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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
7節 新たな出会い

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第113話 不思議な縁

 お会計をしてもらって、私はお釣りを受け取る。

 そしてマスターさんに「ごちそうさまでした!チーズケーキ美味しかったです!」と言いながら、扉を開けてお店の外に出る。


 すると最初にお会計をしてもらって、先に外に出ていたちーちゃんが「それにしても」と話しかけてきた。


由衣ゆいさ、もうちょっと空気読めないの?」

「だってぇ……最初から気になってたし……」


 私がそう言うと、ちーちゃんはやれやれと言わんばかりにため息をついた。

 そして「昼ちゃんと食べてたでしょ」と返してきた。


「食べたけどさぁ……頭使ったら甘いものがぁ……」

「カフェモカも甘かったでしょ……それに質問も説明も、途中から私だったけど」


 それは……ごもっともです。


 どうやら私は難しい話ができないらしいです。本当にちーちゃんさまさまです。

 自分でもそれはわかってるから、笑ってごまかしながら謝罪とお礼を言うしかできません……。


 そんなやり取りをしてると満琉みちるちゃんが「ごめんね待たせて〜」と言いながら、お店から出てきた。


「全然大丈夫だよ〜!」

「ありがと。じゃあ帰ろっか」


 満琉ちゃんのその言葉で、私達は歩き始める。



 そして、少し進んだところで満琉ちゃんは「……2人は家、どっち?」と聞いてきた。


「「こっち」!」


 私とちーちゃんは揃って南側を指を指す。

 指したタイミングも、声も揃ってた。


 すると満琉ちゃんは「じゃあ途中までは一緒だね」と呟いた。


 どうやら途中までみたい。

 すずちゃんと「中学一緒だった」って言ってたもんね。

 だったら、近くではないのは間違いないもんね。


 ……だったら、今のうちに改めてお礼を言っておかないと。


 そう思った私は「今日はありがと!」と口を開く。


「チーズケーキもカフェモカも美味しかったし、お洒落でいいお店だった!

 また来ようって思うぐらい!」

「そっか。良かった~……。

 『話すって理由で付き合わせて申し訳ないな……』って思ってたからさ。喜んでもらえて嬉しいな」


 満琉ちゃんは笑顔でそう返してくれた。


 そこに、ちーちゃんが 「……射守いもり君とは来ないの?」と質問を投げた。


「あ~~……。聖也せいやはさ、学校にいる以外の時間はずっと弓道か射手座の力の特訓をしてるからさ……。

 あと洋風よりも和風の人だから。家的にも」

「……つまり洋菓子よりも和菓子派で、満琉ちゃんとは好みが違う……ってこと?」

「そういうこと。だから私もたまにしか来ないんだ。あと私の家からはちょっと遠いし」

「そっかぁ……」


 友達と好みが違うのは当たり前のこと。

 でも、好きなものを共有できる友達が少ないのは悲しいよね……。


 ……そうだ!


「ねぇ!もし良かったらさ、また一緒に来ようよ!」

「いいけど……いいの?」

「もちろん!私もまたチーズケーキ食べたいし!

 それに私達、仲間で友達でしょ?」


 私がそう言うと満琉ちゃんはクスッと笑った。

 そして「ありがと」と言った。


「……それなら、私のこともあだ名で呼んでよ」

「いいの!?

 う~ん……えっとねぇ……じゃあ……みっちゃん!」


 私がそう言うとまたみっちゃんはクスッと笑った。


「ありがと由衣ちゃん、これからよろしくね」

「私も呼び捨てでいいよ~!」


 そんな会話をしながら、私達3人は住宅街の中の路地を曲がる。

 でも、会話はまだまだ続く。


「あと、色々教えてくれたのもありがと」

「いやいや!それこそ、私達もみっちゃん達の事情を教えてくれたから助かった!

