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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
15節 自分の力で

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第264話 仲良くしてよ

 永川えがわ 佳奈かなに「避けてませんか?」と指摘された。

 俺はそんな永川に「話す理由がないからだ」と言ってから、下駄箱を離れた。



 だが実際、戦いに関係ない相手と不必要に関わる理由はどこにもない。



 階段を1人で上がり、教室がある階に辿り着いた。

 俺はそのまま足を止めずに教室の方へ向かう。



 しかし階段から渡り廊下に移動したとき。

 後ろから走ってくる足音が聞こえた。

 


 その次の瞬間。



 少し息を切らした永川が、俺の前に立ちはだかった。

 「ま、まだ話は、終わってないです……」という言葉と共に。


 永川の目は、真っすぐに俺を見ている。



 ……視線が痛い。



 俺は目を逸らしながら「……何もないだろ」と言葉を返す。


「あります。

 ……わ、私と。と、友達になってください!」

「…………は?」


 俺はそう呟いた後、固まってしまった。

 永川に視線を戻してから。



 そして、永川は相変わらず真っすぐに俺を見ている。



 ……いや、意味が分からない。



 思考が停止した俺は、「なぜだ」と聞き返す。


「だ、だって。もうすぐクラス替えじゃないですか。

 それに、由衣ゆいちゃんって共通の友人がいますし。せっかくだから、陰星いんせいさんとも仲良くしたいなって」


 ……その必要は、ないだろ。


 俺は、澱みや堕ち星と戦うのが役目だ。

 色々と予定とは変わったが、そこは変わらない。



 そんな俺が、不必要に非魔師の人達と関わると逆に危険だろう。



 だが、これは言える理由ではない。


 なので俺は「別に、俺と仲良くしても面白いことはない」と言い返す。

 そして、永川の横をすり抜けて教室へ向かう。


 背中に「ちょっとまー君!!??」という由衣ゆいの声が飛んでくる。

 だが、気にせず俺は歩き続ける。


 渡り廊下の角を曲がり、自分の教室へ向かう。


 ……クラス替えをしたら、どうせ話さなくなる仲だ。

 それぐらいなら、関係を増やす必要は無い。


 そう思いながら、自分の教室に入る。

 自分の席に目を向けると、今日も佑希ゆうき智陽ちはるが集まっていた。


 2人揃って朝の挨拶をしてくるので、とりあえず「おはよう」と返す。

 その後、佑希が「座れよ」と席を譲ってくれたので、俺は鞄を置いて自分の席に座る。


 ……いや、俺の席なんだがな?



 とりあえず、一息つく。

 朝から色々言われ、少し疲れた気がする。


 そこに。


「なんか……あったか?」

「ね。なんかいつもより疲れてない?」


 そんな言葉を順番に投げてきた佑希と智陽。


 ……顔に出てるか?


 そう考えながらも、俺は「ちょっと絡まれただけだ」と返す。



 その直後。

 教室に「ちょっと陰星く~ん?」という声が響いた。


「佳奈をイジメるなんて、どういうつもり?」

「そうだ~!」


 その声と共に、俺の前に永川といつも一緒に居る田渕たぶち 桜子ようこ荻野おぎの 乃々ののかが現れた。

 もちろんその後ろには永川も居る。


 ただ……永川は「2人とも……そこまでじゃないから……!」と言ってないか?


 しかし。


「というか陰星君。いつの間に佳奈と仲良くなったの?」

「佳奈も陰星君、怖いんじゃなかったの~?」


 そんな風に俺と永川に聞いてくる田渕と荻野。


 だがその話をすると……いるか座の堕ち星の話をする必要がある。

 不必要に広めるのは秘匿違反だし、入海いりうみ先輩のプライバシーもある。


 なので俺は「それは言えない」と返す。

 すると永川も「それは……言えないかな……」と返した。


「でも、もう怖くはないよ。

 由衣ちゃんの幼馴染なだけは……ある。陰星君は、凄く良い人だよ」


 永川のその言葉に田渕と荻野は「へぇ~……」と呟く。

 そして、2人の視線が俺と永川を交互に捉える。


 ……この2人は何が言いたいんだ。


 それが数秒ほど続いた後。

 田渕が「まぁそこは聞いても駄目そうだしいっか」と呟いた。


「あの日、私は部活を優先したし。

 それより。それなら佳奈とだけじゃなくて、私達も仲良くしてよ。ほら」

「そうだ~!仲良くしろ~!」


 そう言いながら、俺の机の上にスマホを置く田渕と荻野。

 続いて永川も「わ、私も!」と言いながら、スマホを置いた。


 置かれた3台のスマホには、メッセージアプリの友達申請の画面が映し出されている。


 ……凄く逃げたい。


 俺は助けを求めて智陽と佑希の顔を見る。


 しかし、前に居たはずの智陽はいつの間にかいない。

 そして後ろを向くと、佑希もいない


 2人の姿は少し離れた教室の1番後ろ。

 そこに由衣と、そして何故か長沢ながさわ 麻優まゆの4人で固まっていた。


 しかも4人とも……笑ってるよな?


 とりあえず、助けはないと理解した俺は「なぜだ」と口を開く。


「別に仲良くする必要ないだろ」

「私達がしたいの。由衣の幼馴染だし、ずっと機会窺ってたんだから」

「陰星君、クラスのメッセージグループにも入ってないしさ~~」


 田渕と荻野が相変わらず詰めてくる。


 ……どうしてこうなった。


 どうにか脱出できないか考えているとき。

 突然、由衣の「そうだ!」という声が聞こえてきた。


 そして駆け寄ってくる足音が聞こえ、俺の両肩に両手が置かれた。


「みんなで遊びに行けばいいんだよ!

 私達よく遊ぶ5人に、まー君達3人入れてさ!」

「いいね!由衣、ナイスアイデア!」


 田渕がそう言いながら、由衣とハイタッチしている。

 俺の頭上で。


 ……両肩から手が無くなったのはいいが、とんでもないことになっている。


 そこに長沢の「え、私もいいの?」という声が飛んできた。


「もちろん!麻優ちゃんもだよ!」


 由衣がそう言いながら、長沢に向かってサムズアップをしている。


 すると次に「……待って?私も入ってる?」という智陽の声が飛んだ。

 その言葉に「もちろん!」と笑顔で返す由衣。


「いや、私は絶対行かないから。私関係ないでしょ」


 俺はその言葉に乗るように「俺も行かないぞ」と言葉を投げる。

 すると、田渕が「いや、陰星君は主役だからね?」と投げ返してきた。


 そして、女子5人は既に「どこに行くか」と話を始めてる。


 ……勘弁してくれ。



 そう思ったとき。

 教室のスピーカーから、チャイムが鳴り響いた。


 そのすぐ後には、タムセンが「席につけ~朝礼を始めるぞ~」と言いながら教室に入って来た。

 その声により、女子5人は「え~」と不満な声を出しながらそれぞれの席へと帰っていく。


 そして、この場は解散となった。



 この日ほど、朝礼をありがたいと思ったときない。

 そんな確信があった。



 ちなみに永川、田渕、荻野の3人はその日一日中「仲良くしてよ!」と言って来たので、連絡先の交換で我慢してもらうことにした。

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