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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
14節 3兄妹

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第231話 家族の問題だ

「じゃあ、佑希ゆうきは実の兄に殺されたってこと!?」

「んなこと……んなこと!!」


 俺達の話を一通り聞いた後、鈴保すずほ志郎しろうが驚きと怒りが混じった言葉を口にする。

 志郎は怒りのあまり、右手の拳で自分の左の手のひらを殴っている。


 そんな2人に俺は「堕ち星の言ったことだ。全てを真に受ける必要は無い」と返す。


「でもよ、実の兄と戦うなんてよ!」

「それは……そうだよね。

 おかしいし……辛すぎるよ……」


 志郎の言葉に由衣ゆいがそう返した。

 勢いがあるのかないのかわからない調子で。



 俺達はあの後、警察に連絡して何が起きたかを話した。

 そして迎えに来てくれた志郎と鈴保と合流して、6人で俺の部屋まで戻ってきた。


 戻ってからは先に俺達3人の傷の手当てを行った。


 幸い、ほとんどが擦り傷や打ち身だった。

 しかし軽症でも手当ては必要だ。


 噛みつかれた部分は残念ながら痣になっていたため、志郎が包帯を巻いてくれた。

 由衣と日和ひよりの手当ては鈴保と智陽ちはるがやってくれた。


 前から思っていたが、志郎も鈴保も運動部だからか手当ての知識があるのでとても助かる。


 手当てをされながら「俺は手当てを我流で雑にしていたから、それが重なり入院をする羽目になったんだろうか」なんてことを考えていた。



 その後、全員どこかに座ってから「タムセンと話したこと」「あの堕ち星が話したこと」「あのイヌ科の堕ち星との戦闘について」の3つを共有した。

 そして今に至るというわけだ。


 ……部屋の空気が凄く重い。

 当然と言えば当然なのだが、この調子ではあの堕ち星には勝てない。


 だがどんなに辛くても、俺達は堕ち星を倒すことを優先しないといけない。


 俺は少しでもこの空気をマシにするべく「だからこそ」と言葉を絞り出す。


「俺達があいつを倒すんだ

 佑希だって、まだ生きてるはずだ」

「……確かに佐希さきは、死んでない()()()って言ってた。けど佑希は」


 そんな日和の言葉を、俺は「俺達はまだ」と言葉を被せて遮る。


「その事実を、この目で確認したわけじゃない。

 タムセンだって、()()()()としか言っていなかった」

「そう……だよ……ね」


 日和に対する言葉に、由衣が弱々しく返事をした。


 由衣もそうだが、日和もだいぶ精神的ダメージを負っているようだ。



 ……あの堕ち星を、俺と志郎と鈴保の3人だけで無力化できるだろうか。


 そのとき。


「それで、あの堕ち星とはどう戦うの?

