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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
15節 自分の力で

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第244話 相談したいこと

「それでさ!当たったの!

 MIRA(ミラ)ちゃんのサイン会!」

「あぁ~。去年に申し込んだって言ってたやつ?」


 佑希ゆうきの言葉に、元気よく「そう!」と返事をする由衣ゆい

 その言葉に「よく当たったね」と返す智陽ちはる


「ほんとに!

 私もびっくりしてさ!実は夢じゃないかって思ったもん!」



 おおかみ座との戦いから数週間、カレンダーは2月になった。

 あれ以来、堕ち星も出ず、人型の澱みも特に現れず、俺達は平和な日々を送っていた。


 そんな2月のある日の、朝のホームルームが始まるまでの時間。

 俺は登校時にも聞いた話をもう一度聞かされていた。


 登校中に俺と日和は聞いた。

 しかし、佑希と智陽には聞いてもらっていないから聞いて欲しいらしい。


 内容は『MIRAというモデルのサイン会に当たった』という話。


 俺は全く分からない話、しかも2回目なので困っている。


 ……というか、何で俺の席に集まって話すんだ?

 由衣が話をしたいのだから、由衣の席ですればよくないか?



 そう考えていると。


「え、由衣ちゃんも当たったの!?」


 そんな声が飛んできた。

 俺は新たに現れた声がする方に視線を移す。


 そこに立っていたのは、何故かよく絡んでくるクラスメートの長沢ながさわ 麻優まゆだった。


 その姿を見た由衣は「麻優ちゃん!」と言いながら、長沢の方に駆け寄っていく。


「そう……え、麻優ちゃんも当たったの!?」

「そう!当たったんだ~!」


 その会話の後、由衣と長沢はハイタッチをした。

 手を叩く軽い音が、朝の騒がしい教室に響く。


 ……楽しそうだからいいか。


 「じゃあ一緒に行かない!?」と盛り上がる2人を見て、そんな感想を抱いた。



 そこに今度は「お、4人とも揃ってる~」という声が飛んできた。


 「今度は誰だ」と思いながら、俺は声が聞こえた方に視線を向ける。


 すると教室の入り口からこちらへ、女子生徒3人が歩いてきていた。


 見覚えがある気がするが……誰だ?


 そう思っていると。


桜子ようこちゃんに乃々ののかちゃんに佳奈かなちゃん!」


 そんな由衣の声が飛んだ。

 そしてその声の後、朝の挨拶を交わす友人達。



 由衣が女子生徒達の名前を呼んでようやく思い出した。


 3人は同じクラスで、由衣の話にも長沢と一緒によく出てくる3人だった。


 1番手前にいて、最初に声をかけてきたのが田渕たぶち 桜子ようこ

 普段からクラスの中心にいるのをよく見る。由衣と同じタイプの人間だろう。

 ダンス部という話も由衣から聞いたことがある。


 その隣にいるのが荻野おぎの 乃々ののか

 俺の中の印象は……いつも眠そうに見える。

 今もどこを見てるか、何を考えているのか、表情からは読めない。


 そして最後、その2人の後ろで隠れるようにこちらを見ているのが永川えがわ 佳奈かな

 水泳部のマネージャーをしているんだったか。


 由衣の友人の3人。

 恐らく……由衣に用があるんだろうな。


 そう考えた俺は「由衣なら連れて行っていいぞ」と言葉を投げる。


「いやいや、4人……というか、陰星いんせい君に用があるんだよね。

 あと私じゃなくて、佳奈が」


 田渕はそう言いながら、後ろにいる永川を自分の前に出そうとしている。


「ほら、自分で話すんでしょ」

「こ、心の準備が……」

「ここまで来たんだから~~」


 そんな会話をしながら、永川は田渕と荻野によって俺の前に出てきた。

 しかし、永川は「え、えっと……」と口籠っている。


 ……用があるならさっさと言って欲しいんだが。


「そ、相談したいことがあるので、お昼休みに時間をください!」


 永川はそう言った後、走り去ってしまった。


 ……いや、何もわからないが?


