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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
14節 3兄妹

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第242話 大事な子供

「も~~~。心配したんだからね!?」


 ベッドに横になっている俺に、由衣ゆいが頬を膨らませて怒っている。


 ……見舞いに来てくれたのは嬉しいけど、一番最初から怒られることになるとは。


 そして、一緒に来た日和ひより智陽ちはるも少し怒ってるように見える。

 というか日和に至ってはがっつり頷いてる。



 おおかみ座との戦闘から2日後。

 俺は市立病院のベッドの上にいた。


 かずにいとの戦闘が終わった後、新たに爬虫類のような堕ち星が現れた。

 そしてかず兄は連れ去られてしまった。


 その直後、俺は気を失ってしまった。


 みんなはそんな俺を救急車で搬送してもらって、超常事件捜査班との情報共有などの事後処理をしてくれたらしい。


 俺が倒れた理由は過労と栄養失調と言うことらしい。



 ……でも多分、本当の理由は堕ち星に成ったからだろう。



 だけど堕ち星に成っていた期間が短かったからか、俺は次の日の夜には目を覚ましていた。


 今も身体は、まだ少し痛むけど。



 ……でも確かに、この1カ月は皆に心配をかけてばかりだった。

 年明けにおおかみ座と戦ってから、全然冷静じゃなかった。


 そんな反省の意を込めて、「本当にごめん。反省してる」と言葉を返す。


「も~~……。まー君もゆー君も……。

 あ、ちゃんと皆にお礼を言ってね?みっちゃんとか麻優まゆちゃんもゆー君のこと探してくれたんだから。

 あ、あと桜子ようこちゃんと佳奈かなちゃんと乃々ののかちゃんも」

「由衣も走り回ってたもんね」

「ちーちゃんだって走り回ってくれたじゃん!」


 どうやら自分が思ってた以上に、俺が居ないのは大事おおごとになっていたらしい。


 これは退院したら、皆にお礼を言って回らないといけないな。


 そう思っていると、病室の扉が開いた。

 同時に「遅くなった」と聞き慣れた声が飛んできた。


 その瞬間。

 由衣の「まー君!どこ行ってたの!?」という言葉が病室に響く。


 入ってきたのは真聡まさとだった。


 ……そういえば、来た時に由衣が「一緒に来てたのにどこか行っちゃった」と文句を言っていたな。


 そして真聡は「ちょっとな」と言いながら病室の扉を閉めて、俺の足元の方へ移動する。


「『ちょっとな』じゃわからないから!ちゃんと説明して!」


 由衣の意見に続いて、日和と智陽も同意の声を飛ばす。

 そんな3人の追求を受けて、真聡はため息をついた。


「……まず佑希ゆうき。悪い、お前のお兄さんも、連れ去った堕ち星も見失った。

 超常事件捜査班にも協力してもらったが、今も手がかりすら見つかってない。


 だが、おおかみ座は佑希を狙っていた。

 だからもしかしたら、病院内に潜んでるかもと思ったが……残念ながら何も手掛かりはなかった。本当にすまない」


 そう言った後、真聡は頭を下げた。


 そんなに謝られることじゃない。

 俺は急いで「いやいや」と言葉を返す。


「真聡がそこまで気にしなくていいって。頭下げないでくれ」


 すると真聡は頭を上げた。

 そこに由衣が「見回りに行くなら言ってくれたらよかったのに」と言葉を投げる。


 しかし。


「俺1人で十分だったからだ」


 そんな真聡の返事に、由衣は「も~……」と口を尖らせる。


 だが、真聡の性格だ。

 他のみんなには頼らず、街を走り回ってあの堕ち星の手がかりを探していたんだろう。


 ……逃げられたのは、真聡のせいではないのに。



 俺が、自分を見失って堕ち星に成ったからなのに。



