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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
12節 手を伸ばす

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第214話 踏み台に

 時間は陰星いんせい 真聡まさとが天秤座に吹き飛ばされた直後に戻る。


☆☆☆


 追撃の澱みの塊をぶつけられた俺は、仰向けにコンクリートの地面に叩きつけられる。



 落下している間に耐衝撃魔術を使うことはできたので、ダメージはそこまでない。



 しかし、星鎧は消滅してしまった。

 


 どうやら昨日の戦闘の影響はまだ残ってるらしい。



 だけど身体は動く。



 なら、作戦通り進めるべきだ。



 友人達あいつらだって、弱いわけじゃない。



 だが相手が悪すぎる。



 やはり、友人達あいつらだけで天秤座の堕ち星に勝てるとは思えない。



 俺は身体を起こして、辺りを見回す。



 周りは住宅地。

 だが戦場である市役所近くの広場からはそう離れてはないだろう。


 実際に市役所が少しだけ見えている。


 周りに人はいない。

 警察による封鎖区域だからだろう。


 その証拠のように、遠くから「外に出ないでください」という放送が聞こえる。



 ……早く、戻らないとな。



 俺は立ち上がって、身体能力強化魔術を使用する。



 そしてとりあえず、市役所に向けて走り出した。


☆☆☆


 星雲市市役所は駅周辺のオフィス街と駅から少し離れた住宅地の境目に位置している。

 そして俺は市役所をぐるっと周って、オフィス街側にきた。


 作戦上、天秤座の上を取る必要がある。

 ならば、ビルに上ったほうが早い。


 ここに来る途中に佑希ゆうき志郎しろう鈴保すずほの3人が俺もやられた技で上空に飛ばされたのが見えた。


 無事だといいんだが。


 ……というか、何で稀平きっぺいがテーブルさん座の力が使えるんだ。


 そんな疑問を持ちながらも、俺はとある市役所広場近くのビルの近くに居た。

 そして外付けされている非常階段を上ろうと見上げる。


 ただ、外からの入り口には扉と囲いがある。


 だが、2階より上には囲いがない。


 つまり、ここに入るなら2階以上の高さまで飛ばないといけない。



 ……助走をつけて、魔術で身体能力を強化したら届くだろうか。



 そう思いながら後ろに下がって、助走をつけようとする。




 そのとき。

 「陰星」と俺を呼ぶ声が聞こえた。



 声がした方向に視線を向ける。



 そこには、戦闘から離脱したはずの妖崎ふざき 清子きよこがいた。


 ……いや。


「何でここにいる」

「私だって魔師なんだけど」

「そうじゃない。

 魔術では神遺に勝てない。清子だってわかってるだろ」


 俺がそう返すと、清子からは舌打ちしたような音が聞こえた。

 その直後、清子は「……私と言い争いしてる暇あるの?」と言葉を投げてきた。


 当然、そんな暇は。


「……ない」


 俺がそう返すと、清子は俺が登ろうとしているビルを見上げた。

 そして「ここ、登るの?」と聞いてきた。


 俺は素直に「あぁ」と返す。


「どうやって?」

「2階以上の高さまで飛ぶ」


 方法は答えた。

 しかし、清子からの返事は来ない。


 その代わりに清子は俺の正面、非常階段の下あたりに向かって歩いていく。

 そして、無から洋剣を生成した。


 恐らく、召喚魔法で喚び出したんだろう。


 一方、清子の考えが全く分からない俺は「何をする気だ」と質問する。


「魔力消費抑えた方がいいでしょ。私が踏み台になってあげるから」

「……いいのか」

「そう言ってるでしょ。時間ないんだから、無駄なこと聞かないでくれる?」


 それはそうだ。

 俺は「時間はないが聞きたくなるだろ」という言葉を飲み込む。


 清子が何故星雲市(この街)に来て、協力してくれるかはわからない。

 だけど、今はその手を借りるしかない。



 俺は身体能力強化魔術を使ってから「じゃあ行くぞ」と言葉を発する。

 そして、走り出す。


 清子は足を開いて、腰を落とした。

 そして右手で剣の握り、左手で剣先を持って剣を頭上で構えた。


 ……多分剣を足場にしろってことだよな。


 そう考えた俺は清子の少し手前で踏み切って、跳ぶ。


 そして、清子の剣の刃に飛び乗る。

 すると清子が剣を押し上げた。


 俺はそれに合わせて剣を踏み込み、さらに跳ぶ。



 その結果、俺の身体は当初の想定よりも高く舞う。

 そして階段に飛び込むために、両手を伸ばす。


 すると両手は、非常階段の4階の踊り場の足場を掴んだ。

 俺は身体を一度後ろに振ってから3階の踊り場に飛び込む。


 その結果、俺は無事に踊り場に両足で着地した。



 とりあえず、深呼吸をする。



 なんとか飛び込むことはできた。



 だが、休んでなんていられない。

 ……清子には後で礼を言おう。



 そう思って屋上を目指して、俺は階段を上り始めた。


☆☆☆


 屋上に出た俺は端まで行って地上の様子を確認する。



 戦場の市役所前広場は煙で覆われている。



 しかし、その煙はすぐに消えた。



 まだ、天秤座の堕ち星は立っている。



 ……急がないといけない。


 俺は少し後ろに下がりながら、左手をお腹の上で右から左へと移動させてギアを喚び出す。

 同時に。次にリードギアに差して使うプレートを制服のブレザーの内ポケットから取り出して右手で持つ。

 一方、いつもの手順で左手の中に生成した山羊座のプレートをギアに挿し込む。


 そして、左手を時計の9時の位置から時計回りに一周させる。

 その後、左手を伸ばしてから目元を隠すようにもってくる。


「星鎧、生装」


 その言葉と共に、下ろす左手でギア上部のボタンを押す。

 するとギア中心部から山羊座が飛び出して、光が俺の身体を包みこむ。


 光の中で俺は紺色のアンダースーツと紺色と黒色の鎧を身に纏う。



 そして光は晴れる。



 さぁ、ここからが本番だ。

 俺は右手に持っているプレートに「ペルセウス。力を借ります」と声をかける。


 すると『あぁ。始めようか』と言葉が返ってきた。


 俺が取り出しておいたのはペルセウス座のプレート。


 作戦とは、まず俺が最前線で戦い、途中で離脱する。

 天秤座の堕ち星には、離脱したと思わせる。


 実際の俺の動きは天秤座の不意を突いてペルセウス座流星群を喰らわせる。


 本来は俺が使える魔術を詠唱で威力を上げて喰らわせる予定だった。


 だが作戦会議の時に、ペルセウス座が『今の真聡君なら僕の力を使えるはずだ』と言ったため、流星群に変更となった。



 ……結局、ペルセウス座が俺の中の何が()()()()()と感じたのかはわからないままだ。

 だがそう言われた以上。今はそのズレが修正されたと考えていいのだろう。



 俺はペルセウス座のプレートをリードギアに差し込む。

 そして詠唱を始めようとしたとき。



 誰かが非常階段を上がってくる気がした。



 俺は念のために振り向く。


 すると。


「で、次はどうするの」


 そこには、さっき下で別れた清子が少し息を切らしながら立っていた。

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