攻撃も一瞬の足止め程度にしかならない」


 続いて佑希ゆうきの言葉。


 ……思っている以上に厄介な相手のようだ。

 しかし、それはそれで話は早い。



 そう思ったとき。

 ビルの間に遠吠えが響いた。



 急いで戦場に視線を戻すと、俺の分身が1体も残っていなかった。



 想定よりも消されるのが早い。

 そしてこのままだと、話が纏まる前にケルベロス座がこっちに来る。


 俺は焦りながらも、もう一度「現れ出でよ我が分身!」と言葉を紡いで手を叩く。


 するとまた、ケルベロス座を囲むように分身が現れた。



 しかし、数がさっきの半分ほどしかいない。



 同時にまた全身を襲う、痺れるような痛み。



 手を叩くという縛りを加えて強度は上げたが、簡易詠唱では限界があるようだ。



 そして今の俺は山羊座とこぎつね座、2つの星座の力を同時に身に纏っている状態。

 やはり消耗が激しいようだ。



 そして呻き声が漏れてしまったのか。

 由衣の「大丈夫!?」という声が飛んできた。


 だが消耗が激しい以上、無駄話の時間がない。


 俺は早口で「このまま俺が時間を稼ぐ」と言葉を発する。


「佑希と志郎は流星群を撃て。他のメンバーは必要そうなら援護をしてくれ」

「分身を維持するのキツいんでしょ。というか、その姿何?」


 鈴保がそんな言葉を投げてきた。


 ……キツいと察してるなら、不必要なことを言ってくるなよ。


 そう思ったとき。

 志郎が「それならよ」と口を開いた。


「これなら、まだマシじゃねぇのか?」


 その言葉と共に志郎がリードギアからプレートを抜き取った。

 そうして見せてきたのは、見慣れない星の並びが刻まれたプレートだった。


 この並び……何の星座だったか……。


 そう悩んでいると。


「君が山羊座に選ばれし、今を生きる人間か」


 そんな声がプレートから聞こえた。

 思わず「は?」という言葉が俺の口から零れる。


 しかし混乱する俺を置いて、プレートからの声は続く。


「俺はヘルクレス座。今を生きる星座に選ばれし人間に力を貸そう」

「らしいぜ。実際、すげぇ力が湧いてくる」


 志郎がそんな言葉を付け足した。


 ヘルクレス。ヘラクレスのラテン語名。

 つまりはギリシャの英雄ヘラクレスの星座。


 ……これは、最高の予定外かもしれない。



 そう思ったとき。

 また、ケルベロス座の咆哮が聞こえてきた。



 視線をケルベロス座に移すと、また分身が全て消滅していた。



 だがこれ以上分身を出すと、俺がもたないだろう。

 それに、よりいけそうな作戦が浮かんだ。


 ならば。


「悪いが、もう少しだけ時間を稼いでくれ。だがすぐに俺が代わる。

 その後は、佑希と志郎は流星群の準備に入ってくれ」


 その言葉に、友人達からそれぞれの返事が返ってくる。


 そして佑希、志郎、鈴保はケルベロス座に向かって走り出した。

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