表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
13節 秘匿されし真実

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

230/285

第227話 記憶

 由衣ゆいの提案で初詣に訪れた俺達。

 そこで臨時の社務所で働いている、巫女服姿の女性を見たそのとき。



 突然、頭の奥底から()()が浮かび上がって来た。



 その何かは、頭の中に不完全な映像を映しだす。



 その光景は何年前かはわからない。

 ただ、俺の視線の高さや場所が星鎖神社らしき場所なことから、小学生の頃の記憶だろう。


 状況としては、どうやらお祭りの日のようだ。

 だが、周りの雰囲気から初詣の日でも、冬でもなさそうだ。


 そうなると……星鎖ほしくさり祭りか?


 そして俺は、ベンチに座って巫女服姿の女の子と話している。

 相手の顔は靄がかかっているようで、ちゃんと見えない。


 話を聞いてると、どうやら彼女にはやってみたいことがあるらしい。



 ただ、その相手は由衣ではなかった。


 もちろん日和ひよりでも、佑希ゆうきの双子の妹の佐希さきでもない。

 それぐらい声でわかる。



 名前を知らない女の子と、話している記憶。



 そして何やら悩む女の子に、俺は「自分がしたいことをしていいんだよ!」と言っている。



 だが、この女の子は誰だ?




 そこで、突然の記憶は途切れた。




 その前後のことは、まったく思い出せない。




 そして今、目の前に見えるのは心配そうに俺を見ている友人達だった。



 最初に恐る恐る「まー君……大丈夫?」と声をかけてきたのは、もちろん由衣だった。

 別に身体には何ともないので、俺は「あぁ。大丈夫だ」と返事をする。


「良かった~~……。

 いきなり立ち止まるし、声をかけても返事をしないから心配したんだよ?」

「……どのくらいだ?」

「えぇっと……」

「1分ぐらい。真聡まさと、具合でも悪いの?」


 言葉に詰まる由衣に代わって、俺の質問に答えたのは日和だった。


 だが、俺が立ち止まったのは具合が悪いわけではない。



 ……由衣と日和は小学校の間、ほとんど一緒に過ごしていた。

 つまり、今ふと思い出した内容について聞いてみれば何か知ってるのではないか。


 そう考えた俺は、今思い出した記憶の話を簡単に説明する。


「巫女さんの服を着た女の子で……私達と同じくらいの女の子?

 しかも、小学生の頃……?」

「私は全く心当たりない。そもそも、4人以外とはあんまり喋ってなかったし」

「私もないかな……。

 でも、冬じゃないなら星鎖祭りじゃないの?」


 残念ながら、相手の女の子については2人とも覚えがないらしい。



 ……だが、2人が知らないとなると本当に誰だ?



 そう考えていると、どこからか「見つけた」と言う声が聞こえた。

 その直後。


「あ、すずちゃん!梨奈りなちゃんに颯馬そうま君も!

