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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
14節 3兄妹

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第235話 幼馴染だからこそ

 時間は少し巻き戻り、佑希ゆうきが目を覚ます前。


☆☆☆


 戦闘が終わって佑希が姿を消した後。

 真聡まさとは超常事件捜査班の警察官と話していた。


 だから真聡の部屋に着いたのは19時を過ぎていた。


 そして辿り着いたとけど、みんなボロボロだった。

 主に身体よりも、心が。



 最初に真聡から「全員、帰っていい」とは言われた。


 だけどいつも元気な由衣ゆいが完全に意気消沈している姿を見て、置いて帰るなんてできなかった。

 それに普段から静かな日和ひよりも、目に見えて落ち込んでいるのが伝わって来た。


 そんな2人を私は智陽ちはると一緒に様子を見ていた。

 だから梨奈りな颯馬そうまには「まだ時間がかかるから帰っていいよ」と伝えて、先に帰ってもらった。


 そして志郎しろう

 「今日は空手の日」と最初から言ってし、真聡にも名指しで早く帰るように言われていた。


 でも「こんな状況で帰れるわけないだろ」と反論して、真聡と一緒に警察と話していた。



 ……やっぱり誰も帰らなかったのは、佑希が堕ち星に成ってしまったからだと思う。


 友達が目の前で堕ち星と成って、姿を消した。


 最悪の場合、戦わないといけない相手が2人に増えたことになる。

 流石にもう一度話しあう必要があると思う。


 ……だけど、由衣も日和もこんな感じで話し合いなんてできる?


