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第125話 『ちっちゃい魔族』

ミストナイトの剣から紫色の煙のように立ち上る魔力の霧に対してボーレーンの剣からは燃え盛る炎のような赤い光がゆらゆらと膨れ上がる。


「すうーっ」


どちらかが息を吸い込むタイミングで両者は、消えた。おそらく高速で移動したのだろう。


辺りに剣の金属音だけを残し時折見える残像は、互角の勝負に思える。正直言ってボーレーンがこれほどやれるとは思っていなかったが、少し勝利を期待してしまう。


人間の実力を見せつけるのであれば充分に役目は、果たしていると言っていいだろう。


しばらくの間、膠着状態が続き、互いの剣を削り合う。そして一瞬、ほんの一瞬だけミストナイトが見せた隙をボーレーンは、見逃さなかった。


床に落とされた黒いシミに足を取られたのだ。


態勢を崩しながら振り下ろしたミストナイトの剣の側面をボーレーンの剣がなぎ払った。甲高い音を響かせて折れる紫の剣。


「もらった!」


ボーレーンが、返す剣でミストナイトに刃先を当てようとした瞬間、彼の動きは止まった。


「う、嘘だろっ……」


敵は、魔族……

彼等には人を超えた能力が、備わっている。ミストナイトは、剣を持たぬ左手を槍のように鋭利な刃物に変えていたのだ。そしてその刃先はボーレーンの胸元を正確に捉えていた。


隙を作らされたのは、ボーレーンの方だったのだ。


「ボーレーーーーーーンっ!!」


俺の叫びと共に崩れ落ちるボーレーンの身体……

勝利を確信したミストナイトは、片腕を上げて勝利を宣言する。


「まったく、せっかちな魔族だな……」


崩れ落ちたように見えたボーレーンの身体は、低い体勢で踏み込み、いつの間にか剣先をミストナイトの喉元に突きつけていた。


「かっ……な、何故だっ!? 確かに手応えがあった筈だ……」


ミストナイトだけでなく、その場に居合わせた者すべてが、疑問に思っただろう。


「だが、俺は、お前の首を跳ね飛ばす寸前だぜ。勝負あったな!」


ボーレーンは、魔王へと視線を投げた。

魔族が簡単に負けを認めるとは思えなかったのだろう。ならば判断するべき者に決めてもらうのが最善だと俺も思う。


「良かろう。ボーレーンとやらお主の勝ちじゃ!」


魔王から決着が告げられると今度は、ミストナイトの身体が、ガックリと崩れ落ちた……


「くくっ、油断は禁物だったな。完全に私の負けだ。どうやらお前は、床のシミを意識して避けていたようだな。私は、それに気付かず醜態を晒してしまったようだ。しかし、最後にどうやって攻撃を防いだのかは分からんが……」


「いや、勝負は紙一重だったんだぜ。お前は大した奴だと思うよ。これがなければ俺は、胸を貫かれていたんだからな」


ボーレーンは、懐から割れた木箱を取り出した。中に入っていたのは兄ザナックスからもらった例のミスリル製のフォークだった。


「俺は、魔族に兄を殺された。このフォークは兄の形見だ。お前に勝てたのも偶然じゃ無く兄の意志だと思う。本当に倒すべき相手を間違えないようにとな……」


その言葉を残し踵を返すボーレーン。俺達は、貴重な初戦を勝利したのだった。


「お疲れ様でした、ボーレーン。あなたの戦い、見事だったわ」


労いの言葉をかけるクラッカルにボーレーンは、会釈をして、そのまま床にへたり込んでしまった。魔族との戦いは、それほど彼を消耗させたに違いない。


「ふう〜、MAGURO漁船に行かずに済んで本当に良かった……」


そっちかよ!


ともかく一勝だ、次の対決で何としても決めたい! 決めなきゃダメ!


魔族側は、早くも二戦目の相手が中央に立っていた。見たところ戦闘向けには思えない小さな少女の体をなしている。魔族を見た目では判断出来ないのだが、それにしても小さい。


「二戦目は、キュレリア頼んだ」


「がってんです! タケル様」


江戸っ子のような気っぷの良さが、何故か不安を煽るよ。


「ええ〜〜っ、二番手は、ミスターナンバー2の私のお役目では……タケルどの〜」


「ホサマンネンさんは、次の大将戦に備えておいて下さい」


「はっ! タケル殿、今何とおっしゃいました?」


あまりに狙い通りの反応、この二戦目で決めなければアウトなんでゴメンね、ホサマンネンさん。


「いや〜っ、そうですか。やはり大将戦にはこのホサマンネンが必要だと。一家に一人ホサマンネン、王国に百人ホサマンネンですな」


何人もいたらうっとうしいよ!

良く分からんが、納得してくれたならありがたい。


「ちがうよ、ホサマンネン! お前の勝ちは、期待してな……」


慌ててメルの口をふさぐ俺。余計な事を喋るんじゃありません!


「そうか、そうか、メル殿も私に期待を……」


少し涙ぐむホサマンネンさん、滴る涙アンド鼻水は、震える胸の筋肉で蒸発する。

電子レンジの仕組みかと思ったが飛び散っているだけだったよ……


その頃、闘技場中央ではキュレリアが腕組みをして相手のちっちゃい魔族を不満そうに見つめている。


「このちんちくりんが、私の相手なの!? せめてツノの生えた蛾みたいな魔族を出しなさいよ!」


キュレリアの言っている魔族は、ドルフィーナさんの事だろう。ドルフィーナさんは、魔王軍の幹部だ、今回の一般兵から選抜という条件に合わないだけでなく、キュレリアには悪いが勝ち目は全くない。


「随分行儀の悪い事かしら。弱い犬ほどよく吠えるとは聞いていたのだけれど、困ったものだわ。それとも、あなた負けた時の言い訳になるとでも考えているのかしら」


口ぶりは、丁寧だが幼い少女の魔族は、キュレリアに対して好戦的な態度を示していた。


「はんっ、チビをいたぶる趣味は、無いだけよ! あんたこそ負けてメソメソするんじゃ無いわよ!」


キュレリアも負けじと火花を散らす。


「いやぁ、お互い中々のリップサービスですな。しかし、例えキュレリアが、負けてもこのホサマンネンがおりますのでご安心あれ」


満面の笑みを浮かべ嫌なフラグを立てるホサマンネンさん。あんなに心折れていたのが、ウソのように思える。てか完全に忘れてやがるよ!


勝たなきゃ困るこの一戦、密かに神に祈る俺だった……うううっ










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