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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
16節 迷ってても、進め

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第274話 花吹雪

 遠くから弓矢で援護してくれる射守いもり君とからす座と協力して、3頭犬を倒そうとする私。


 そこに、待ち望んでいたみんなが来てくれた。


 星鎧を纏ったゆー君、しろ君、すずちゃんが前に出てくれて、ひーちゃんが「大丈夫?怪我は?」と聞いてくれた。



 みんなが来てくれるのを、ずっと待ちながら戦ってた。

 だから凄く嬉しかったし、安心した。



 でも、そんなみんなの姿を見た途端。

 私の星鎧は、光となって消えてしまった。



 正直、もうくたくただった。

 魔力も星力も、あと普通に体力も。きっと限界だったんだと思う。 



 でもやっとみんなが来てくれて、ここからが本番のはずなのに。



 だけどみんなは「少し休んでていい」って。

 ひーちゃんは「私達が来たから安心したんでしょ」って言ってくれた。


 だから私はそんな皆に甘えて、後ろで休みながらちーちゃんからいろんな話を聞いていた。


 麻優まゆちゃんからちゃんと連絡が来たこと。

 外やSNSが大変なことになってること。


 あの3つ頭がある犬はケルベロスって言うこと。

 でもあのケルベロスは本当の動物なのか、星座概念体なのかわからないってこと。


 ここまで、超常事件捜査班の人がたくさん助けてくれたこと。



 そして、まー君がへび座の足止めをしてるってこと。




 ……私も、戦いたかった。




 せっかくみんなが来てくれたんだし、早くケルベロスを倒してまー君を助けに行きたかった。




 だけど、私の身体は動かなかった。

 ただ、みんなが戦ってくれてるのを見てることしかできなかった。



 そんな自分が、悔しかった。



 あと、からす座は気が付いたら居なくなってた。

 たぶん、みんなが来てくれた時に逃げたんだと思う。



 でも、みんなが居ればすぐに終わると思った。

 射守君は変わらず矢を撃ってくれてるし。



 今まで私達は、みんなで力を合わせて勝って来たんだから。




 でも、思ったように上手くいかなかった。




 それどころかケルベロスの攻撃は、どんどん激しくなっていく。




 そんなケルベロスに、みんな押されていく。

 そんなとき。



 紺色と黒色の鎧がいきなり左の大通りから飛び出してきた。

 紫の光を放つ翼で、空を飛んで。



 まー君だ。

 へび座はどうなったかわからないけど、こっちに来てくれたんだ。



 だけどまー君は、まるで自分1人しか居ないみたいにケルベロスと戦い始めた。



 私達の声も、聞こえてないかのように。



 もちろん、心配だった。

 「また1人で勝手にやらないで!」と叫びたくもなった。



 でも「まー君なら何か考えがあって、何とかできるのかも」とどこかで思っている私もいた。




 けど、まー君も上手くいかずに吹き飛ばされた。



 そんなまー君を助けようと、ゆー君、しろ君、すずちゃん、ひーちゃんがケルベロスと戦いにもう1回前に出た。

 その間に、私はちーちゃんと一緒にまー君を助けに走り出す。



 だけど突然。

 ケルベロスが3つの頭から黒い靄、澱みを吐き出した。



 その澱みによって、4人が吹き飛ばされる。

 そして私達の動きも邪魔される。



 その間に、靄状の澱みはまー君へと襲いかかった。



 まー君は準備していた流星群で澱みを押し返そうとしてる。



 でも、途中で負けてしまった。

 まー君の姿は、そのまま澱みに呑まれて見えなくなる。



 ……助けないと。



 私は再び、まー君の元へ走り出す。

 止めようとしてくれるちーちゃんを気にせず。



 私が辿り着くまでに、澱みが晴れた。



 まー君の星鎧は消えてない。

 だけど、膝をついていた。



 そんなまー君に、ケルベロスが迫る。



 そしてケルベロスのひっかきを受けて、まー君は吹き飛んで行った。




 助けに行きたかった。

 無事なのか確認したかった。



 でも星鎧が消えてしまっている私は。

 ケルベロスを追い抜いて、まー君を追いかけることはできなかった。



 そして、ケルベロスは振り返ってこっちを向いた。



 ちーちゃんが私の腕を掴んで「由衣!下がるよ!」と言ってる。

 でも既に3つの頭が私達を捉えている。



 下がるべきなのはわかってる。

 まだ、車3台分ぐらいの距離はある。



 だけど、概念体相手にこの距離は逃げられない。



 もう、1年も戦ってるんだもん。

 なんとなく、わかってしまった。



