第224話 聞いてない!
「ごちそうさまでした~!
やっぱりみんなで食べるご飯っていいよね!」
そんな由衣の満足そうな声が、部屋の中に響く。
続いて、由衣の近くに座っているメンバーがその言葉に反応する声が聞こえる。
一方俺は既に食べ終わっていて、その輪から抜けていた。
ちなみに食べたのはいつものゼリー飲料ではなく、ちゃんとしたもの。
理由はゼリー飲料で済まそうとしたら、由衣に凄い勢いで怒られたからだ。
そのため、渋々目に留まったパスタサラダを買った。
智陽には「もっとしっかりしたもの食べたら?これ以上痩せる気?」と言われたが気にしないことにした。
由衣が「普段よりもちゃんとしたものだからいいの!」と言っていたし。
そして今はノートパソコンと向き合っている。
だが、一応「きちんと流しに入れておいてくれよ」という言葉を投げる。
「わかってるってば!
洗ってゴミ箱に入れておけばいいんでしょ?」
「あぁ。ちゃんと分別してくれ」
すると由衣の「は~い」と言う返事が聞こえた。
キッチンスペースに行ったためか、少し声が小さく聞こえたが。
だが流石の由衣も食べる前に注意したことは覚えていたようだ。
そして恐らく、全員食べ終わったはずだ。
説明の再開……というよりは、今後についての話をしないとな。
そのため俺はノートパソコンを閉じて、さっき座っていた場所に戻る。
するとちょうど俺が戻ったタイミングで、由衣も戻ってきた。
それに合わせるように、再び仲間達が話をする体勢に戻った。
なので俺は「さて」と口を開く。
「話の続き……というか今後についてだが」
「その前にさ。午前中の話を確認をしてもいい?」
由衣が俺の言葉を遮ってそう聞いてきた。
昼ご飯食べた以上、今日中に終わるなら時間を気にする必要はそこまでない。
それに、それで理解が上がるならやるべきだろう。
そう思った俺は「いいぞ」と返事をする。
「ありがと!
えっと、まー君は小学校卒業後の春休みにお父さんとお母さんが亡くなった。
そのあと、ギアを使えるようになるために中学は国立魔師学院に行ったんだよね」
由衣がそこで一呼吸ついた。
俺は一応「そうだな」と返事をする。
するとそこに智陽が「質問していい?」と聞いてきた。
止める理由はないので「あぁ」と返事をする。
「気になってたんだけどさ。何で真聡がギアを持ってるの?
研究所の研究対象だったよね?」
俺が持っている理由。
それは…………。
……もしや。
「……話してなかったか?」
「そもそも研究所って何?」
日和からそんな質問が飛んできた。
それに続いて、矢持も「私も知りたいな」と言う言葉が飛んできた。
研究所について説明したのは確か夏休み。2人が居なかったのは間違いない。
……もう一度説明しておくか。
「正式名称、時代錯誤異物研究所。
今は閉鎖された、星雲市にある協会の末端研究機関だ」
「そこ関係あったの!?」
由衣の驚きの声が飛んできた。
それに対して智陽が「あるでしょ」と言葉を投げる。
「あんな不思議なもの調べてるなんて普通じゃないでしょ」
「閉鎖されたのは職員がいなくなったという理由。失踪、死亡という感じでな。
だから父さんと母さんの知り合いで、出入りが可能だった焔さんがギアを回収し、俺に渡してくれたってわけだ」
由衣には智陽が返事をしてくれた。
なので俺は続いて、説明の残りを口にした。
これで十分だろう。
必要なことは言った。
なので俺は由衣の次の言葉を待つ。
しかし、智陽が「いや、そうじゃないし」と言葉を投げてきた。
意図が読めない俺は「何がだ」と言葉を返す。
「何で、真聡に所有権があるのかって聞いてるの」
その言葉で俺はようやく智陽の質問の意図を理解した。
……この話もしないといけなかったな。
「ギアはそもそも、俺の父さんの所有物だった。
子供の頃、実家の物置で見つけたらしくてな」
すると、仲間達の「はぁ!?」という驚きの声が部屋に響いた。
そして続いて鈴保の「待って?」という声が飛んできた。
「何であんな不思議なものが家の物置にあるの?普通ないでしょ!?」
「実際にあったものはあったんだ。俺が見つけたわけでもないから言われても困る」
「それは……そっか……」
鈴保は少し申し訳なさそうに口を閉じた。
だが、そう言われると謎だ。
何故実家の物置に神遺物があったんだ?
……近いうちに一度、調べに行った方が良いかもしれないな。
そう考えていると、智陽が焔さんにギアについて質問していた。
しかし、結果は「知らない」との返事。
昔、俺も同じことを聞いたな。
俺はそこで、もう1人聞ける人が増えたいたことに気が付いた。
俺はプレートなどを置いている棚がある後ろに顔を向ける。
そして「ペルセウス座は何か知っていますか?」と聞いてみる。
すると、プレートを保管しているケースが開いて、中からペルセウス座のプレートが自分で出てきた。
「ギアについてかい?」
「そうです」
「いやぁ……残念ながら僕も知らないんだよね。
僕らが生きていた時代はそのままの姿で力を使っていたからね。君達みたいに鎧を纏うなんてことはしなかったし。
役に立てなくてごめんね」
そんなペルセウス座の言葉に、俺は「気にしないでください」と返す。
期待した答えは得られなかった。
まぁ、予想はしていたが。
……そうなると、ギアはいつ作られたんだ?
国が滅びた後に作られたとなると誰が作ったんだ?
そう考えていると「まー君~続き聞いてもい~い?」という声が耳に入った。
同時に俺の目の前で手が上下に振られている。
俺は気を取り直して「悪い」と口を開く。
「『ギアがいつ作られたか』について考えていた」
「も~~。
それで、まー君はその学校で稀平君と……あの女の子と出会ったんだよね?」
「妖崎 清子。あいつ、名乗らずに帰ったのか……。
そういえば、真実吐き薬は返したのか?」
「うん。清子ちゃん、戦いが終わってからすぐに取りきたよ。
それで、その学校で魔術とか魔法、神遺について勉強してたの?」
「そうだな。
世間には伏せられている話、魔師についてのことを色々な」
するとそこで日和が「……でも今は私達と同じ普通の学校に通ってるよね?」と呟いた。
「学園って言うから中学3年だけじゃ終わらないよね?大丈夫なの?」
「小学1年生と同じ年齢からの初等部、そして中等部、高等部、大学に当たる専門部がある。
正直、超中途半端で出てきた」
「大丈夫なのそれ」
「俺は神遺に当たるギアを使うために学院に入っただけで、魔師になるつもりなわけではないからな。
だが、最低限必要な知識は叩き込んできた」
するとその言葉に由衣が「まー君……大変だったんだね……」と呟いた。
そんな由衣の向こう側に座っている日和から今度は「それで、何でこっちに戻ってきたの?」という質問が飛んできた。
「この街の地下で、魔力の異常が検知されたらしいんだ。それが中等部3年の学期末。
だから俺は、その原因を調べるために戻ってきた」
「そ、それが理由だったの!?」
また由衣の驚いた声が飛んだ。
今日一番の大きさの声。
そういえばこのことも……。
「言ってなかったか」
「「聞いてない!」」
由衣の言葉に日和も声を重ねてきた。
そして俺は由衣の「ねぇ~!!聞いてないんだけど~!」という声と共に、揺さぶられることになった。
……話が進まないからやめてくれ。