 ね、ちーちゃん!」


 するといつの間にかちーちゃんは後ろに居た。

 そして「何で急に私にパスするの……」と呟いた。


「あれ?駄目だった?」

「まぁいいけど。

 他の人達……真聡まさと志郎しろうには、私達から話してみるから」

「協力できたら良いよね。せっかく同じ力を持って、澱みや堕ち星と戦ってるんだから」

「そうだね。

 まぁ……1番の問題は聖也だけど……」


 みっちゃんのその一言で空気が一気に重くなった。


 ……みっちゃんも大変だね……本当に。

 でも私達だと聖也君に話すら聞いてもらえないからなぁ……。


 そんな事を考えていると、みっちゃんが口を開いた。


「でも本当に助かったよ。色々名前とかも教えてもらって。

 特に澱みと堕ち星。全然見た目も強さも違うのに、聖也は同じ『怪物』呼びしてたからさ〜……もうややこしくって」

「確かにそれは…ややこしいよね。

 あ、私最初は澱みのこと泥人形って呼んでたよ」

「まんまじゃん」

「良いじゃん別に〜!!」


 私がそう反論すると、ちーちゃんとみっちゃんが笑いだした。

 こっちは真剣なのに。


 なんて話をしてると、みっちゃんが交差点で足を止めた。

 そして「じゃあ私、こっちだから」と言った。


 この道の先は……川があって橋がかかってる。


 すると、ちーちゃんが「……そっちって……川の向こう?」と質問を投げた。


「うん。私、川の向こうだから」

「……川の向こうって邸宅街だよね?」

「……えっ!?みっちゃんってお嬢様なの!?」


 ちーちゃんの言葉に、私は思わず声が大きくなってしまった。


 でもちーちゃんの言う通り、川の向こうって大きな家が多い。

 ……行ったことないから詳しくは知らないけど。


 でもみっちゃんは「いやいや違う違う」と両手を振りながら否定の言葉を口にしている。


「それに聖也の家の方がお屋敷だし……」

「そういう問題じゃないんだけど……」


 ……多分私達にしたら、どっちも大きな家だと思うな。


 それにしても、まさかみっちゃんがお嬢様だったなんて……本人は否定してるけど。

 そんな事、ぜんぜん考えてなかったので凄くびっくりした。


 でもよく考えたら私達の学校って私立だから、家が豪華な人が多くても不思議じゃないよね……。

 それに私達の学年には本物の社長令嬢がいるみたいだし。


 ……私はその子と喋ったことはないけど。


 でもそう考えると私が星芒高校に入学できたのが本当に不思議に思えてきた。


 そんなことを考えていると、「じゃ、じゃあ由衣の家ってどうなの?」とみっちゃんが聞いてきた。


 私は我に戻ったけど、聞きたい意味が分からなくて「……どうって?」と聞き返す。


「白上家は普通だよ」

「何でちーちゃんが答えるの!?普通って何が!?」

「私、星鎖祭りの帰りに由衣の家の前通ったし」

「あそっか」


 あの日は一緒に居た8人で帰ったもんね。


 ……あれ。すずちゃん達3人も川の向こうって言ってなかったっけ。


 そんなことを考えていると、みっちゃんの「そっか、こっちだと星鎖神社近いもんね」という言葉が聞こえた。


 会話に置いて行かれたくないので、私は頭の中の疑問を押しやる。

 そして「みっちゃんも今年行ったの?」と聞き返す。


「うん。聖也とね」

「星鎖祭りには行くんだ……」


 ちーちゃんがボソッと呟いた。


 でも星鎖祭り……楽しかったなぁ。


 やっぱり私は友達と一緒に何かするのが大好き。

 でも1カ月前はまだみっちゃんのこと知らなかったからなぁ……。

 

 ……あれ?

 射守君のあの感じ……どこかで覚えが……。


「あ!!」

「何」

「みっちゃん……星鎖祭りでベビーカステラ買うときにもめた?」

「もめたってほどじゃないけど……聖也がいつも通りで……え、何で知ってるの?」


 「やっぱり……」と思いながら、私は口を開く。


「多分、ベビーカステラの出店で喋ってたの…私達です……」

「あ、そうだったの!?

 ……そっかぁ……不思議な縁だね」

「ね〜」


 最近知り合ったと思ってたけど、あのときには会ってたんだね……。


 そんな謎の衝撃を受けていると、みっちゃんが「それで……智陽ちはるちゃんの家は?」とさっきの話に戻っていた。


 でもその質問は駄目。

 いくら友達とはいえ、ちーちゃんはその事を触れて欲しくないと思う。


 実際今、ちーちゃんは「えっと……」と口籠ってる。


 私が話題を変えるべき。

 だけど、いい言葉が思いつかない。


 私の口からも「えっと……」という言葉しか出ない。


 すると、ちーちゃんが「ありがと、由衣」と私を止めた。


「でも大丈夫。

 ……私はお母さんは小さい頃に亡くなって、お父さんも今は行方不明。

 だからお父さんと暮らしてたマンションで今は1人で暮らしてる」

「…………ごめん。聞かれたくなかったよね」

「大丈夫。ちょっと言いづらかっただけ。

 でも、矢持やもちさんなら話しても良いかなって」

「……そっか。話してくれてありがと」


 とりあえず、平和に解決してよかった……。



 でもちーちゃんは強いから、心配いらなかったかも。



 そう思ってると、みっちゃんが「私のこと、呼び捨てでいいよ?」と口を開いた。


「あ、みっちゃんでもいいよ?」

「じゃあ、私も呼び捨てでいいから。

 ……流石にあだ名は遠慮しとく」

「何で〜!?」


 私のその声に、ちーちゃんが「何で由衣が」と突っ込んできた。


「だって『みっちゃん』って私が考えたんだから、目の前で不採用になるとショックだもん!」

「ね。私も気に入ってるんだけど」

「私はそんなキャラじゃないから」


 ちーちゃんは少し鬱陶しそうにそう呟いた。


 なんかちょっとおかしくなって、私は笑い出す。

 するとみっちゃんもつられて笑いだした。


 最後には、ちーちゃんも少しだけ笑った。



 そして笑いが収まったところで、みっちゃんが「じゃあ今度こそ帰るね」と言った。


「うん!また学校でね〜!」

「またね」


 私は手を振って歩き出すみっちゃんを見送る。


「じゃあ、私達も帰ろっか」

「だね。

 ……で、どう話す?特に真聡」

「あ~……」


 そんな会話をしながら、私達も別の方向へと歩き出す。



 次の瞬間。

 凄くゾワッて感じがした。



 私は嫌な予感がして、急いで引き返して走り出す。

 ちーちゃんが何か言ってるけど、気にしてられなかった。



 みっちゃんは堤防の下で立ち止まってる。



 私は全力で走ってみっちゃんに追いついて、追い越して。

 そして前に出る。



 私の嫌な予感は的中していた。



「何だ。1人かと思ったら牡羊座が一緒にいたんだ」



 みっちゃんが立ち止まっていた原因。



 それは、へび座の堕ち星だった。

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