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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
12節 手を伸ばす

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第216話 だけど私は

 市役所前広場で、まー君が自分ごと天秤座の堕ち星を凍らせていく。



 私とひーちゃんは、その光景を遠くから見ているしかなかった。




 本当は、そんなことして欲しくなかった。




 でも、まー君の流星群を受けても天秤座は倒れなかった。

 作戦に無かったしろ君の流星群も受けていたのに。


 でも「もしそれでも無理なら、凍らせるぐらいしかないだろ」とまー君は言ってた。


 もちろん私達は反対した。

 だってそんなことしたら、まー君が無事じゃすまないかもしれない。


 でも、まー君は「解決策もある。それでも反対するならこれ以外の作戦を用意しろ」と言って来た。


 もちろんすぐに代わりの作戦なんて思いつかない。

 だから、その作戦で行くしかなかった。



 そしてゆー君、しろ君、すずちゃんの星鎧は消えてしまった。

 だから、私とひーちゃんに託されている。



 深呼吸して、気持ちを落ち着ける。



 次に私はその()()()に組み込まれたほむらさんに「焔さん、いけますか?」と声をかける。


「あぁ。俺はいけるよ」

「わかりました。

 ひーちゃんは?」

「私も大丈夫」


 2人の確認が取れた。

 次に私は杖を両手で身体の前で持って、言葉を紡ぎ始める。


「眠れ。眠れ。苦しみも、憎しみも、恨みも、その力さえも。いつかあなたの辛い出来事が、悪い夢だったと笑える日が来るそのときまで」


 すると、私の周りに10匹ほどの半透明の羊が現れた。


「準備できました!」

「了……解!」


 その返事と共に、焔さんは大きな剣を横と縦に振った。

 すると炎が横と縦にクロスの形になって、凍ったまー君と天秤座の堕ち星に向かっていく。


 その炎に続いて、背中に翼を生やした焔さんが向かっていく。

 ひーちゃんもその後を追いかけて走っていく。


 横に長い炎がまー君と天秤座の氷を溶かす。

 次に縦に長い炎がまー君と天秤座の間に炎の壁をつくった。


 ひーちゃんがまー君の周りに水弾を撃って炎の勢いを抑える。

 そこで私も羊を突撃させる。



 そして焔さんは氷が解けて、地面に倒れたまー君を連れて戦場から離れた。




 あとは私の半透明の羊で天秤座を元の人間に戻す。




 はずだった。




 突然、身体に立ってるのが辛いぐらいの凄い圧がかかった。



 だけど私は杖を支えにしてなんとか立ち続ける。

 でもさっき作った半透明の羊たちは消えてしまった。



 話は聞いてるし、さっきから何回も見てるからわかる。




 天秤座の力。




 そう。天秤座は()()、立っていた。



「本当に……何でみんな揃って僕の邪魔をするんだ」


 そんな呟きが聞こえてきた。


 でも声や立ち方からだいぶしんどそうに見える。


 ……それでも、これだけの力がまだ残ってるんだ。


 そんな考えは置いておいて、私は力を振り絞って反論する。


「あなたこそ、何でわからないの?まー君の友達なんでしょ?

