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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
12節 手を伸ばす

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第205話 また会えたのに

 時間はまた戻り、真聡まさと由衣ゆいの口論の直後。


☆☆☆


「……もう知らない。まー君なんて、大っ嫌い」


 そう吐き捨てて、由衣は部屋から出ていってしまった。



 私は引き留めようと、出て行く直前に「ちょっと由衣!」と叫ぶ。



 でも、由衣は戻ってこない。

 閉まった扉は開く気配も、動く気配もない。




 確かにここ数カ月の真聡は変だった。

 でも由衣が「4月よりはマシだからそっとしておきたい」と言っていたから、気にしないことにしていた。



 でも、流石に今の言葉は許せない。



 真聡が居なくなった後の由衣の様子が変だったのも言った。

 由衣がどれだけ真聡のことを心配してるか、わかってないわけじゃないはず。



 それなのに、「会いたいなんて、思わなきゃ良かった」なんて言える真聡に腹が立って仕方がなかった。



 私は真聡の方を向いて、「最っ低」と吐き捨てる。

 そして由衣の上着と鞄、そして自分の分を掴んで部屋から飛び出す。


 由衣を追いかけるために、ビルの階段を急いで降りる。



 真聡が嫌いなわけじゃない。

 私だって大切な友達で幼馴染だとは思ってる。



 だけど今は。

 由衣を傷つけて、由衣の気持ちを踏み躙ったことが許せなかった。



 ビルから飛び出して、辺りを見回す。



 でも、由衣の姿はどこにもない。



 そもそも、由衣は私よりも体力がある。

 由衣が全力で走ってたら、追いつけるわけがない。


 だからと言って、ほっておける訳がない。


 今の由衣なら……どこに行くかな……。


 そう考えていると、「日和ひより」という声と共に肩に手が置かれた。


 後ろを向くと、佑希ゆうきがいた。


「一緒に探すよ」

「……ありがと」

「今の由衣なら……家に帰るか?」


 佑希の呟きは間違ってない。

 小学校の頃にも拗ねて部屋から出てこないことがあった。


 でも、今回は……。


「多分、違うと思う」

「じゃあどこだ」

「たぶん……()()()()

「……何か理由があるんだな。行こう」


 その会話の後、私達は公園に向けて歩き出す。


 ()()()()

 それは私達の家の近くにある地域の公園。

 昔、5人でよく遊んだ場所。


 どうしてそこに由衣が行ったと思ったのか。


 それは中学に上がって、真聡が居なくなってからのある日。

 由衣と遊びに行った後、「帰ってこない」と由衣のお母さんから連絡があったことがあった。

 由衣とは家の近くで別れたのにもかかわらず。


 そして探し回った結果、そのときはその公園で1人で座っていた。


 だから、もしかしたら今回も……。


 ということを話しながら、慣れた住宅街を早足で歩く。



 すると話が終わってから、佑希が「由衣の鞄、俺が持つよ」と声をかけてくれた。


 勢いで持ってきたけど、ちょっと重いって思った。

 だから「ありがと」とお礼と共に、由衣の鞄を佑希に預ける。


 そのやり取りの後も、私達は歩き続ける。 



 そして、真聡の家を出てから10分ほど。

 遂に話していた公園が見えてきた。



 その公園には……。


「由衣!」

「ひーちゃん……?ゆー君……?」


 ベンチで独り座っている、由衣がいた。


 とりあえず見つかってよかった。


 そう思いながら駆け寄る。


 そして「風邪ひくから」と持ってきた上着を着せる。

 すると由衣は下を向いたまま「……ごめん」と呟いた。


「……由衣は悪くない」

「でも……どうしよう……」

「だから、由衣は悪くないんだから気にしなくて良いって」

「でも私、まー君に『大っ嫌い』って言っちゃった……」


 顔を上げた由衣の目には、涙が浮かんでいた。


 目が赤い。

 きっと、泣きながらここまで走ってきたんだと思う。



 そんな由衣の気持ちを考えると、余計に真聡が許せない気持ちになってきた。




 由衣は純粋で、良くも悪くも優しすぎる。




 私は、そんな優しい由衣にこれ以上傷ついて欲しくない。



 だから、心を鬼にして口を開く。


「……真聡が悪いよ。

 人が、こんなにも必死になってるのに、『会いたいなんて、思わなきゃ良かった』なんて言うなんて。

 やっぱり真聡は、小学校の(あの)頃の真聡じゃない。

 あんなやつ、縁を切ってやればいい。戦うのも辞めたらいい。

 私も、一緒に辞めるから。

 だからもう……真聡のために、危ないことに首突っ込むのやめてよ」



 辺りが暗くなり始めた冷たい空気の公園に、私の冷たい言葉が響く。



 誰も、言葉を発さない。



 その数秒後。

 由衣が「でも……」と呟きながら、ベンチから立ち上がった。


「今私達が離れると、まー君は1人で戦うことになっちゃう」

「いいでしょ、別に。本人が望んでるんだし」

「でもそうしたら!だれがまー君を助けるの?

 まー君はみんなの笑顔を守るために戦ってるのに!

 そんなまー君の笑顔は、誰が守るの?

 ……私達しかいないじゃん」


 今度は由衣の涙ながらの熱い思いがこもった、言葉が公園に響く。


 でも真聡のため戦うと、由衣が傷つくことになる。

 私は引き続き心を鬼にして、言葉を続ける。


「でも本人は、それをいらないって言った」

「じゃあひーちゃんは!まー君がおかしくなっちゃってもいいの!?まー君がいなくなってもいいの!?

 ……私は嫌だよ。せっかくまた会えたのに……。私は、みんなに笑っててほしいだけなのに……!」


 由衣は顔を両手で覆い、泣き出してしまった。

 そして力が抜けたようにまたベンチに座る。


 ……真聡が嫌いなわけじゃない。

 でも本人がああ言っている以上、私はどうしたらいいかわからない。



 だからせめて、由衣が傷ついて欲しくない。



 そう思ってた。



 でも今度は。私が由衣のために言った言葉で、由衣を傷つけてしまった。



 真聡は私達を突き放す。

 でも由衣は無理にでも真聡に手を伸ばす。



 ……もう、本当にどうしたらいいかわからない。



 そう思ったとき。

 「2人とも、とりあえず落ち着いて」という、佑希の声が聞こえた。

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