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第61話 『アレスの塔三階層』

出現したワープホールを抜けるとそこはアレスの塔三階層だった。

ここにも部屋の中央に魔法陣が描かれており俺達が近付くとやはり同じ様に輝きだした。


「来るぞ! 今度は慎重に戦うんだぞ、お前ら」


「「「「はーいっ」」」」


まったく緊張感のかけらもないパーティだった……


魔法陣の光は、徐々にひとつに集まりその姿を現出させた。緑の羽を大きく広げたその巨体は、大木の葉を連想させる。


「お、お兄様、あ、あれは、グリポークスです」

アリサの声は、珍しく動揺して震えていた。それだけで、このモンスターが恐ろしい奴だと直感させられる。

さすがに三階層は、簡単に通してもらえそうもないのだ。


「アリサっ、あいつはそんなに凄いのか!」


「はい、お兄様、あいつの体力と耐久性はとても高く手強い相手です。しかも伝説級のステーキの素材としても知られており、その肉汁を追い求める美食家達が絶えることは無いとされていま……」


バリバリ! キィーン! ババーン!

どーーーん!


アリサが言い終わらない内に攻撃が乱れ飛んだ。もちろん俺の仲間のね……


「おいーーっ! お前ら慎重につって言ったじゃん! 俺」


もうこうなると止まらねえ、俺もヤケクソで攻撃に参加した。少し涙をにじませながら……


そして1時間後……


雷の魔法やら火の魔法でこんがり焼けたグリポークスの身体があった。

弱すぎるだろ! グリポークスっ!


今回は、グリポークスの身体はすぐに消えず。なんとも良い匂いを漂わせていた。


「よし、食べみよう、タケルから」

リンカが、勇ましくも口火を切ってドラゴンソードを振るった。

俺、完全毒見だよね、リンカさんっ⁉︎


リンカは、剣で肉を切り取り俺に差し出した。ドラゴンソードの熱でジュージューと音を立てる肉の欠片。充分に火は通っている様だ。


香ばしい香りが漂ってくる。


俺は、見ている皆んなの圧力を感じながら肉にガブリと食い付いた。


「うっ!」


うめえ! 舌の上でとろける様に柔らかく、ふんわりと甘い肉汁があふれてくる。ほのかに塩味がついており肉本来の味が濃厚に味覚を刺激する。


「ど、どうした、タケルっ⁉︎」


「い、いや、一口ではわからない」

俺は、残りをすぐに食べてしまった。


「ど、どうなんだ、タケル!」


「いや、も、もう少しで何かつかめそうなんだ」

リンカは、もう一切れ肉を切り取った。


俺は、また肉にかぶりついた。

いや、これは、とまんねー。

とにかくうまいのだ。


俺の様子がおかしいと思った三人は、手を出さずに様子を見ている。しかしアリサだけは、違った。


「わたしも食べてみる」

リンカは、アリサに肉を切り取って渡した。かぷっと食い付き口に入れる。


「はっ!」

アリサは、眼を見開いた。


「どうなんだ、アリサ、大丈夫か」

リンカが心配して声をかけた。


「だ、大丈夫かどうか、もう少し食べてみないと……」

アリサもおかわりを要求した。


アリサは、俺をみてニヤリと笑った。俺もそれに笑って応えた。


なんだか奇妙な仲間意識が芽生えた。

グルメハンター、グルメ同盟、グルメンバー呼び方は何でもいい、とにかく半端な勇気でグリポークスを食して欲しく無い、飛び込んだものだけが辿りつける明鏡止水の境地に俺達は舞い降りているのだから!


「なんかおかしいよ。私も食べてみるよ」

さすが我が妹ヒナよ、気付いた様だな。


ヒナも肉をガブリとやった。


「んんっ!」


「ヒナ! どうなんだ」

またもリンカが問い掛けた。

おかわりをするヒナ。


その様子をみてメルも続いた。


「あっ!」


「何だ、メル『あっ』って」

リンカには、わけがわからない。


さっきから俺たちのおかわりの肉を切り続けているリンカ。

そして、気が付いた。遅ればせながら結論に達したのだ。


「わかったぞ、これは幻覚を引き起こす毒肉なんだ!」

いや違うから! リンカさん!


そしてドラゴンソードを振るいその炎でグリポークスの身体を消失させた。


「「「「あああっ」」」」


ガッカリした俺達の表情とは、対照的に誇らしげなリンカの様子に本当の事は黙っておこうと決めた俺達だった。


ともかく三面クリアだーーーっ!

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