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第115話 『ガラガラと音を立てて』

「なあタケル、その胸のペンダントって!?」


ケインズは、不思議そうな顔で記憶を探っているようだ。


「勇者の証だよ、ケインズ」


「ええっ! 本当かよ! お前いつの間に!」


かつてケインズは、勇者だった。理由あって戦いをやめてしまったが、勇者の証は、彼も以前所有していたものだ。


「俺のと似てはいるが虹色だよな、これ? ひょっとして…………当たりか!?」


違うだろ! クジ引きで当たった訳じゃないんだから!


「ああ、アレスにもらったんだ、虹の証らしいよ」


「アレスってあの勇者アレスか!? って事は、タケルはアレスの塔に行ったのか?」


「そうだよ、ケインズ。アレスの塔で鍛えられて少しは成長したんだと思う。だったら俺にも出来る事があるはずだから……」


「そうか……俺の出来なかった役目をタケルは引き継いでくれるのかもしれないな」


ケインズは、少し誇らしげな顔でアレンさんを見つめる。やれやれといった顔のアレンさん。


「なあケインズ、俺の娘だってそのタケルのパーティにいるんだぜ」


お互いに顔を見合わせて笑う二人、一体何の勝負なんだよ! おっさんという生き物ってよくわからないんだが……


「タケル、ひとつ伝えておきたいんだが……」


ケインズのあらたまった態度にどこか違和感を感じる。まるで誰かの葬儀に参列したかのような硬い表情。


「どうしたんだよ? ケインズ」


思わず心の声が口をついて出た。いつものトボけたケインズらしくもない。何か悪いものでも食べたのだろうか?


「ああ、変な話だが魔王は、王ではないんだ……決して頂点じゃないんだ」


「えっ、それってどういう……」


「後は男の子なんだから自分で確かめるんだな」


そう言ったケインズの顔は元の穏やかさを取り戻していた。でも男の子関係ないよな……


ケインズとアレンさんは、まるで知り合いの家に遊びに来たかのような自然な感じで出口に向かう。過去に多くの強者が訪れては命を落としたのだろうこの場所は今はそんな気配さえ漂ってはいなかった。


「まあ、いいか、魔王にはこれから会うんだから何かわかるかも知れない」


ケインズの意図はわからない。しかしこの世界の事は、知らないことがまだまだ多過ぎる。魔王より上の存在が魔族にいると言うのだろうか?


「急ぎましょう! タケル」


俺はクラッカルの言葉にうなずいた。

今は優先しなければならない事があるのだ。


冷たい石畳の廊下を進んでいくと城の上に行く階段が現れた。以前にも訪れた事のある魔王の部屋へ繋がる階段だ。


「ちょっといいかな、クラッカル王女」


「何かしら?」


クラッカルは、階段の歩みを確かめながら俺の方に振り返る。ぶっちゃけ話をしたかったという理由で少し気安く話しかけた事は、気にもしていない様子だ。


「魔王との交渉だけど同盟を結ぶには余りにも魔王サイドのメリットが無さすぎるかな?」


「そうねえ、実は、手土産としてバルセムラというロイヤルスイーツを持ってきたのだけれど……」


ええっと、そういう意味じゃないんだが……


しかし、つくづく手土産が重視される世界だよな。そう言えばメルのおばあさんである大魔法使いミレシアの家に行った時も前回魔王城に来た時も手土産を持って行ったんだっけ!


「よし! 試しにひとつ食べてみよう!」


手を出したメルの手は、不穏な気配を感じたクラッカルに弾かれた。


「行儀の悪い子はダメですよ!」


「ははぁん、ごめんなさい」


お母さんかよ!


密かに手を出しかけていたリンカも慌てて手を引っ込めたのを俺は見逃さなかった。


「さて、いよいよね! ここが魔王さ……魔王の部屋だわ」


魔王様と言いかけたヒナは、言葉を飲み込んだ。俺の仲間達は、ヒナが魔王候補生である事を知らないのだ。まあ中に入ればバレてしまうのかもしれないが……


グライドは、緊張した顔つきでほとんど会話もしていない。いわゆる直立不動ってやつだ。


「なあグライド、いつもの鼻歌は、どうしたんだ?」


「は、はなはな、鼻歌? ぼ、僕はそんなことしないだろ……」


ダメだ! こいつは使い物にならねえ!


ならばヒナっ!


「…………」


ヒナの代わりに死神の仮面をつけたヒナがいた……どうやら魔王と話す気は無いらしい。


「ふうっ、しょうがないな」


覚悟を決めた俺は、魔王の部屋の扉を開けた。


ガラガラと音を立てて開く扉を……ガラガラ


おいいいっ! 相変わらず引戸かよーっつ!!

俺の声は、壁を撼わすほど高らかに響き渡ったのだった……






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