 私はそんな疑問を抱きながら、いつも座ってるソファーに腰を下ろす。



 由衣と日和はいつものように定位置に座った。

 でも顔は下を向いているし、由衣に至っては今にも泣きだしそうな雰囲気。


 そんな状況だけど、志郎が「それで……」と口を開いた。


「どうするよ。これ」

「どうするって言われても……止めないといけないでしょ」


 私はとりあえず、当たり障りのない言葉を口にする。

 そして、真聡の方を見る。


 すると真聡は右手で前頭部を抑えていた。

 そして何かをかみ殺したような表情で「あぁ」と呟いた。


「止めないといけない。だが……」


 それ以上、真聡のから言葉は出なかった。


 その代わりに左手をぐっと握りしめながら、視線を由衣の方に向けていた。



 普段は何考えているかわからない。

 でも、今だけは何を考えているのか予想ができた。



 たぶん、由衣と日和を佑希と戦わせたくないんだと思う。



 でも、その気持ちは私にも理解ができる。



 私だって()()()()、颯馬と戦うのは躊躇った。



 そして4人の関係は小学校の頃から。

 それに特に由衣の性格から考えると、これが残酷すぎる話なのは志郎でもわかると思う。



 だけど堕ち星を元の人間に戻すのには、由衣の力がいる。



 ……本当にどうするのよ、これ。



 そう思ったとき。

 由衣が小さな声で「何でこうなったの」と呟いた。


「何で……こうなちゃったの。何で私……気が付けなったの?」


 そのまま「何で……何で……」と呟く由衣。

 その頬には、涙が伝っていた。


 そんな由衣の背中を、日和がさすり始めた。


「由衣は……悪くない。私だって、気が付けなかった。

 それに、佑希が何も言わなすぎるのも……悪い」

「でも!!友達が苦しんでたのに、私()()気が付けなかった!!」


 悔しそうな声の日和に、由衣が反論の言葉を叫んだ。



 そして誰も言葉を口にせず、部屋は静まり返る。



「……いや、悪いのは俺だ。

 俺は……薄々気が付いていたんだ」


 そう言ったのは、真聡だった。


「俺は、あいつが()()()隠していることに気がついていた。

 だけど……俺は見て見ぬふりをしていた。お前達を戦いから遠ざけたかったから」


 その言葉で、部屋の空気がさらに重くなった。

 どう考えても一言余計。


 普段なら指摘するけど……そんな空気でもない。

 そこに。


「……そう言われてみればそうかも」


 そう呟いたのは日和だった。


「あんまり気にしてなかったけど、言われてみれば確かに変だった。

 会話には最低限にしか入ってこないし、佐希さきとは連絡を取らせてくれない。

 ……そもそも、去年の年賀状が来てなかった時点でもっと聞くべきだった」

「……仕方ないよ。だって、全部嘘とは思えなかったもん。

 話にあんまり入ってこないのも、さっちゃんがいないからだと思ってたし……。

 まさかさっちゃんがお兄さんに……」


 日和に由衣が続いて言葉を発した。


 今、後悔しても仕方ないことなのは分かってる。

 でもそれを言ったところで、2人は簡単に割り切れる性格じゃない。


 そもそも()()には、お節介の優しい奴が集まってるんだから。


 だけど、私だっておかしいと思っていた。

 堕ち星に対して異常なほど敵意。


 それも証拠はない、疑いしかない人にさえ手を出そうとするぐらいの。


 付き合いが短い私だって、それは普通じゃないと感じていた。


 ……美術館に行って、絵の中に吸い込まれたあの日。

 あのときにもっとちゃんと聞いていれば、こんなことにはならなかったのかもしれない。


 私までそんな思考になっているとき。

 この重苦しい後悔の空気の中で、志郎が「でもよ」と呟いた。


「……過ぎたことを言っても仕方ねぇだろ。

 今は、これからどうするかを考えねぇと……だろ?」


 良いことを言った。

 この空気に押されて、語尾の声が小さくならなければ完璧だった。


 その言葉に真聡は両手で眉間を押せえて、下を向いて「あぁ。わかってる」と返事をする。

 だけどいつものようなキレとかがない。


 由衣と日和が凄く辛いのは目に見えてわかる。

 だけど、真聡も同じように辛いんだと思う。


 3人が無理なら……私と志郎だけでおおかみ座と佑希を抑えれる?



 ……でも、無理でもやるしかない。



 そんなことを考えているとき。



 突然、扉が開く音が部屋の中に響いた。



 その瞬間、由衣が立ち上がりながら「ゆー君!?」と叫んだ。

 隣座っている日和も一緒に立ち上がっている。


 だけど、扉を開けた人は。


「あぁ……遅かったか……」


 赤髪の男性。ほむらさんだった。

 そしてその瞬間。


「『遅かったか』じゃないですよ。何で言ってくれなかったんですか!

 佐希は堕ち星に成った兄に襲われたって!」


 顔を上げて真聡が、焔さんに怒りの言葉を叫んだ。


 真聡は普段から機嫌が悪いように見える。

 だけどこんなに怒ってるところは、見たことがなかった。


 そして。


「……佑希に口止めされてたんだ。

 『家族の問題だから誰にも言わないで欲しい』って」


 焔さんは、申し訳なさそうにそう呟いた。

 その言葉に真聡は舌打ちだけをして、またさっきと同じ体勢に戻ってしまった。


 ……自分が人のことを言えないという自覚はあるみたい。


 そして、焔さんは部屋を見渡しながら「というか……その本人は?」と呟いた。


「……堕ち星に成ったんです」


 そう答えたのは智陽だった。

 そして焔さんが「それ……本当か?」と聞き返す。


「この状況で嘘をつくと思いますか」

「まぁそう……だよな。

 ギアを使っていても堕ち星に成るのか……」


 焔さんはそう呟きながら顔をしかめて、左手で頭をかいている。


「それで、どうするの?

 このまま佑希を好きなようにやらせるの?」


 今度は私達に向けて、智陽はそう言い放った。


 少し嫌な言い方。

 でも、苦しそうな眼をしているように見えた。


「いい訳……ないよ……」

「……あぁ。どんな理由であれ、堕ち星を自由にしていい訳がない」


 由衣と真聡が言葉を返した。


 そして真聡は顔を上げて、私の方を見た。


「志郎、鈴保。力を貸してくれ」

「おう」「もちろん」

「……それで、何すればいい?」


 返事の後、志郎がそう聞き返した。


「佑希は俺が止める。

 だから、2人にサポート……あと、おおかみ座が居た場合は奴を抑えて欲しい。

 ……頼めるか?」

「さっきそう返事したでしょ」

「次は負けねぇから安心しろ」


 私達の言葉に「……悪い」と小さく呟く真聡。



 そこに「私も、戦う」と由衣が呟いた。

 続いて日和も「私も」と言葉を発する。


「なら、志郎と鈴保の援護を頼む。4人なら何とかなるだろ」


 真聡の言葉に由衣は「違う!」と叫びながら、真聡の両手首を掴んだ。

 そして、真聡を自分の方へ向かせた。


「私はまー君と一緒に、ゆー君を止めるために戦いたいの!

 ひーちゃんだってそうでしょ?」

「うん。真聡だけに戦わせない」

「だけどお前ら……相手は佑希だぞ」

「だから私達も一緒に戦うの!

 友達だからこそ、幼馴染だからこそ。堕ち星に成って暴れるなんて……見てられないもん」


 そんな由衣の言葉に、由衣の後ろから真聡を見ている日和が「うんうん」と頷いている。


 一方、真聡は2人から視線を逸らした。


 その数秒後。


「……わかった。なら、当てにするぞ」

「もちろん!じゃあどうするか考えよ!」

「と言ってもいつも通りじゃない?」


 ようやく3人ともいつも通りの雰囲気に戻った。

 私が心の中で一安心していると、志郎は「でもよ……」と話に参加してきた。


「堕ち星に成ってから動きが早かったんだよな……。

 それにあの……分身?も普通に使ってたしよ」

「それじゃあ……羊を当てるのは厳しいよね……」

「おおかみ座にもあんまり効いてなかったもんね」


 日和の言葉を最後に、全員が黙ってしまった。


 「こういうときに、焔さんは何か案はない訳?」と思い、私は視線を焔さんに向ける。

 だけど、焔さんも難しい顔をしている。


 手詰まりだ……。

 でも他人に頼らず自分で考えるべき……。


「あ、いい方法思いついた!」


 そんな空気を裂いたのは、由衣の声だった。

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