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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
16節 迷ってても、進め

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第276話 最初の理由

 ケルベロス座の概念体に吹き飛ばされ、気を失った。

 そんな俺は、ビルの吹き抜けの下にあるベンチで目を覚ました。


 どうやら智陽ちはると、学院時代の知り合いである薬師の多治見たじみ 世菜せなさんに助けられたらしい。



 だが、いつまでも寝てはいられない。



 俺は痛み止めと魔力回復促進薬を飲み干し、急いで友人たちのところに戻ろうと動き出す。



 そこに「いつまで、そうやって強がるの?」という多治見さんの声が飛んできた。



 その言葉を聞き、俺の足は思わず止まってしまった。



 ……俺は、強がってるわけじゃない。



 俺は絞り出すように、「別に」と言葉を返す。

 しかし、多治見さんは引き続き言葉を投げてくる。


「……真聡まさと君はさ。何で戦うことを選んだの?」


 多治見さんには、何度か言った。

 なのに、何で今それを聞くんだ。


 そんな苛立ちを感じながらも、振り返って「俺は」口を開く。


神遺の力(この力)を、人間から切り離す。そのために戦う。

 学院を出る前に、俺何度か言いましたよね」

「……でも真聡君。それが無理だって、わかってるでしょ?

 中等部3年だけとはいえ、学院に居たんだから。

 神遺しんい、魔法、魔術は隠せたとしても、この世界とは切っても切れない関係だって」


 多治見さんのそんな言葉に、俺は反論する言葉を失った。



 それは、その通りだからだ。




 俺だって薄々わかっていた。




 次々現れる堕ち星。



 どんどん増える仲間。



 そして、戦うために強くなろうとする友人達。



 この1年で俺は「切り離すことは無理だ」と。

 そもそも「隠すことすらも難しい」とどこかで感じていた。



 ……だったら俺は、どうしたらいいだよ。



 そこに、「真聡君のその理由はさ」という多治見さんの言葉が、また飛んできた。


稀平きっぺい君のことがあったからでしょ?

 確かに、あれは辛かったと思う。両親を亡くしてる真聡君には、余計に。


 でも稀平君は生きてて、助けることができた。

 だったら、もうその荷物は下ろしていいんじゃない?」


 優しく語り掛けてくる多治見さん。



 だけど俺は、どうすればいいのかわからなくなっていた。



 そんな言葉すら発せれない俺に、多治見さんの言葉は容赦なく続く。


「もう一度聞くね。

 真聡君が戦おうと思った、()()()()()は何?

 何で幼馴染との学校生活を捨ててまで、学院に来たの?」


 悔しさと怒りでいっぱいになっていた俺の口から、捻りだすように「そんなの……」と言葉が漏れる。


「父さんと……母さんが……」



 小学校卒業祝いで、スペクトラムランドに行くはずだったあの日。




 交通事故を起こして、亡くなったから。




 一緒に居たのに、俺だけが生き残ったから。




 助けることが、できなかったから。




 ……そうか。




 俺はそこで、ようやく最初の理由を思い出せた。




 ……いや、でも俺の考えは、変わらない。


「俺は、誰も悲しんで欲しくない。誰にも理不尽によって泣いて欲しくない。

 だから俺は、戦い続けるしかないんですよ」


 だから、俺は友人達には戦って欲しくない。



 帰る場所がある、みんなには。



 そこに「だったら」という、智陽の声が飛んできた。


「いや、それなら余計に。みんなと一緒に戦って。

 真聡に何かあったら、私達が悲しむ。私達が泣く。

 ……だから、独りで戦わないで」


 いつもよりも声が大きく、真っすぐな智陽の言葉。



 俺は、その言葉でハッとした。




 もう俺独りでは、戦えない。



 全部を助けることはできない。



 それは、この1年で薄々感じていた。



 だから、友人達を頼る。



 そして俺は、そんな友人達の1番前に出ればいい。



 俺が、一番前に出て。




 全ての理不尽を払えばいいんだ。




 今は弱くたっていい。

 友人を頼ればいい。




 その代わりに、早く強くなって皆を守ればいい。




 ……何でこんな簡単なことが、わからなかったんだろうな。



 俺がそんな考えに達してる間。

 多治見さんは智陽に続いて「そうそう」と口を開いていた。


「せっかくこんなに、いい友達がいるんだからさ。

 もっと頼ったらいいと思うな」

「うん、頼って。

 いや。ちゃんと頼れ」


 俺は智陽の言葉に「あぁ」とだけ返事をする。


 別に適当に流したわけじゃない。

 頭の中では、既に次を考えていたからだ。



 さっきの戦闘で、ケルベロス座を押し切ることができなかった。

 由衣ゆいを始めとした友人が既に長時間戦ってるはずなのに。



 じゃあ、どうすればいいか。




 ……さらに増やした数で攻めたらいい。




 今の俺にはそれができる方法がある。



 とりあえず考えが纏まった俺は「智陽」と声をかける。

 すると「……何?」と少し不機嫌そうな声が返ってきた。


 ……もしやさっきの返事、流したと思われたんだろうか。


 俺は用を言うよりも先に「悪い」と言葉を発する。


「流したわけじゃない。ケルベロス座を倒す方法を考えていた。

 それで。こぎつね座は、まだケースの中にあるか?」

「あるけど……」


 足元のケースをさっき俺が寝かされていたベンチに上げながら、そう返してきた智陽。

 俺は駆け足で智陽の傍まで戻る。


 すると智陽はケースの中からプレートを取り出しながら、「何する気?」と聞いてきた。

 俺はプレートを受け取ってから、簡単に纏めた考えを口にする。


「大技を叩き込むにも、皆と話すためにも。まずは時間を稼がないといけない。

 だから俺がこぎつね座の力を使って、分身を作る。それなら、まだ時間を稼げるはずだ」


 これなら、まだ何とかできるはずだ。


 そう思いながら、俺は受け取ったプレートを左手で強く握りしめる。




 そのとき。

 左手の中で違和感を感じた。



 俺は慌てて左手を開く。



 するとプレートは、手の中で()()()真っ二つに割れていた。

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