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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
15節 自分の力で

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第262話 まだ沢山ある

「ペルセウス座流星群!」


 その言葉を発すると同時に、俺の周りに浮いていた青白い光が概念体に向かって飛んでいく。


 その青白い光によって、巨大な蛇の概念体が吹き飛ぶ。

 その行き先は、戦っている鈴保とへび座の元へ。


 ほぼ同時に、鈴保すずほを挟んで反対側でも青白い光が炸裂するのが見えた。



 そして数秒後。

 鈴保が居た場所で青白い光が一層激しく炸裂した。



 その光は、夕闇に沈み始めた運動公園内の林を飲み込む。

 星力が衝突したからか、青白い煙が波のように襲ってくる。


 だがその煙はすぐに収まった。

 さっき鈴保とへび座が戦っていたところには残ってはいるが。


 ……とりあえず、鈴保の無事を確認するか。


 そう思い、俺は林の中を右側へと歩き出す。


 光が炸裂する直前、人影が右側に飛び出したのが見えた。

 それが鈴保だと思うんだが……。


 周りを警戒しながら、小走りで木々の間を進む。



 すると木の根元に人影が見えた。



 それは紺色と深紅色の鎧。

 星鎧を纏ったままの鈴保が、1本の木の根元に座り込んでいた。


 俺はすぐに「大丈夫か」と声をかける。


「大丈夫……と言いたいけど、疲れた。あいつ強すぎ。

 練習のときの真聡まさとが優しく感じる」

「……どういう意味だ。

 というか、何で突っ込んでいった。俺がへび座の相手した方がまだいいだろ。何でそんな無茶なことした」

「無茶をしてるのは真聡もでしょ」


 その言葉に言い返そうとしたそのとき。

 「や~めろって!」という声が飛んできた。


 声がした方を見ると、向かいから星鎧を纏ったままの志郎しろうが走って合流して来た。


「鈴保だって考えてたんだから、なぁ?」


 その言葉に、鈴保は「ちょっと志郎?」と不満そうに噛みついた。

 だが気になるので、俺は聞こえないふりをして「考え?」と聞き返す。


「『私だって毒使えるんだから、私が相手した方がまだマシでしょ』って」


 確かに、俺は何度も毒に苦しめられたことがあるが……。


 そう思いながら鈴保に視線を向ける。


 すると、鈴保は顔を背けていた。

 星鎧を纏っているのもあり、何を考えているのか全く分からない。


 ……どういう感情だ?



 そのとき。


「やっぱり、()()()がいるとできることが違っていいね」


 そんな声が、運動公園内の林に響いた。


 俺は咄嗟に声が聞こえた方を向き、戦闘態勢を取る。

 鈴保もすぐに立ち上がり、立っていた志郎も同じく。



 視界に入ったのは、こちらに向かって歩いてくるへび座。


 2匹の概念体がいないということは、消滅まで追い込めたのか?

 そう考えていると、志郎が「お前……まだやるのか?」と言葉を投げた。


 だが、へび座は俺の方を見て「本当に、いいよね。君は」と言葉を投げてきた。

 まるで志郎の言葉は聞こえていないかのように。



 そしてその言葉には、恨みのような重さを感じた。



 ……いや、意味を考えている場合ではない。

 今はこいつを倒し切る事だけを考えるべきだ。


 消耗はしているが、3人いれば押し切れるか?



 そこに、今度は「こっちはなんとかなったよ~!」と聞きなれた明るい声が辺りに響いた。


「先輩もひとまずは大丈……へび座」


 視界の端で制服姿の由衣ゆいが後ろから来るのが見えた。

 そしてそのまま、へび座の方を見ながら身構えている。


 来るなら星鎧を纏ったままの方が助かったんだが……そこは言っても仕方ない。



 しかし、由衣の言葉を聞いたへび座の反応は予想外のものだった。


「……そっか。いるか座さん、抑えられちゃったんだ」


 そしてため息をつき、「残念」と呟いた。


「じゃあ今日は帰ろうかな。もうこれ以上、戦う理由もないし」


 その言葉に対して、志郎が「逃げんのかよ」と噛みついた。


「逃げるよ。僕にはやりたいことがあるからね。

 それに、もう失敗はできないから。

 でも、君達を倒す機会ならまだ沢山あるから」


 言葉の最後に、「じゃあね」と言った後。

 へび座は俺達に向けて、赤黒い煙を吐いてきた。


 俺は咄嗟に「下がれ!」と叫んだ後、左手で持っていた杖を煙に向ける。

 そして無詠唱の風魔術を発動させる。


 構えた杖から渦巻いた風が、赤黒い煙と衝突する。

 そして、前が見えなくなった。



 十数秒後。

 視界が開けたときには、そこにへび座の姿はなかった。


「マジで逃げたな……」

「でも、助かった……。マジで疲れた」


 志郎と鈴保がそう言いながら、レプリギアからプレートを抜き取った。

 そして、制服姿に戻る。


 ……ぶっちゃけ、俺も今日は限界だ。


 俺もギアからプレートを抜き取り、制服姿に戻る。


 いや、それより……。


 さっきから気になってることを聞くために、俺は振り向いて口を開く。


「由衣、佑希ゆうき日和ひよりは?」


 そう。

 由衣が最後に来た。


 しかし、一緒に戦っていたはずの佑希と日和の姿はない。


 ……何かあったのだろうか


 すると由衣は「えっと……」と口を開いた。


「それが……最後の方にいるか座の……超音波?を2人とも受けちゃって。

 それで、2人は休んでるの」

「大丈夫なのか。怪我は」

「う、うん。別れる前は聞こえるようになり始めてたし。

 それに今は入海いりうみ先輩と一緒に救急隊の人が見てるから」


 それならいい。


 だが俺はそこで違和感を覚え、すぐに言葉にする。


「由衣は大丈夫なのか?」

「うん。何かすぐに聞こえるようになったんだ。

 ゆー君は『まー君に聞いて』って言ってたんだけど……まー君わかる?」


 由衣だけが、超音波の影響が少なかった理由?

 その場に居なかった現象の理由を教えろと言われても……。


 そう考えていると。


「……いつまでここに居るの?」


 鈴保が、そんな言葉を呟いた。

 志郎も「確かにもう見えなくなってきたよな……」と続く。


 ……確かに、もう周りも見えなくなってきている。

 それに佑希と日和、何よりも入海先輩が心配だ。


 考え事は後でもできる。


「悪い、先に移動しよう」


 そう言葉を発した後。

 とりあえず遊歩道に戻るために、俺は由衣が来た方向へと歩き出した。

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