第13話 決戦
「本当にいいんだよね?」
「陽菜・・・てめぇ何度も何度も聞きすぎだろう。困ってるじゃねーか」
「はっはっはっ~!」
僕と一瀬と赤神ちゃんと陽菜ちゃんの4人PTで魔王がいる部屋の前まで来ていた。
「みんな・・・今までありがとう・・・本当に世話になった!」
「へいへい、おっさんはネチっこいから嫌なんだよ」
「おっさんじゃない!僕はまだお兄さんだ!なぁ、一瀬?」
「ああ・・・いつまで経っても変態のお兄さんだ!」
皆が笑う。
今日で本当に皆と最後の日となる。
皆で協力して魔王を倒すことがこのゲームのクリア条件。
そして・・・クリアしてしまったら二度とこのゲームをプレイすることができないと教えられていた。
女の子のおっぱいを触れるゲームなんてこのゲームが売られてから15年経っても出てきていない。
そんな貴重なゲームをわざわざクリアして二度とプレイできなくするようにするのはもったいないって?
その通り・・・本当にその通りだと思う。
本当はまだまだ・・・美少女のおっぱいを揉みたかった・・・
本当はまだまだ・・・プレイしたかった・・・
本当はまだまだ・・・皆と居たかった・・・
だけど・・・どんな良い夢でも・・・夢である限りいつかは覚めて起きないといけない。
・・・そろそろ覚めないと行けない頃合だろう?
ぎぃ
重たい扉を開けて魔王に挑む。
魔王はこれまでに何度か一人で倒した経験がある。
今のこの強さとPTだったら魔王なんて秒殺することができる。
つまり、もう皆といれる時間は極わずかな時間しかない。
ぱちぱちぱちぱち
誰かが拍手をするような音がする。
「良くここまで来たな・・・おめでとう!」
奥の方から少年の声が聞こえる。
見てみると魔王の玉座に一人の学生服を着た少年が堂々と座っていた。
「・・・おや?」
今まで何度か魔王を倒してのだが、見た目は正に魔族の長みたいな感じだった。
こんな少年ではなかったはずだ!
「勇者よ!私は君を歓迎しよう!」
少年はまるで悪役みたいな笑い声を上げる。
顔立ちはおそらくすごいイケメンなのだろうが・・・あの変な顔芸のせいで良く分からない。
「あの~魔王さん。いつもと姿違うんですけど代理ですか?」
「はぁ?君ぃ何言ってるの?ここ、フィナーレなんすけど?そこはちゃんと空気読もうよー?」
どうやらこの少年もメタ発言できるNPCのようだった。
「陽菜ちゃーん・・・何やってるんだよ?ちゃんと勇者の教育しとかないとダメだろう?」
「ご・・・ごめん」
僕からぶち壊してなんだけどこの少年もすっごく雰囲気を台無しにしていた。
てか、少年と陽菜ちゃんは知り合い同士だったのか。
「ま・・・まぁ、このまま馴れ合いっていうのもあれですしそろそろ戦います?」
少年に提案してみたが少年はまた別パターンの顔芸をしてきた。
こみ上げてくる笑いを堪える。
「それは俺と馴れ合いしたくないって言ってんのか?俺の陽菜と赤神ちゃんネトっておいて随分態度がでかいなぁおい!」
「いや、別にお前のものでもないしこいつとはそういう関係じゃないから」
少年に対して赤神ちゃんが即効で返事をした。
「えっ・・・エロゲーなのにエッチな事していないの!?勇者と赤神ちゃんエロいことしてないの!?」
「してねーよ!後、これエロゲーじゃねーよ!」
「そ・・・そう。勇者って案外紳士で良い奴だったんだな。俺、勇者の事見直したわ」
少年は僕に対してぎゅっと握手をしてきた。
何このハイテンションな少年・・・すごくおもしろいんだけど。
「じゃあせっかくの機会なので色々知りたい事を教えてもらっても良いですか?例えば、このゲームが作られた目的とか」
「ふ・・・ふははあはははははは!!ならばこの魔王をぶっ倒して聞くが良い!!来い、スラ!!」
ぴょんぴょんぴょん!!
どこからともなく例のスライムが元気良く跳ねて登場してきた。
やっぱりただのモンスターって訳じゃなかったのか。
「これは俺のペットのスラだ・・・今から2対4のチーム戦で俺と戦ってもらう!」
少年はスラと呼んでいたスライムに手をつっこんで何やら武器を取り出した。
それはアサルトライフルくらいの大きさをしたおもちゃの水鉄砲だった。
「えっ・・・それで戦うのですか?」
「勇者よ・・・貴様は見た目で相手をあざ笑う愚かな人間か?」
「いいえ・・・申し訳ありませんでした」
僕はぐっと剣をかまえて魔王を見る。
皆も真剣な表情になり武器を構える。
戦う相手が今までと違う魔王である以上、これからの展開が予想できない。
全力で戦おう・・・
ぴゅん!ぴゅん!
魔王から弾が連射される。
「速すぎるっ・・・!!」
レベルをカンストさせて最高の装備を持った僕でも完璧に見切るには厳しいくらいの速さで弾を撃ってくる。
咄嗟に防御の姿勢をとったが弾は僕を狙っていなかった。
「きゃっ・・・!!」
魔王が狙ったターゲットは僕ではなく陽菜だった。
陽菜もその速い弾速は予想していなかったのであろう・・・何発か直撃してしまっている。
「・・・しまった!!」
魔王は2対4のチーム戦と事前に言っていたではないか・・・!!
ならば、別に僕を先に狙う理由はない。
「陽菜ちゃん!大丈夫か!?」
「だ・・大丈夫・・・体は」
「そうか・・・それは良かった」
「・・・良くもないんだけどね」
陽菜は顔を赤くしていた。
一応怪我をしていなか陽菜の体を見てみると・・・陽菜ちゃんのスクール水着が大きく敗れていた。
恥ずかしい所はまだ見えていなかったが、これはなかなかエロい!!
「ふっはははははは!!俺を舐めるとエロい目に合うことは散々学んで来ただろう、陽菜!」
「・・・~っ!!」
「おい、お前」
赤神ちゃんは僕に喋りかける。
「あいつは・・・魔王は対女の子戦においてチートじみた力を持っている。私と陽菜と一瀬でスラを抑えるからタイマンで魔王を倒してくれるか?」
「あ・・・ああ。分かった!」
僕は頷く。
恐らく、あのスラってスライムの子も相当強い力をもっているのだろう。
「えっ?おかしいよね?俺と勇者がタイマンしたら、俺は陽菜と赤神ちゃんを生まれたままの姿にできないじゃないか!」
「だから、それが嫌なんだよ!!」




