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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
16節 迷ってても、進め

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第268話 この街中で?

「いやもうさ、本当にMIRA(ミラ)ちゃん可愛かったよね!」

由衣ゆいちゃん……その言葉、もう3回目だよ?」

「……あれ?」


 麻優まゆちゃんのその言葉に、私は首を傾げる。

 そんな私は見て、麻優ちゃんは小さく笑いながらストローに口を付けた。


 ……確かに、何回も言ってるかもしれない。


 MIRAちゃんのサイン会は無事に終わった。

 今はその後に、同じビルにあるカフェで休憩をしているところ。


 でも本当にMIRAちゃんは可愛かった。

 会うまでは緊張してたけど、顔を見たら緊張が吹き飛んだぐらい可愛かった。


 顔が小さくて、座ってるのにスタイルが本当にいいのがわかった。


 しかも、サインを書いてもらった雑誌を受け取るときに「いつも本当にかわいいなと思いながら、雑誌見てます!これからも頑張ってください!」て言ったんだよね。


 ……今思えば、もうちょっといい言葉があった気がするけど。


 でもそしたら「応援ありがとう。可愛い子に応援してもらえて嬉しいな」って言って貰ったの。


 あのMIRAちゃんに可愛いって言って貰えるなんて……夢みたい。

 もう……MIRAちゃん、最高。


 サイン会をまた噛みしめていたそのとき。

 「由衣ちゃ~ん……」という声が聞こえてきた。


 気が付くと、私の目の前で麻優ちゃんの手のひらが上下に動いている。

 私は慌てて「あ……ごめん」と口を開く。


「MIRAちゃんの可愛さを思い出してた……」

「その気持ちはわかるけど、ゆっくりしてると時間なくなるよ?」

「あ」


 そうだった。服を一緒に見てもらう約束をしてたんだった。

 ゆっくりしてるとその分だけ時間が無くなっちゃう!


 私は急いでストローに口をつけ、残り少しのミルクティーを飲み干す。


 その勢いのまま立ち上がって「じゃあ行こ!」と口を開く。

 すると、麻優ちゃんは笑いながら立ち上がった。


 ……何が面白いんだろう?


 そんな麻優ちゃんに私は「なんで笑ってるの?」と聞いてみる。

 でも「別に〜?」と言われてしまった。


 そんな会話をしながらも、私達は食べ終わったトレーを返却口に置いて、カフェを後にする。


「とりあえず、服屋さんのフロアまで移動しよっか」

「そうだね」


 その会話の後、エスカレーターまで移動する。

 そしてそのまま上の階へ向かう。


 その途中、下の階にあるさっきの本屋さんが見えた。


 ……本当に今日、サイン会に行けて、MIRAちゃんに会えて良かったな。

 朝はあんなに緊張したけど……。


 …………あれ?


 そこでようやく、私は大事なことを思い出した。


 私はエスカレーターを降りると同時に、慌てて前にいる麻優ちゃんに「ねぇ」と話しかける。


「どうしたの?」

「朝、一緒に本屋さんまで行った女の子……終わってから会った?」

「見てないよ。急にどうしたの?」


 何故かサラッと返してきた麻優ちゃん。

 私達はエスカレーターの降り口から少しだけ移動して、話を続ける。


「それが……今思い出して。

 それに、名前も聞いてないよね……?」

「聞かなかったね」


 またサラッと答えた麻優ちゃん。


 私は疑問が我慢ができなくて、「……何でそんな風に言うの?」と聞いてしまった。


「……あれ。別にもう会わない相手だと思ったから、そこまでしなくてもいいかなって思ったんだけど……」


 ……そう言われたらそうかもしれない。


 私は一度会って、出来た人との繋がりは大事にしたい。

 でも、みんながそうとも限らない。


 ……私の考えを押し付けるのは良くないよね。


 首を傾げている麻優ちゃんに、私は「ごめん」と口を開く。


「ちょっと気になっちゃって。

 でも……気づいてたの?私が名前を聞いてないこと」

「それはね。でも、見てないのは本当だよ。

 見渡したけど見当たらなかったんだよね……」


 そっか……。

 確か……別れるときは「私の番号、もっと後ろなんです。楽しんできてください」って言ってたよね。


 ……後ろだから見なかったのかな?


 そう考えていると、麻優ちゃんが「それで、由衣ちゃんは?」と聞いてきた。


 私は急いで考えを戻す。


 えっと……何だっけ?

 ……あ、そうだ。


「……私は、MIRAちゃんのことで頭がいっぱいで名前を聞くのも、終わった後に探すのも忘れてました」


 私の答えを聞いた麻優ちゃんの口から「あぁ〜……」という声が溢れた。

 目が……これ、笑ってるのかな?


 ……私、呆れられてる!?