 だったら、まー君が『何を許さないか』ぐらいわかるでしょ?」

「……真聡まさとは甘いんだ。甘すぎる。あいつらの話の通じなさを知っているはずなのに。

 訴えるだけじゃ何も変わらない。だから、手を汚してでも社会を変えなきゃいけないんだ」

「……手を出して、誰かを傷つけてしまったら。その人達と、同じだと思う」

「何もわかってない癖に偉そうに言わないでくれよ!」


 そんな天秤座の叫びが、広場に響いた。



 ……確かに私は何も知らない。

 まー君には稀平君について、まだ簡単にしか教えてもらってない。



 でも、無視できるわけがない。



 私はそんな決意と一緒に「……確かに、私は何も知らない」と言葉を絞り出す。


「だけど私は友達が苦しんでて、その原因が私の知らない友達でも、助けてあげたい。

 そして、その友達も苦しるんでるなら。放っておけない。

 ……ねぇ。あなたはどうして、そこまでするの?」

「俺はただ……俺が、俺達が、俺達のような人が、生きやすい社会をつくりたいだけだ」


 そう呟いた天秤座は、どこか少し悲しそうに見えた。



 そして、天秤座は左手をふらふらと上げた。



 ……来る。



 でも、私にだって対策がある。



「よって、僕の行く手を阻むもの、万死の罪に値する。

 その罪、命で贖え」


 その言葉と共に、圧を与える透明の力の波が天秤座から放たれた。




 でも今度の私は、その圧を受けない。




 だって、空へと飛んだから。



「君まで飛べたのか……」


 天秤座が私を見上げて、そんな言葉を呟いてるのが聞こえた。



 私だって、リードギアを使える。

 そして使っているのはまー君がいつも使っているわし座。



 みんなの中で、私だけが堕ち星を元に戻せる。

 だからまー君は「由衣が自由に動けるように」ってわし座を貸してくれた。


 まー君は「こぎつね座の力を使って、はえ座をわし座だと間違えるように仕掛ける」と言っていた。


 だからきっと、天秤座は私まで飛ぶことができると思っていなかったはず。



 そして、天秤座のあの圧力は飛んでいる私には届かないみたい。




 これで、終わりにするんだ。



 その決意を改めて持ち直して、言葉を紡ぐ。


「眠れ。眠れ。苦しみも、憎しみも、恨みも、その力さえも。いつかあなたの辛い出来事が、悪い夢だったと笑える日が来るそのときまで!

 導け、羊の群れ!」


 十数匹ほどの半透明の達が天秤座を目掛けて走っていく。

 見えない坂を駆け下るみたいに。


 だけど天秤座は土の壁を生成して、羊が襲ってくる方向を制限した。



 そして、向かってくる羊を殴って蹴って、返り討ちにしている。



 でも反撃のときに羊に触ってるし、不意を突いた子が何匹かぶつかってる。



 それでも、まだ足りない。



 だから私はもう一回、言葉を紡ぐ。


「眠れ。眠れ。苦しみも、憎しみも、恨みも、その力さえも。いつかあなたの辛い出来事が、悪い夢だったと笑える日が来るそのときまで。

 全てを埋め尽くせ!羊の長!」


 言葉を唱えている途中から、私の上に車よりも大きくて、立派な角の生えた半透明の羊が生成される。



 そして、紡ぎ終えた今。

 車よりも大きくなった羊は、天秤座の真上から落下する。



 そして天秤座は、羊の下敷きとなった。

 流石に車よりも大きな羊は避けれないみたい。



 そしてその瞬間。

 私の身体も地面に向かって落下し始めた。



 私はまー君が天秤座を凍らせるまでは、ずっと後ろで星力を温存させてもらってた。

 でも今、リードギアを使いながら沢山の羊を生成した。



 ……星力を、使いすぎたみたい。



 私はふらふらと地面に向かって落ちる。



 でも、なんとか地面に降りれた。

 同時に星鎧は光と共に消滅した。



 そして、身体は支えられていた。


「ちょっと由衣!大丈夫?」


 私はその声と支えられたことでようやく、ひーちゃんがすぐそばにいることに気が付いた。


「ごめんね。地面に降りるので必死で……」

「『受け止めるから』って叫んでたのに、返事しないから。焦ったんだから」


 どうやら私は集中しすぎて、ひーちゃんの声に気が付いてなかったみたい。

 私はもう一度「本当にごめんね……」と謝る。


 でもよかった。

 ひーちゃんは1回目の圧を受けた後に何とか下がる姿は見ていた。


 でも、そこからどうなったかは見れてなかった。

 ちゃんと無事だったんだ。



 そんなことを思っていたそのとき。

 天秤座の上に乗っていた巨大羊が消滅した。



 星鎧が消滅してしまった私の前に、ひーちゃんが庇うように出た。



 ……もし、失敗していたらどうしよう。

 もうひーちゃんしか戦える人がいない。



 そんな不安が頭の中に出てくる。



 私は不安を追いやって、ひーちゃん越しに天秤座の姿を確認する。




 すると、そこには。




 見慣れない制服を着た男の人が、倒れていた。

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