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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
14節 3兄妹

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第233話 2体の堕ち星

 戦場に突然飛んできた1枚のカードが、眩しい光を放った。


 その光が収まってから目を開けると。


 私達の後ろには、居場所がわからなかった佑希ゆうきが立っていた。


 既に星鎧を身に纏っていて、剣を構えている。

 そんな佑希の視線の先では、吹き飛ばされたおおかみ座が立ち上がっていた。


「臭いがするとは思っていたけど、やっぱり生きてたんだ。佑希」


 そんなおおかみ座の呟きが聞こえてくる。

 だけど、佑希は言葉を返さずにおおかみ座との距離を詰めていた。


 そして剣と爪が激突して、アウトレットモール1階の広場に金属音が響く。


 だけど、佑希1人で押し切れない。


 そう思った私は援護するために距離を詰める。


 懸念通り、佑希は呆気なく押し返された。

 そして、お腹に蹴りを受けて吹き飛ばされる。


 だって昨日見た佑希は手当ての跡が凄かった。

 本調子ではないはず。


 そして、吹き飛ぶ佑希に追撃をしようと距離を詰めるおおかみ座。


 そんなおおかみ座の前に志郎しろうが出た。私よりも早く。


 なので私は先に佑希を受け止める。

 持ってる槍が当たらないように気をつけながら。


 そして、体勢を立て直しながら言葉をかける。


「ここは私達が戦うから、佑希は下がってていいから。

 あんた、怪我してるんでしょ」

「怪我してようが、関係ない。

 あいつは、俺が、殺すんだ……!」


 佑希は吐き捨てるようにそう言って、私の手を振り払った。

 そして、またおおかみ座に立ち向かっていく。


 私は「話聞けし!」と怒りの言葉を呟きながら、その背中を追いかける。


 そして佑希は志郎を押しのけて、おおかみ座に斬りかかる。


 だけど、おおかみ座は佑希の剣を容易く払った。

 体勢を崩した佑希に、おおかみ座の爪が迫る。


「させるかって!!」


 その一撃に、志郎が正面から拳をぶつけに行く形で割り込んだ。

 私も槍で戦闘に割り込む。


 そこから、3対1の戦闘となった。

 怒りで暴走気味の佑希の行動に合わせる感じだから、少し合わせづらい。


 だけどそんなことは言ってられない。

 私は必死に佑希と志郎に合わせて攻撃を続ける。


 その甲斐もあってか、少しずつ私達の方が優勢になってきた。



 でも、やっぱり上手くいかない。


 おおかみ座の蹴りが、また佑希に綺麗に入った。

 佑希はそのまま吹き飛ばされて、私の視界から消えた。


 心配ではある。

 だけど今は、おおかみ座を押し切った方が良い。


 そう考えた私は志郎の攻撃に合わせて槍を突き出す。


 しかし、志郎の攻撃も私の攻撃もおおかみ座に避けられてしまった。



 次の瞬間、身体に強い衝撃を感じた。

 同時に私は吹き飛ばされる。


 そしてアウトレットモールの床を転がる。

 でも痛みはそこまでないので、急いで顔を上げて状況を確認する。


 佑希は自分の剣を支えにして、何とか立ち上がろうとしている。

 一方、志郎は1人でおおかみ座と戦っている。


 だけど、志郎が押されつつあった。

 そして私が立ちあがるよりも先に、志郎のガントレットが弾き飛ばされた。


 しかし、志郎は「やられて……たまるかっ!」と叫びながら右腕を引いた。


 おおかみ座の爪が迫る。


 私は走り出しているけど、この距離は間に合わない。

 そのとき。


「しし座…………流星群!!!」


 志郎のその叫びと共に、おおかみ座に青白い光を纏った一撃が決まった。

 それを受けて、流石のおおかみ座も吹き飛んでいった。


 流星群が、決まった。


 私は入れ替わるように、志郎と合流して「やるじゃん」と声をかける。


「……おう。

 でも、一発しか出ないんだよな……」


 志郎はため息……まではいかないけど、残念そうに呟いた。


 志郎は12月の天秤座との戦いで流星群を決めた。

 だけどそれ以降は、何故か流星群が1度に1発しか撃てなくなってるらしい。


「でもまぁ、今は一発だけど決めれたんだし。

 今は気にしなくていいでしょ」


 私がそんなフォローの言葉を口にしたとき。

 「これなら、昨日の山羊座の方が強かったな」という言葉が聞こえた。


 私達はほぼ同時にその声がした方に視線を向ける。



 すると、おおかみ座は立ち上がっていた。

 しかも既にふらふらとこっちに向けて歩いてきている。


「まだ立つのかよ……!?」

「やっぱり由衣ゆいがいないと堕ち星って倒し切れないの……?」


 私はそんな弱音のような言葉を呟きながらも、志郎の前に出る。


 佑希は怪我人、志郎は流星群を1発だけど撃った。


 だから、一番消耗が少ないのは私。

 星力で作られた鎧の中で深呼吸をして、気持ちを落ち着かせる。


 狙うなら真聡が昨日「燃やした」と言ってた口の中?

