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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
16節 迷ってても、進め

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第267話 案内します!

 高架を走る電車が駅に入って、どんどん速度を落としていく。

 それとは反対に、私の心臓のドキドキは加速していく。


 そして遂に電車が止まり、目の前にある扉が開いた。

 私達はその扉から、駅のホームへと降りる。


 ……もう、我慢が出来ない。


「緊張する~~~!!!」


 私の口から、そんな呟きが飛び出した。

 すると麻優まゆちゃんが「大丈夫……?」と聞いてくれた。


「大丈夫だけど……大丈夫じゃない……」


 思わず、そんな返事をする私。


 私がこんなにも緊張している理由。

 それは、今から行くのがMIRA(ミラ)ちゃんのサイン会だから。


 だってあのMIRAちゃんに直接会えて、サインまで書いてもらえんだよ!?

 しかも渡してもらうときの一瞬だけど、話せるんだよ!?


 緊張しかしない……!!!


 昨日、2時ぐらいまで寝れなかったぐらいには緊張してる。


 そんな緊張している私を麻優ちゃんが「ほら、こっちだよ」と手を引いてくれる。

 そして連れてきてくれたのはホームのベンチ。


「とりあえず座って。それで、深呼吸」


 そう言われて、私はベンチに座る。

 そして深く息を吸って、息を吐く。


「どう?落ち着いた?」

「駄目……口から心臓が出そう……」


 私のその返事に、麻優ちゃんは「駄目かぁ……」と呟いた。

 そして私の隣に座る。


 本当にごめんね……。


 ……でも。


「麻優ちゃんは緊張してないの?」

「してないってわけじゃないけど……由衣ゆいちゃんほどじゃなかぁ……」

「何でぇ……?」


 何で私だけこんなに緊張してるんだろう……。


 私は落ち着くために、先に買ってたペットボトルのりんごジュースを鞄から取り出す。

 そして少しだけ飲んでみる。


 飲んだ後、また深呼吸をしてみる。


 そこに、スマホを見ていた麻優ちゃんが「……どうする?」って聞いてきた。


 どうするとは。

 実は今、時間がまだ午前中でサイン会までは2時間ほどある。

 今から会場の本屋さんに行っても、結構待つことになる。


 じゃあ何で早く来たのか。

 それはせっかく都会に麻優ちゃんと遊びに行くなら、一緒に服とかを見たいから。


 麻優ちゃん、本当に凄くおしゃれだからいつも色々教えてもらってる。

 今日だってとってもおしゃれ。


 スラっとして落ち着いたような印象の服装なのに、何でか凄く可愛いくも見える。


 だから今日は少し早めの時間から、暗くなるまでって予定だったんだけど……。



 緊張しすぎて、考えが纏まらない。


 えっと……。


「直接……本屋さんに行こうかな……」

「まだ早いけど……大丈夫……?」

「うん。今服見ても、多分何も考えれない……」

「それなら……行こっか」


 麻優ちゃんはそう言った後、立ち上がった。


 だけど私の方を見て「でも」と口を開いた。


「歩ける?大丈夫?」

「それは大丈夫。一応、落ち着いてきたから。

 まだ緊張してるけど……」


 私のその言葉に麻優ちゃんは困った顔をしてる。

 でも、これ以上に困らせるのは本当に嫌だ。


 だから私は「とりあえず!行こ!」と言って立ち上がる。


「それに本屋さんまで行けば、後は待つだけだから。

 逆に落ち着くかもしれないし!」

「そう……?」


 そんな会話の後。私達は本屋さんが入ってるビルに一番近い改札を目指して歩き始める。


 大流おおながれ駅は星雲せいうん駅と違って、何本かの路線が通ってるから駅が広い。


 出口も何個かあって、ホームから移動してすぐ改札ってわけでもない。

 だから迷う人は本当に迷うと思う。


 私は結構来てるから慣れてるけど。

 最近だと警察病院に行くときはこの駅で降りるし。



 そんな駅だから「今回使う改札は、もう1つ向こうの階段だよね」という話をしていたそのとき。



 私達はスマホとホームの案内板を交互に見ている女の子とすれ違った。



 でも、麻優ちゃんは気にせず私に話しかけてくる。



 だけど、私はその子のことが気になってしまった。



 私は我慢できずに「麻優ちゃん、ちょっといい?」と言葉を遮る。


「どうしたの?

 ……緊張で気分悪くなってきた?」

「そうじゃなくて……あの子」


 そう言いながら、私は麻優ちゃんの視線をさっきの子に誘導する。


「……道に迷ってるのかな?」

「たぶん……この駅広いから……」


 私の言葉を最後に、会話が終わった。


 電車が入ってくる音、アナウンスとかの駅の音、人の足音や話声が沢山聞こえる。


 でも、私の頭の中はその音が気にならないぐらいグルグル回っていた。



 困ってそうな人を見てしまった。

 私にできることなら何かしたい。



 でも、今日一緒に居るのは麻優ちゃん。

 まー君とかひーちゃんなら、走っていったんだけど……流石に……ね。


 それに今日は会ったときから「緊張して変な感じがする……」って言って、迷惑かけてたし。


 これ以上、迷惑をかけたくない。

 でも……。



 そこまで考えたとき。

 麻優ちゃんが「あ、わかった」と口を開いた。


「話、聞きに行きたいんでしょ」 


 その大正解の麻優ちゃんの言葉。

 私の口からは思わず「あはは……」と乾いた笑いが零れてしまった。


 ……あれ?

