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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
12節 手を伸ばす

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第207話 息子をよろしく

「本当に大丈夫?」

「うん、ありがと。大丈夫。

 ひーちゃんもゆっくり休んでね?」

「……うん。ありがと」

「じゃあまた明日」

「うん。また明日」


 そんな会話の後、私は門を開けて自分の家の敷地に入る。


 あの後、みんなでまー君に何を伝えるか話し合った。

 あと、あの女の子が助けになりそうな……薬?を貸してくれた。


 でも、問題はどうやってまー君に飲んでもらうか……なんだよね。


 「上手く行くのかな」という不安を抱えながらも、家の扉を開ける。

 そして「ただいま~」と言いながら中に入る。


 すると、すぐにお父さんとお母さんがリビングから出てきた。


由衣ゆい、大丈夫か?」

「うん。大丈夫」

「連絡がないから心配したのよ」


 ……やっちゃった。

 いつも遅くなるときに連絡するようにしてるのに、今日は色々ありすぎて忘れてしまってた。


 私は素直に「ごめんなさい」と謝る。


「……真聡まさと君と、何かあったか?」


 お父さんのその言葉に、私の口から思わず「えっ?」という声が漏れた。

 そんな私の反応にお母さんが「やっぱり……」と呟く。


 ……私、そんなにわかりやすいかな。


 そして今度はお父さんが「……話す時が来たのかもな」と呟いた。

 話に着いて行けない私は「え……え?何の話?」と聞いてみる。


「とりあえず、コートを脱いで手を洗ってきなさい」

「そうだな。それから話そう」


 話って何だろう。

 そう思いながらも私は、靴を脱いで家の中に上がった。


☆☆☆


 手を洗って、自分の部屋に鞄を置いて、部屋着に着替える。


 その後リビングに戻ると、お父さんとお母さんはいつもの席に座っていた。

 そして、私の席には私のコップにココアが入っていた。


 とりあえず、自分の席に座る。


「それで……話って、何?」

「……お父さんとお母さんは、由衣に謝らないといけないんだ」


 お父さんの全く予想してない言葉に、私の口からはまた「え?」と言葉が飛び出す。


 本当に予想してなかった。

 ついに「戦うのをやめなさい」とか、そういうことを言われるのかなって思っていたから本当にびっくりした。


 だけど私は気を取り直して「謝るって何を?」と聞き返す。


「2つあるんだ。

 1つ目は中学生卒業前に、真聡君が居なくなったこと。

 お父さんとお母さんは、居なくなるのがわかってたんだ」


 さらに予想外の言葉に、私は咄嗟に「……え、本当にどういうこと!?」と聞き返す。


「『何も聞いてない。きっと家の急な事情で引っ越したんだろう』って言ってたじゃん!」

「お父さん、言葉選びが悪いわ。

 あのね由衣。お父さんもお母さんにも本当にいきなりだったのは本当なの。何も聞いてはいなかったの。


 でもね。居なくなる前に真聡君のご両親に言われたことがあったの。

 『これからも息子をよろしくお願いします』って。

 言われたときはね、『お仕事が忙しくなるかもしれないから、これからもお世話になります』って意味だと思ってたの。


 でも、いきなり居なくなってから気が付いたの。

 真聡君のご両親は自分達の身の危険を感じてたんじゃないかって。

 だから、何かがあった時のために仲のいい由衣の親である私達に、真聡君を頼みたかったんじゃないかって」

「だけど、真聡君の身にも何かがあった。だからいきなり居なくなってしまったんじゃないかと考えていたんだ。

 でも、いきなり居なくなって落ち込んでる由衣に、『真聡君に何かあったのかもしれない』なんて言えなかったんだ。本当にすまない」


 その言葉の後、お母さんとお父さんが頭を下げた。


 すぐには理解できない。

 でも私は慌てて「で、でも」と口を開く。


「お父さんもお母さんも本当はどうなったかなんて知らなかってんでしょ?

