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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
11節 蠢く気配

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第184話 契りの破棄

 襲ってくるわりには、防戦一方で逃げ回る画架座。

 そんな画架座に俺は遂に、日和ひより志郎しろうの協力もあって一撃を入れた。


 しかし、吹き飛んだ画架座は彩光さいこう 風色ふうしき美術館の庭園の壁を突き破り、裏山まで吹き飛んで行ってしまった。


 壁を壊してしまった事を内省をしながらも、俺は急いでその後を追いかける。


 そして、画架座は裏山に出てすぐ発見できた。




 しかしまだ、画架座はその異形の姿を保っていた。



「嘘でしょ……?」

「今のでも駄目なのかよ!?」


 後ろから着いてきたらしい、日和と志郎の驚きの声が裏山に響く。


 いや俺だって予想外だ。

 だが、驚いている暇はない。


 俺は気を取り直して、杖を生成してから急いで言葉を紡ぐ。


「草木よ。荒ぶり、人々に害を与える存在と堕ちし画架の座を縛り、抑え給え!」


 そして杖先を地面に付ける。

 すると周囲の地面から蔓が飛び出してきて、地面に仰向けに倒れている画架座の身体を縛った。


 だが……ここからどうすればいいんだ。


 堕ち星のような姿のままだが、動く気配はない。

 概念体ではあるが、由衣の牡羊座の力が必要なのか?



 そう思ったとき。


「みんな~!大丈夫~!?」


 そんな由衣ゆいの声が後ろから聞こえてきた。


 振り返ると、先程由衣と一緒に絵から飛び出してきた女性もいた。



 そしてすぐに、日和が「大丈夫なの」と声をかける。


 普段通りに見えるが、やはり心配なのだろう。


 しかし、由衣は日和の言葉に「うん!」といつも通りの声で返事をした。


「戦うのがちょっとしんどいだけで、歩くくらいなら全然平気だから!

 それで……どういう状況なの?」


 由衣にそう聞かれたので俺は魔術を維持しながら、簡単に状況を説明する。


「つまり、いつもならプレートに成るはずなのに戻らない……」


 話を聞いた後、確認するように呟く由衣。


 ……わかったように言っているが、これは分かっていないやつだろ。


 そう突っ込みたくなっているそのとき。

 突然女性が「……私のせいなんです」と口を開いた。


「本当に……申し訳ございません」


 そして、頭を下げる女性。


 状況が把握できていない俺は「……どういう意味ですか」と聞き返す。

 すると、何故か由衣が「なんかね」と口を開いた。


「お客さんに悩みを相談したら『あの絵に人を吸い込んだら、若返らせてほしい人を若返らせる』って言われたんだって」


 ……は?


 若返りなんて簡単にできる魔法じゃない。

 少なくとも現代に使える魔法師はいないと聞いているぞ。


 いや、神遺の力である星座なら可能なのか?