 あけましておめでと~!」


 由衣がそう言いながら俺の隣を通り過ぎていく。


 同時に俺も後ろを向く。

 そこには言葉の通り、鈴保すずほと鈴保の友人である好井よしい 梨奈りな小坂こさか 颯馬そうまの3人がいた。


「3人とも振袖似合ってる~!」

「ありがと。由衣ちゃんも似合ってるよ!」

「ありがと~!!」


 好井 梨奈とそんな会話をする由衣。

 そこに日和が「由衣、男の人は振袖じゃなくて袴だと思う」という指摘をした。


 その指摘に由衣は「あ、そうだっけ」と言いながら、こちらを向いて「あれ?」という表情を見せる。


 確かに、振袖とは基本的に女性ものの名前だった気がする。


「で、何してたの?」


 そんなやり取りを気にしていないかのように、鈴保が疑問の言葉を投げてきた。

 すると由衣が両手を合わせながら「そうそう!」と口を開いた。


「なんかさ、まー君がいきなり昔のことを思い出したらしくってさ」

「何……真聡、あんた記憶喪失なの?」


 由衣の説明を聞いた鈴保が疑いの言葉と視線を俺に向けてくる。

 俺は即座に「違う。記憶喪失なわけではない」と否定の言葉を返す。


「突然、今まで思い出さなかったことを思い出すことあるだろ」

「あぁ~……」

「それで、何を思い出したの?」


 好井 梨奈のその言葉に、俺はもう一度何を見たかを説明する。


「私達も小学生の頃から星鎖神社ここには来てたけど……。

 陰星いんせい君と会った記憶はないかな……」

「でも、冬以外の星鎖神社のイベントは星鎖祭りしかないでしょ」


 俺の話を聞いて好井 梨奈と鈴保がそれぞれ自分の意見を口にする。

 そして2人の言葉に由衣が「やっぱり星鎖祭りしかないよね」と言葉を返した。


「……そもそも、陰星はどうしたいんだ。

 その話をしていた相手を知りたいのか?」


 小坂 颯馬のその言葉で、会話が止まった。

 そして、何人かの視線が俺に注がれる。


 ……確かに、会話をしていた相手は気になる。


 だが名前がわからない、そして顔もうろ覚えな相手を探すのはほぼ不可能だろう。



 ……そもそも、俺は聞かれたから見た内容を言っただけだ。

 つまり……。


「俺はただ、思い出したことを聞かれたから話しただけだ。

 話を拡げたのは由衣だ」

「え、私のせい!?」


 そのやり取りで、由衣を除く友人達が()()()笑い出した。


 ……どこに笑うところがあった?


 そんな言葉を口にするか悩んでいると、鈴保が「というか」と口を開いた。


「みんなはどこ行こうとしてたの」

「そうそう!おみくじ引き行こうとしてたの!」

「あ、みんなも行くの?」


 またしても、会話に途中参加する声が聞こえた。

 その直後。


「あ!みっちゃん!それに射守いもり君も!あけましておめでと~!」


 また由衣が即座に言葉を返した。

 そして参加してきた声の方を見ると、矢持やもち 満琉みちるが鈴保達の後ろに居た。


 さらにその後ろには不満そうな顔をしている射守いもり 聖也せいやもいる。


 そんな射守の表情に気が付いているのか、それとも()()()無視しているのか。矢持は由衣と喋っている。


 しかし、射守は表情が一段と曇った後に「……帰る」と呟いた。

 そして階段に向けて歩き出す。


「聖也、ちょっと待ってよ!

 というか聖也も新年の挨拶ぐらいしようよ!去年色々助けてもらったんだし!」

「俺に群れる趣味なんてない」


 射守はそう言い残して俺達から離れていく。


 志郎しろうの「あいつは何も変わんねぇな……」という呟きが聞こえる。


 すると矢持は俺達に「ごめんねあんな感じで……私も行くね」と言いながら、両手を顔の前あたりで合わせた。

 そして小走りで射守を追いかけていく。


 ……いや、俺は射守に言いたいことがあるんだが。


 しかし、周りには俺たち以外にも人がいる。

 あまり大声を出したくない。


 だが仕方ないので、俺は声を少し張って「射守」と名前を呼ぶ。


 すると、射守は階段の手前で足を止めた。


 大声を出し続けるわけにはいかないので、俺は近付きながら言葉を投げかける。


「去年はお前のお陰で色々と助かった。

 だからこれからも、ときどきで良いから力を貸してくれると助かる」


 背中を向けている射守と、こちらを向いている矢持のすぐそばまで来た俺は立ち止まる。 

 そして、射守からの返事を待つ。


 少しの間の後、射守はこちらを向かずに「何度も言わせるな」と言葉を返してきた。


「俺には群れる趣味などない。

 他人に協力を頼む前に、群れて遊ばずに強くなる努力をしろ」


 そう言い残して、射守は階段を下りていった。


 一方、矢持はため息をついている。


「真聡君ごめんね。結局あの日から何も話せてなかったの。

 でも私に連絡してくれたら、何とか聖也連れて行くから!」


 そう言ったあと、「じゃあまたね」と言って階段を下りて行った。

 微かに「聖也~!ちょっと待ってよ~!」と言う声が聞こえる。


 ……駄目か。


 そこに。


「……振られちゃったね」

「俺達だって努力してるのに……ほんとなんだよあいつ」


 いつの間にか俺の近くに来ていた由衣と志郎がそんな言葉を呟いた。


 だが、俺は今の会話で「射守が共闘を拒否するのには何か深い理由がある」という気がした。


 そこに今度は、「ねぇ、いつおみくじ引きに行くの?」という日和の声が聞こえてきた。


「そうじゃん!凄く脱線してる!」

「でもいつの間にか列も短くなってんな!」


 日和の指摘にそう返す由衣と志郎。


「せっかく会えたしさ!すずちゃんたちも一緒に回ろうよ!」


 由衣がそんな言葉を口にしながら、他の5人の方へ歩いていく。



 こうして、俺の新年は騒がしい始まりを迎えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