 そんな考えにたどり着いたとき。

 麻優ちゃんは「まぁ」と口を開いた。


「きっと大丈夫だよ。

 あの子、私達と同じぐらいの年齢だと思うから、きっと1人で帰れるよ」

「それは……そうだよね」


 うん。麻優ちゃんの言う通り。

 最寄り駅まで来れるんだから。心配しすぎはきっと失礼だよね。


 それに、終わってしまった事を気にしすぎても仕方ないし。


 私は気持ちを切り替えて「うん」と呟く。


「では麻優先生、よろしくお願いします!」

()()先生って……。私は自分が着たい服を着てるだけなんだけど?」

「それがとっても可愛くておしゃれなの!」

「も~……。仕方ないなぁ~」

「やったぁ!」


 そんな会話をしながら、私達はまた移動を始める。

 もう1回エスカレーターに乗って、服屋さんのフロアを目指す。



 服屋さんの階に着いた私達は、いろんなお店を見始める。

 お店の外から見たり、中に入って直接手に取って見たり、試着してみたり。


 そして「これ!買いたい!」と思った服があれば、買う。

 そんな、楽しい素敵な時間を過ごす。




 だけど。

 そんな素敵な時間は、いきなり終わりを迎えた。




 「次はどこのお店を見る?」という話をしながら、フロアの中を移動をしていたとき。



 小さな衝撃音が聞こえて、少しだけ建物が揺れた。



 私は思わず周りを見渡す。



 周りの人も、数人だけど周りを見渡している人がいる。



 でもみんな、気にせず自分の時間に戻っていく。




 だけど私は、無視できなかった。




 なんだか、嫌な予感がして仕方なかった。




 そんな私に麻優ちゃんが「由衣ちゃん?どうしたの?」と声をかけてくれる。


 ……今日は、沢山麻優ちゃんを振り回してる。

 流石の私も、申し訳ないって気持ちはある。



 でも、私には。

 このもやもやを無視して、服を見続けることはできない。



 私は深呼吸をした後、覚悟を決めて「ごめん、麻優ちゃん」と口を開く。


「急用を思い出したから、今日はここで別れるね」


 「本当にごめんね!!」と叫びながら、私は走り出す。

 麻優ちゃんの「え!?どうしたの!?」という声を、背中に受けながら。


 行先は、どこか外を見下ろせる場所で下にも降りやすいところ。

 だから私は、数回下の外のデッキに向かって移動する。


 止まって乗るべきエスカレーターも、気持ち急ぎながら歩いて降りる。



 そして、息を切らしながらも私は建物を出て、デッキに辿り着いた。



 そんな私の目に飛び込んできたのは。



 大都会の大通りで争う、3体の異形の姿だった。



 私は人を掻き分けながら、デッキの手すり際まで移動する。

 そして目を凝らす。



 戦っているのは、へび座とからす座。



 そして頭が3つある、大型バスぐらいのサイズの犬だった。



 あの犬は多分、概念体だよね。



 ……何で堕ち星が戦ってるの?何でこの街中で?



 何で?



 何で?



 私の頭の中が、「何で?」で一杯になっていく。



 そのとき。

 「やっと追いついた!」という声が聞こえた。



 予想外の声に、私の意識は疑問の渦から現実に引き戻された。



 そして隣を見ると、息を切らした麻優ちゃんが居た。



 さっき、切り捨てるように置いてきたのに。



 驚いた私の口から、「何で……?」と言葉が漏れる。


「何でって。由衣ちゃんが考えなしで動かないのは知ってるから。

 きっと、由衣ちゃんなりの考えがあると思って。

 それで、あれと戦うの?」


 麻優ちゃんはそう言いながら、奥の大通りの方を向いた。


 視線を戻すと同時に、堕ち星と概念体は戦いながら奥に消えていった。

 もう、ここからは見えない。


 ……待って?


「私、麻優ちゃんにその話したっけ!?」

「されてないけどわかるよ。

 桜子ようこちゃん達も気が付いてるんだから、私だって気が付いてるよ」


 それは……確かにそうだね。

 もう、1年の付き合いだもん。


 でも、話してる時間はない。


 私は急いで「そうだよね」と口を開く。


「……だから私、行かないと。

 本当にごめんね。私が一緒に買い物したいって言ったのに」

「仕方ないよ。買い物はまた今度行けばいいし。

 それより、そのまま行くつもり?」


 麻優ちゃんのその言葉に、私は「え?」と返す。


 だって……そのままって……。


「このまま行くしかないよ?」

「にもつ。買った服とか、サイン書いてもらった雑誌。そのまま持って行くの?」

「あ……」

「私、持っておくから。その方が気にしなくていいでしょ?」

「麻優ちゃん……」


 確かに買った服も、MIRAちゃんにサインを書いてもらった雑誌も。

 汚したくないし、無くしたくない。


 信頼できる友達に預けれるなら、それが一番。


「でも……いいの?」

「うん。まぁ……先に帰ってるかもしれないけど。

 そのときは、また後日渡すから。

 あ、だからスマホとか財布は預けないで欲しいかな……」

「ううん。鞄だけで凄く嬉しい」


 その言葉の後、私は荷物を確認する。


 持ってるものは鞄と服が入った紙袋。

 スマホはポケット、スマホケースにICカードも入ってる。

 大丈夫。


 そして私は「この2つ、お願い」と鞄と紙袋を麻優ちゃんに渡す。


「お財布入ってるけど、ICカードはスマホケースに入ってるから帰れるから大丈夫」

「わかった。大事に預かるね。

 ……気を付けてね」


 私はその言葉に「うん」と頷いてから、麻優ちゃんに背中を向ける。

 そして、遠くに聞こえる衝撃音に向かって走り出す。



 その直前。

 もう1つ、大事なことを思い出した。


 私は振り返って「もう1つお願いしてもいい?」と口を開く。


「どうしたの?」

「まー君に、このこと連絡して欲しいなって……」

「わかった。ちゃんと連絡しとく」

「本当にありがと!」


 私はそう言った後、今度こそ走り出した。



 突然大都会の真ん中で起きた、怪物たちの戦いに向けて。

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