 それとも心臓?


 でも心臓を突き刺したら堕ち星とはいえ、死んでしまう?


 そんなことを考えながらも、距離と詰めてくるおおかみ座を待ち受ける。



 次の瞬間。

 黒い影がおおかみ座の前に出た。



 金属がぶつかりあう音が、またアウトレットモールの広場に響いた。



 その前に出た黒い影の背中には左半分だけに人のような模様が見える。



 そして「堕ち星が……もう1体?」という、志郎の呟きが耳に届いた。


 志郎の言う通り、どう見ても今現れたのは堕ち星。



 でもその姿を見ていると、理由はわからないけどその星座と元の人間がわかった気がした。



 だけど、認めたくない。



 私は恐る恐る、さっきまで佑希が居た場所に視線を向ける。



 しかし、そこには誰もいなかった。



 私はすぐに2体の堕ち星に視線を戻す。


 押し合いの末、新しく現れた堕ち星が少し後ろに下がったところだった。


「僕から奪って、僕に無いものを持ってるくせに……まだ僕から奪うつもりなの?

 ……何でお前まで、()()()を手に入れてるんだよ、()()!」

「嘘……だろ?」


 おおかみ座の言葉を聞いて、志郎が信じられないという声で呟いた。


 私だって信じたくない。

 だけど、さっきまでいた佑希がここに居なくて、代わりに堕ち星が現れた。



 それが、()()だと思う。



 そして、その答え合わせのように、新しく現れた堕ち星が「俺は」と言葉を発した。


「お前を殺すためならなんだってする。

 自分が怪物に成ったとしても、お前に父さんと母さんの悲しみを。

 佐希さきの苦しみを!お前に、刻み付けてやる!」


 そう言い切った後、佑希はおおかみ座との距離を詰める。


 次の瞬間には、また金属がぶつかる音が響く。

 そして佑希は剣でおおかみ座の爪を弾いた後、おおかみ座を蹴り飛ばした。



 ……さっきよりも、明らかに強くなっている。



 でも、佑希を止めなきゃいけない。



 頭ではわかってる。

 だけど、身体が動かなかった。



 その原因が恐怖なのか、ショックなのか、後悔なのか、悲しみなのかはわからない。

 ただわかるのは、動けない志郎もきっと、私と同じような気持ちだってこと。



 そして、私が動けない間にも佑希はおおかみ座を追い詰めている。



 だけど、おおかみ座も押されてるだけではない。

 襲い来る剣の動きを読んだのか、ギリギリで避けた。


 そしてそのまま、佑希の右手に噛みつこうとする。



 次の瞬間。

 黒い影が2つに分かれた。


 2体に増えた双子座の堕ち星は、再び反撃に移る。


 2方向から襲い来る斬撃に対応ができないのか、おおかみ座は後れを取り始めた。

 黒い毛に覆われた身体に少しずつ、赤色が滲み始めた。



 もしかしたら、このまま佑希が倒してしまうかもしれない。



 そう思ったとき。

 突然、おおかみ座が体勢を低くした。


 そして4本足で走り出して、2体の堕ち星の斬撃から脱出した。


 逃げた先はアウトレットモールの吹き抜けの真下。

 そこで足を止めて、おおかみ座は佑希の方を見た。


「今日のところは引いてあげる。

 だけど、まだ終わりじゃないからね」

「次なんてない。ここで終わらせる!!」


 その叫びと共に、2体の堕ち星がおおかみ座に迫る。


 だけどそれよりも早く、おおかみ座は吹き抜けを真上に跳んだ。

 そして、戦場から姿を消した。


 


 標的に逃げられた2振りの斬撃は、虚しく空を切った。




 戦いは……終わった。



 でもそれよりも、大事なことがある。



 だけど、私が口を開くよりも先に「遅かったか……」と言う呟きが聞こえてきた。



 その声がした方を見ると、私や志郎とは別行動で捜索していた真聡まさと達4人が居た。


「……待って?その堕ち星は……」

「…………ゆー、君?」


 日和ひよりと由衣のそんな呟きが聞こえた。

 まるで「目の前のものを信じたくない」って声の。



 後から来たとはいえ、4()()は付き合いが長い。

 だから、直感でわかるのかもしれない。


 そして私が佑希に視線を戻しても、まだ堕ち星の姿だった。

 でも、2体から1体に戻ってはいた。


 そんな佑希に、由衣が「何か言ってよ……」と言葉を投げた。


「……これは、俺の戦いだ。

 だから、ほっておいてくれ」


 双子座の堕ち星はそう言い残して、吹き抜けを上に跳び上がった。

 さっき姿を消した、おおかみ座と同じように。



 堕ち星が去り、夜の闇に包まれたアウトレットモールには「何で……何で……!!」という由衣の悲痛な叫びだけが響いていた。

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