 そしてそんな嫌な予感は当たった。



 私達が後ずさりを始めた瞬間。

 ケルベロスが地面を蹴った。


 ……とりあえず、せめてちーちゃんは守らないと。


 そう思って、前に出たとき。



 「目を閉じろ!」というゆー君の声が聞こえた。



 その声で私は咄嗟に目を閉じて守る。


 その直後、目の前で目を閉じてても眩しい光が炸裂した。

 同時に、風を切るような音と何かがぶつかったような音が聞こえた。


 光が収まったので目を開ける。


 すると既に、ゆー君、しろ君、すずちゃん、ひーちゃんが既に前に出ていた。

 見えないながらも暴れるケルベロスを、抑えようとしてくれるみんな。


 そんなみんながケルベロスの攻撃を避ける姿は、疲れ切っているように見えた。

 みんなふらふらとしていて、動きにキレがなくなってきてる。



 …………私だけ、見てるだけなんて。



 でも悔しがってるだけじゃ、何もできない。



 なので私は両手を握りしめながらも「ちーちゃん」と口を開く。


「……何?」

「まー君を探してきて欲しいの」

「いいけど……由衣ゆいは?」

「私は、みんなを手伝う。

 1人だけ見てるだけなんて、できないから」


 そう言った後、私は隣にいるちーちゃんを見る。


 ちーちゃんは、私をまっすぐ見ていた。

 当然、目が合った。



 数秒経って、ちーちゃんは息を少し吐いた。

 その後、「わかった」と言ってくれた。


「でも由衣、無理したら駄目だからね」

「……うん」


 私の返事を聞いた後。

 ちーちゃんは「真聡まさとは絶対見つけるから」と言って、黒いケースを持って大通りを左へ走っていった。


 そしてちーちゃんの背中は、通りを曲がって見えなくなった。

 私は改めて、戦場に視線を戻す。


 目が見えてるとしか思えない、相手を的確に狙った攻撃がみんなを襲っていた。


 もう既にケルベロスは見えるようになってるみたい。

 そんなケルベロスの攻撃を避けるみんなは、やっぱり限界が近そうに見えた。



 ……戻らなきゃ。



 私はその決意と共にもう一度、なんとかプレートを生成してギアに差し込む。

 そしていつもの手順を取って、ファイティングポーズで構える。


「星鎧生装!」


 そう叫ぶと同時に、両手を下ろしてギアの上側のボタンを押す。

 すると、ギア中心部から牡羊座が。



 ……飛び出さなかった。



 その衝撃に、思わず私の口から「嘘……」と言葉が漏れる。



 ギアが使えないなんて、最初の時以来。



 もし、ギアが使えなくなったら。



 もし、戦えなくなったら。



 最悪の想像が、頭の中に溢れてくる。



 そんな恐怖に溺れそうになったとき。

 凄く痛そうな衝撃音がビルの間に響いた。


 私は慌てて、いつの間にか下を向いていた視線を上げる。



 目に入ってきたのは、すずちゃんがビルの外壁からずり落ちるところだった。


 すずちゃんの星鎧はまだ消えてない。

 だから、無事ではあると思う。


 でもビルの壁はへこんでるから、絶対に身体は痛いと思う。


 そしてそんなすずちゃんに追撃をさせないように、ゆー君としろ君がケルベロスの前に飛び出した。


 だけど2人も吹き飛ばされて、ビルの外壁に激突した。



 そこにひーちゃんがケルベロスの1つの頭の横顔に水弾を撃ち込んだ。



 当然、ケルベロスの3つの頭はひーちゃんの方を見た。



 ケルベロスが、ゆっくりとひーちゃんとの距離を詰め始める。



 でもひーちゃんだって、もう限界のはず。

 それにゆー君達と違って、距離が近い戦いは苦手のはず。



 そして吹き飛ばされたみんなは、必死に立ち上がろうとしてる。

 でも、すぐに立てないみたい。



 ……本当に、私が何とかしないと。



 私は必死に考える。



 星鎧が生成できなくなってる私が、この状況を何とかするために。



 ……そうだ。

 星鎧が生成できなくても、羊だけでも生成出来たら。



 その方法を思いついた私は、両手を前に突き出す。

 そして、必死にいつもの私の杖が両手の中に生成されるのをイメージする。



 すると、両手の間が紺色と赤色の光を放ち、アニメとかでよく見るような杖が。

 いつもの私の杖が現れた。



 ……まだ、行ける!



 ひーちゃんは水弾を撃ちながら、ケルベロスの周りを走って跳んで回ってる。



 私が、ひーちゃんを、みんなを助けるんだ!!!



 そんな決意と共に私はケルベロスに杖先を向け、「お願い!!!!!」と全力で叫ぶ。



 すると、杖先が緑色に輝いた。




 そして、私の杖先から現れたのは。




 大量の花びらだった。




 その花びらは、一直線にケルベロスに向かって行く。




 そして花びらは、花吹雪のようにケルベロスを襲った。

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