 でも私、麻優ちゃんと一緒に遊びに行くときは、あんまりそんなことしてなかった気がするけど……。


「……何でわかったの?」

「流石に分かるよ。もう1年の付き合いなんだし」

「そっ……か」


 もしかして麻優ちゃん、凄く人のこと見てる?


 そんなことを考えていると、麻優ちゃんは「それより」と口を開いた。


「由衣ちゃんは大丈夫なの?

 緊張、収まってないでしょ?」

「収まってないけど……それより、気になる……」


 その言葉を聞いて、麻優ちゃんはため息をついた。


 ……呆れられてる!?


 私は慌てて「ごめんね。朝から迷惑かけてるのに」と口を開く。


「いやいや。そこは気にしてないから。

 ただ、由衣ちゃんはやっぱり優しい子だなって」

「そう……?そうかな?」

「そうだよ。優しいよ。

 ほら、行こ。私も手伝うから」


 その言葉の後、麻優ちゃんはまだスマホと案内板を交互に見ている女の子に向けて歩き出した。

 「ありがと!」と言ってから、私も歩き出す。



 そして女の子のところまで戻って、少し後ろで私達は立ち止まる。

 次に私は「あのぉ……道に、迷ってますか?」と声をかける。


 するとその子は「え?」と呟きながら、私の方を向いた。


 その子は眼鏡をかけて、身長は私と同じくらい。

 年齢は……同じか……少し下かな?

 とりあえず、同年代ではあると思う。


 でもその子は、今度は私と麻優ちゃんの顔を交互に見ている。



 そして、何も言ってくれない。



 ……聞き方、なにか間違えた?


 そう思っていると「あ~……」という声と一緒に、麻優ちゃんの手が私の肩に乗った。


「この子、人助けが趣味だから」

「え」


 私は咄嗟に「そんなことないよ!?」と反論しようとした。

 でも、困ってる人は無視できない。



 ……否定はできないかも。



 そんな複雑な感情の結果、私はまた「あはは……」と笑うことしかできなかった。


「だから困ってそうなあなたを見て、無視できなくてさ。

 駅員さんを呼んできた方が良いかな?」


 麻優ちゃんのそんな言葉に、女の子は「あ……いや……えっと……」と口を開いた。


「ここに……行きたくて……」


 その言葉と一緒に、女の子はスマホを私達の方に向けた。

 私達はそのスマホの画面を覗き込む。


 そこに移されていたのは、マップアプリの本屋さんのページ。


 この本屋さん……。


「私達が今から行くところ?」

「だね」


 そう。

 本当に今から私達が行くつもりの本屋さんが表示されていた。


 そして私達の言葉に、女の子は「え?」と呟いた。


「案内します!私達も今から行くので!」

「え……でも……良いんですか?」

「目的地が一緒だから。大丈夫」

「です!行きましょ!」


 そう言って、私は再び本屋さんがあるビルに一番近い出口を目指して歩き出す。


 でもこんな偶然、あるんだね。

 ……もしかして。


 1つの可能性に気が付いた私は、歩きながら女の子に「あの」と話しかける。


「もしかして……MIRAちゃんのサイン会ですか?」

「あ、えっと…………はい」


 その返事を聞いた私の口から「やっぱり!!」という声が飛びだす。

 そして驚きと嬉しさから足が止まった。


「MIRAちゃんのファンってことですよね!」

「まぁ…………はい。そんな……ところです」


 やっぱりMIRAちゃんって凄い……!

 そんな感情と一緒に、私は「MIRAちゃん凄く可愛いですよね!どこが好きですか!?」と質問する。


 そこに「由衣ちゃん、ストップ」という麻優ちゃんの声が飛んできた。


「困ってるから。それに、本屋に着いてからでも話はできるし」


 その言葉で私は我に返った。

 というか……いつの間にか後ろにいたはずの麻優ちゃんが前にいる。


 そして次に私は、目の前の女の子の目が凄く泳いでるのが目に入った。


 ……やっちゃった。


 私は急いで「ごめんなさい……」と謝る。


「大丈夫……です。

 行きましょう、とりあえず」


 そう言って女の子は私を追い抜いて行った。


「ここの階段を下りた先にある階札が一番近いので」

「は、はい」


 そんな会話をしながら、麻優ちゃんと女の子が階段を下りていく。

 私は「待って~!!」と言いながら、急いで後を追う。



 その後、私達は無事に本屋さんに着いた。

 そして時間が来るまでは本屋さんをうろうろしたり、お喋りもしたりしてサイン会が始まるのを待った。

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