 あれ、私には全員総がかりでなんとかって感じに見えたけど」


 ちょうど考えていたことを、智陽が言葉にして俺に投げてきた。


 いつも戦闘を近くから見ているからか、痛いところを突いてくる。


 俺は「そう……だな……」と返事をしながら、思考を巡らせる。



 あの堕ち星の本当の獣のような戦い方。

 今までの強敵だった堕ち星とは、また別の意味で苦戦を強いられそうだ。


 普通に会話が成立していたしな。


 そして戦闘中に詠唱をする隙がない以上、今までのように魔術で押し切るという戦法はとれない。


 無詠唱で戦うか、前線を志郎や鈴保に任せて後ろで詠唱してから前に出るか。


 ……あの堕ち星にそんな悠長なことができるだろうか。


 無詠唱だと俺が押し切られそうだ。

 俺以外に任せると……今日みたいなことになった場合が恐ろしい。


 どう考えても八方ふさがりだ。



 そこに、志郎が「なぁ」と口を開いた。


「今日の堕ち星って、何の星座だったんだ?」

「そういえば、イヌ科としか言ってなかったよね」


 鈴保のその言葉に、由衣が「……いぬ座ってなかったっけ?」と呟いた。

 すると日和が「あるのはおおいぬ座とこいぬ座だよ」と補足してくれた。


「おおかみ座もある。

 ……で、どうなの?」


 智陽がまたしてもこちらに話を振ってきた。

 さっきの話はもういいのだろうか。


 ……いや、考え込んで話を止めたのは俺だが。


 そう考えながらも、俺は「一応」と口を開く。


「りょうけん座というのもある。だから候補は4つだ。

 だが、あの堕ち星の星座を断定する要素がまだない。

 何かもう少し手掛かりがあればいいんだが……」

「あれは、おおかみ座だ」



 突然、俺の言葉に男の声がそう答えた。



 この部屋に男は、俺と志郎しかいない。

 だがこの声は、志郎のものでもない。




 でもこの声は、聞き覚えしかないものだった。




 そして俺達6人はほぼ同時に、その声がした方向の部屋の入口の方に視線を向ける。



 開いている部屋のドアには、男がもたれるように立っていた。




 その男とは、ずっと連絡が取れていなかった児島こじま 佑希ゆうきだった。



 着ている私服こそ、いつものようにちゃんとしている。

 だが顔や手などの見えている肌には、ガーゼや包帯などの手当ての跡が目立っていた。


 そして由衣がすぐに「ゆー君!?」と叫びながら立ち上がり、入口の方へ走り出す。


 日和もすぐに立ち上がり、由衣の後を追う。

 俺も心配ではあったので、立ち上がり後を追う。


「ゆー君……本当にゆー君だよね!?」


 駆け寄りながらそう問いかける由衣。



 しかし、佑希の視線はそんな由衣を見ていなかった。



 佑希の目線は由衣の後ろにいる俺を捉えていた。



 佑希と視線が合う。

 そして佑希は「……戦ったんだな。おおかみ座と」と捻り出すように呟いた。


「あぁ。

 ……お前に、お前の家族に何があった?」


 堕ち星と成った兄、そして弟と妹を殺したという発言。

 どう考えても普通とは思えない状況の詳細を知るために、俺はずっと我慢していた疑問を佑希に投げつけた。



 しかし。


「……これは、俺の家族の問題だ。だから、みんなは関わらないでくれ。

 あいつは、俺が倒す」


 佑希はそう言い切った後、踵を返して部屋から出ていった。



 由衣が「ちょっとゆー君!無視しないでよ!」と言いながら、手を伸ばした。



 しかし佑希は既にその場におらず、その手は空を掴む。



 そして、部屋の扉は閉まった。



 扉が閉まる音が響いた後、部屋には静けさが戻って来た。

 由衣の「ゆー君……何で……」という絞り出したような声が大きく聞こえる。



 そこに。


「……由衣、行くよ。

 追いかけないと」


 日和がそう声をかけた。

 日和はそのまま扉を開けて、部屋の外に飛び出していく。


 するち由衣も「そう……だよね」と呟いてから、その背中に続いた。



 またしても、扉が閉まる。

 そして。


「あれ……マズいよな」

「うん。先月の誰かさんにそっくり」


 志郎と鈴保がそう言いながら、俺のすぐ隣に来た。

 智陽も一緒にいる。


「とりあえず、追いかけるぞ」


 俺は耳の痛い言葉にそう返して、3人を追いかける。



 急いで階段を下りると、1階部分が薄い煙に覆われていた。



 その煙の中を地上まで下りて、ビルの外に出る。



 そこには、由衣と日和しかいなかった。



 見たらわかる状況だが、俺は一応「……佑希は」と問いかける。



 すると、日和が静かに首を横に振った。



 ……面倒な状況が、さらに面倒になっている気がする。



 だが、動かないとさらに悪化する予感しかしない。


「……おおかみ座と一緒に、佑希も探さないといけないな」

「結局おおかみ座はどうするの?」


 そんな智陽の言葉に俺は「……いい策はまだ浮かんでいない」と返す。


「とりあえず、当面はできるだけ全員で固まって行動したいところだ」


 すると鈴保が「無理言わないでよ」と正論を投げてきた。


 確かにそれはそうだ。

 特に俺と由衣と日和の3人と志郎と鈴保の2人の家は駅を挟んで反対側にある。

 そして志郎と鈴保の家も近いわけじゃない。


 ……本当に面倒な状況だ。


 だが、できるだけ対策をしないといけない。


「……できるだけ、1人で行動するな。

 というよりは、1人でいるときにおおかみ座と遭遇した場合は無理をするな」


 その言葉に、仲間達は口々に返事をする。



 だがこのとき。

 佑希を引き留めれなかったためにあんなことになるとは、誰も思ってもいなかった。

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