 だから謝らないでよ!頭上げてって!」


 その私の言葉でお父さんとお母さんは頭を上げてくれた。

 その後、お父さんは「でも、もう1つ謝らないといけないんだ」と話を続ける。


「あの遠足の日の夜。真聡君に3年ぶりに会って、『ご両親は亡くなった』と聞いた後。

 ご両親にああ言われた以上、せめて真聡君が成人するまでは見守ろうとお母さんと話したんだ」

「あ、だから2人とも『晩御飯だけでもまー君連れてきなさい』って言ってくれたの?」


 私のその言葉に「そうなの」と返してくれたお母さん。


 ……そんな話をしてたなんて、全然知らなかった。


 「家に呼んでいいよ」って言ってくれたのは、お父さんとお母さんなりにまー君のことを心配してるからかなって考えてた。


 でもまさか……そんな理由があったなんて……。


 そう思っていると、お母さんが「……でも」と口を開いた。


「由衣ももう高校生。私達が、由衣の人間関係を縛っちゃ駄目よね。

 だから、由衣。もう、無理に真聡君と仲良くしなくてもいいのよ」


 そんあお母さんの言葉に衝撃を受けて、私は固まってしまった。



 ……違う。

 私は、お父さんとお母さんがそう言ったからまー君と一緒にいるわけじゃない。




 私が、まー君と一緒にいたいから、友達でいる。



 だから私は「ううん」と首を振る。


「私が好きだから、まー君の友達でいたいの。

 だから、お父さんとお母さんはそんなこと言わないで?

 私も、まー君のこと心配だし。

 でもこれからも、沢山心配させちゃうかもしれないけど……」

「そこは気にしなくていいのよ。

 確かに心配はするわ。でも、由衣が好きなことをする方が大事だから。

 元気に帰ってきてくれたらそれでいいのよ」

「そうだな。

 それに、真聡君なら安心して由衣のことを任せられるな」


 お父さんのその言葉に反射的に「そ、それどういう意味!?」と言い返す。


 するとお父さんとお母さんは揃って笑い出した。

 そしてお母さんは笑いながら「あら、違うの?」と聞いてくる。


 違うかどうか、どういう意味で言われてるかわからない。


 でもなんか、からかわれてる気がした私は「ち、違うもん!そういう好きじゃないもん!」と返す。


 お父さんとお母さんはまだ笑ってる。


 なんだか恥ずかしくなってきた私は「話が終わたならご飯食べたい!お腹空いた!」と無理やり話題を切り替える。


 すると、ようやく笑い終わったお母さんが「そうね。笑ってないでご飯にしましょうか」と立ち上がって、キッチンへ向かっていた。


 お父さんも「そうだな。手伝おうか」と言って、お母さんに着いて行った。


「あれ、まだ食べてなかったの?」

「今日は早かったからな」

「お父さん、こう言ってるけど『市役所近くで怪物騒ぎがあった』って飛んで帰ってきて、『連絡ないならいつでも迎えに行けるようにしないと』って言って待ってたのよ?ずっとそわそわしてたし」


 するとお父さんはお母さんの言葉に「お母さん……言わなくていいだろそれ……」と言い返してる。

 お鍋をキッチンからリビングに運びながら。


 お父さん……照れてる?


 そう思いながらも、私は「お父さん、ありがと!」と感謝の言葉を口にする。


「あと、心配かけてごめんなさい。

 でも今日はただ連絡忘れてただけだから、全然元気!

 だから私も手伝う!今日は何なの?」

「今日はシチューよ。じゃあ由衣、お皿お願いね」


 そう言われながら、お父さんが持ってきたお鍋を覗いてみる。


 お鍋の中には湯気を立てながらも真っ白に輝きながら、色とりどりの野菜が浮かぶシチューが入っていた。


 中身を確認した私はお母さんの言葉に、「はぁ~い!」と元気よく返事をしてキッチンへ向かう。





 家って、家族って、暖かくて安心する。




 ……でも、まー君には家で帰りを待ってくれる人はいない。




 きっとまー君は、まー君のお父さん(おじさん)お母さん(おばさん)が亡くなった日からずっと独りだったんだ。




 だからせめて、私はまー君の味方であり続けたい。




 だから私はまー君が「嫌だ」と言っても、話を聞く。




 私はそう決めた。




 でも、お腹がすいたらできることもできない。




 だから今は、お母さんが作ってくれた晩御飯を食べる。




 きっと上手くいく。




 そう思って、願って。

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