 ……落ち着いた今だから言えることだけど。



 とにかく、これ以上真聡に無駄な時間を使わせたくない。


 だから俺は「ありがとうな」と言葉をかける。


「俺が動けない間に走り回ってくれて。

 だけど、真聡もとりあえず休んでくれ。


 ……あの堕ち星は、『まだ利用価値がある』と言っていた。だから、殺されてるということはないだろう。

 むしろ、もう一度俺に兄を戦わせる……そんな気がする。

 だから次こそ、ちゃんと連れ帰ればいい」


 すると真聡は「……お前がそれでいいならいいが」と呟いた。


 もちろん、次戦う時までに俺だって今より強くなるつもりだ。

 だけど、やっぱりみんなの力は必要だ。


 だから、真聡にも無駄な労力は使わせられない。


 そして病室内の空気が少し落ち着いたところで、由衣が「ちょっと聞いていい?」と呟いた。


「あの堕ち星ってさ、結局何座なの?」

「私も気になってた」


 由衣の言葉にそう続く日和。


 ……あれ。


「……俺が寝てる間に聞いてなかったのか?」

「まー君、忙しそうだったから聞く暇がなかったの」


 由衣の言葉に、少しばつが悪そうに「……悪かったな」と返す真聡。

 そんな真聡に智陽が「今はそこじゃないでしょ」と突っ込む。


 真聡の言葉が足りないとはいえ……少し可哀想に見えてきたな。


 そんなことを思っていると、真聡は「消去法だが」と口を開いた。


「堕ち星の正体はカメレオン座だと考えている。

 ……回収できなかったへび系の星座が利用されてなければ、の話だが」

「そんな星座あるの……?」

「確か、日本からは見えないんだっけ?」

「あぁ。だから日本では」


 真聡が智陽の言葉にそこまで返したとき。



 突然「佑希!!」という叫び声と共に、病室の扉が開いた。



 そこに立っていたのは、俺の母さんだった。


☆☆☆


 窓から月明かりが差し込んできて、暗い病室を優しく照らしている。



 俺は大きく息を吐いて、ベッドの上で伸びをする。



 疲れてはいるが、何故か消灯時間を過ぎても眠れなかった。



 それにしても……ベッドの上から大して動いていないが、大変な一日だった。


 まさか、母さんがお見舞いに来てくれるとは。

 完全に予想外……というか考えていなかった。


 そして、既に俺が何をしたかは聞いていたらしく、凄く怒られてしまった。


 俺がしたことは怒られても仕方ないのだが……友達の前で母親が泣きながら自分を怒るのは少し恥ずかしかった。


 あと途中、真聡が「止められなかった俺にも責任があります」と言ったときは凄く焦った。


 だけどまぁ……そのお陰か「今後はちゃんと真聡や由衣や日和、友人達を頼る事」、「絶対に無茶をしないこと」を条件に、引き続き戦うことの許しが出たから安心した。



 「佐希さきも佑希も、もちろん和希かずきもママとパパには変わりのない大事な子供なの」……か。



 両親、友人。

 俺は、自分が思っている以上に周りから大事に思われているみたいだ。




 ……かず(にい)はそれを感じられなかったから、()()()()になってしまったんだろうか。



 ……いや。そもそもかず兄には大事に思ってくれる相手がいなかったのか。



 いや、それは違う。



 かず兄は大事な家族だ。

 少なくとも母さんや父さん、そして佐希、もちろん俺もそう思ってる。



 ……今考えても仕方ない。



 次に、出会ったときには必ず連れ帰る。

 その後にかず兄の考えを聞いて、俺達の気持ちを伝えればいい。



 今はとにかく、身体を休ませるのが先だ。

 今日お見舞いに来てくれた母さんにも、真聡達にも言われたしな。



 俺はもう一度、伸びをして大きく息を吐く。



 そして目を閉じる。



 すると、やはり疲れていたらしい。

 俺の意識は緩やかに滑っていくように眠りについた。

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