 そこに田渕の何とも言えない声が聞こえた。

 そして。


「……とりあえず、そういうことだから。

 お昼食べた後、時間空けといて」

「よろしく~~」


 田渕と荻野はそう言った後、永川を追いかけて去っていった。


 ……意味不明の嵐が去っていった。


 あまりの意味不明さに、俺の頭の中は理解不能という結論しか出してくれなかった。

 一方。


「佳奈ちゃん……まー君に何の話がしたいんだろ?」


 由衣はそう呟いた後、首を傾げた。


 俺は「知らないのか」と言葉を投げる。

 すると由衣は「何も聞いてない」と首を振った。


 由衣が知らないなら何もわからないよな。


 ……諦めるか。


 しかし。


「ここだと話し辛い話……かなぁ……」


 長沢が、3人が去った方を見ながらそう呟いた。


 明らかに何か知っている反応。

 俺は「どういう話だ」と質問を投げる。


「それは本人から聞かないと」


 ……駄目だなこれは。

 それなら次の質問だ。


「俺、永川に何かしたか?」

真聡まさと君……怖いからねぇ……」


 肩をすくめながらそう呟いた長沢。


 ……1学期にもこんな話をした記憶がある。


 まさかこれが回りまわってまた出てくるとは……。

 以前よりは気を遣っているんだが……。


 頭を抱えたくなっていると、佑希が「まぁ……言いたいことは分かるな」と呟いた。


「何も知らない人からしたら感じ悪いからね」

「『まー君怖くないし優しい』って言ったんだよ~?」


 智陽の追撃にそんな返事をする由衣。


 ……そうじゃないだろ。


 ため息をつきたくなったその時、チャイムが校内に鳴り響いた。

 その後、すぐに担任のタムセンが「朝礼始めるぞ~」と教室に入って来た。


 俺達はそこで解散となり、友人達は自分の席に戻っていった。


☆☆☆


「……誰もいないね」

「ね~……。

 3人は……食堂に行ったのかな?」


 誰もいない屋上を見て、智陽と由衣がそんな会話をしている。

 そしていつも座っている屋上にあるベンチに座りに行った。


 俺はなんとなく、2人が座っている向かい辺りの屋上の柵に背中を預ける。

 佑希はそんな俺に着いてきて、同じように背中を預けた。


 そして雑談する女子2人を、男子2人は口を開かずに眺める。



 昼休み。

 俺達3組の4人は昼ご飯を食べた後に屋上に移動してきた。


 他クラスの3人が居ない理由は屋上が寒いからだ。

 いない3人をわざわざ呼ばなくてもいいだろうというのもあるが。


 「流石にこの時期の屋上で昼ご飯を食べるのは辛い」と前に言ったのは由衣だったか。

 ……いや、日和ひより鈴保すずほも言ってた気がするな。


 俺は別に耐えられるし、教室がうるさいので屋上がいいのだが……。

 何故かほぼ毎日、由衣に止められる。



 そして待ち始めてから数分後、屋上の扉が開く音がした。

 同時に「由衣~!お待たせ~!」、「おまたせ~~」と賑やかな声が屋上に増えた。


 朝に話があるとだけ言っていた田渕、荻野、永川の3人がようやく現れた。

 その3人は由衣の案内で空いているベンチに座った。


 落ち着いたところで、俺はさっそく「それで、話ってなんだ」と投げる。


 実際、朝から何を言われるのか気になって仕方がなかった。

 この3人から魔力などは感じないので、奇襲とかではないと思うが……。


 しかし、永川は「えっと……その……」と口籠っている。

 俺から目を逸らして。



 氷川 佳奈に怖がられている……か。



 ……だが、()()()()()()なんて、忘れてしまった。



 それでも、歩み寄る必要がある……よな。



 俺は深く息を吐いてから、「悪いが」と口を開く。


「俺はこれが素だ。慣れてくれとしか言えない。

 だが、別に怒ってるわけでもない。

 だから、言いたいことがあるならそのまま言ってくれ」

「怖いかもしれないけど、根は優しいから!」

「あぁ。昔はもっと優しかったしな」


 俺の言葉に続いて、由衣と佑希がそんな言葉を投げた。


 ありがたくはある。

 だが、昔のことに触れる必要は無いだろ。


 そんな思いを込めて「おい、佑希」と言葉を飛ばす。


「だからまぁ。実際は雰囲気ほど怖くないし、もし怒ったとしても俺達が止めるからさ。

 とりあえず話したいことがあるなら、話すだけ話してよ。」


 さらっとそう言った佑希。


 俺を無視した挙句、言葉選びに悪意がないか?



 だが、ようやく昔の佑希が戻って来た。



 そんな気がした。



 そして、佑希の言葉のお陰か。

 永川が「その……」と口を開いた。


「怪物と戦ってる皆さんに、相談したいことがあるんです」

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