 だが、画架座にそんな力はないはず……。



 …………いや、今はそこじゃない。

 あの絵がこの女性の物で、そこに何かしらの術が発動しているのなら……。


 俺は浮かんだ仮説を確かにするために、女性に向かって確認の言葉を口にする。


「あなたは、あの物置の扉を開けれたんですよね?」

「はい……普通に開けれましたけど……」


 自身はなさそうだが、女性は確かにそう言った。

 それが、()()()()()()()()()()()()というように。


「……それなら、あなたなら止められるはずです。

 あの怪物は俺が抑えてます。

 ですので、あの怪物の背中に手を当てて、俺の言葉を()()()()復唱してください。

 志郎はこの女性の近くで、日和はその後ろから。もし堕ち星が暴れたときに備えてくれ」


 すると一斉に「どういうこと?」や「説明してくれって!」という声が飛んでくる。


 だが、今は説明は後の方が良い。

 何故なら。


「まだあの絵の中に、佑希ゆうき鈴保すずほ。そして他にも人がいるんだろ。

 だから救出が先だ。説明は後でする」


 すると志郎と日和は渋々という感じで返事をした。

 そして、女性を連れて画架座の後ろの方へと移動していく。


 そこに由衣が「……私は?」と聞いてきた。


「お前は俺の後ろにいろ」


 その言葉に由衣は「えぇ~」と呟き、頬を膨らませる。


 頼むからしんどいなら無理をしないでくれ。


 そう思いながらも俺は「準備はいいか」と問う。

 すると「いつでも行けるぞ!」と志郎の声が返ってきた。


 俺は蔓を操り、画架座を持ち上げる。

 そして、俺は向こうの声を聞きながら言葉を紡ぎ始める。


「我」

   「我」


「神遺の力である汝と」

           「しんいの力である汝と」


「契りを結びし者也」

          「契りを結びし者也」


「我」   「ここに」     

   「我」     「ここに」   


「その契りの」

       「その契りの」


「破棄を宣する」

        「破棄を宣する」



 すると、女性が言葉を継ぎ終えた直後。

 堕ち星から黒い光が溢れ始める。


 俺は念のために由衣に「俺の後ろにいろよ!」と叫ぶ。

 そして急いで「土よ、壁と成れ!」と言葉を紡いで、目の前に土壁を生成する。




 その直後、黒い光が美術館裏山の斜面を埋め尽くす。




 風のような衝撃波が、周りの木々を揺らす。




 そしてその黒い光は、数秒程経って収まった。



 俺は急いで辺りを見回して、状況を確認する。



 流石に画架座を縛っていた蔓は、跡形もなく消滅していた。



 しかし、志郎と日和の星鎧は消滅していない。

 女性も無事のようだ。



 そしてその手前。

 さっきまで堕ち星がいた場所には先程の絵とぼろぼろ画架が落ちていた。



 ……何かしらの魔術や魔法で画架に画架座の力を入れ、堕ち星にしていたんだろうか。

 そして、その術に女性が何かしらの形で組み込まれていた……?


 そう考えていると、志郎の「これって倒せたってことだよな!?な!?」という声が聞こえてきた。

 そんな志郎を隣の日和に少し鬱陶しそうに相手している。


 一方、俺の後ろの由衣も同じようにテンション高く「やったじゃん!」と喜んでいる。

 そしてそのまま、俺の背中を軽くたたいて痛がっている。


 星鎧を生身で叩けば痛いだろ……。



 少し空気が緩み始めたその時。

 今度は絵が光り始めた。


 ……しまった。

 堕ち星を倒せば幻想空間が消滅して、中にいた人は弾き出される。


 そしてこの木々の多い斜面で吐き出されれば、危険であることは間違いない。


 俺は急いで志郎に「その絵を持ち上げて、こっちに向けろ!」と指示を出す。

 一方俺自身は斜面を下って距離を取り、絵に向けて杖を構える。


 そして、俺は短く言葉を紡ぐ。


「風よ。衝撃を和らげ、人を守る壁と成れ!」


 杖を中心に風が渦巻き、壁と成る。

 ほぼ同時に、絵から何か飛び出してきた。


 ……人だ。


 その人は、まっすぐ俺の方へと飛んでくる。

 そして、風の壁によって跳ね返される。


 飛び出した勢いが殺された人は、そのまま地面に落ちる。


 だが、怪我をする高さではない。



 そこから、3人ほど人が飛び出してくる。

 その人たちも最初の同じように風の壁で受け止め、地面に落ちる。



 そして。


「うわ怖いこれ!」


 そんな叫びと共に、鈴保が絵から飛び出してきた。

 続いて佑希も飛び出してきた。


 そして2人も漏れなく、俺が発動している風魔術に受け止められ、地面に落ちる。


「これは……酔うな」

「とにかく……出られた……よね……」



 地面に倒れたまま、そう呟く佑希と鈴保。



 そして人を吐き出していた絵の輝きは収まった。


 どうやら、これで全員のようだ。



 落ち着いたからか。

 肩の力が抜けていくのを感じる。



 そこに。



「ゆー君!すずちゃん!

 おかえり!」



 そんな由衣の明るい声が、木々の間に響いた。

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