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第111話 『一抹の不安』

「み、みんな、見て! あ、あれが魔王城よ!」


 いや、お前そこに住んでるじゃん!

 さも始めて見たかのように叫ぶヒナ。


 そういや、ヒナが魔王候補生だって事は、みんなに内緒にしてあるんだっけ……


「な、なんだって、あ、あれが魔王城なのか!? な、なんというか、まったりとしていてそれでいて甘くなく……」


 うるせーよ、グライド! 茶番はいらねえし!

 お前が魔王候補生なのは、バレてるし!


 珍しくグライドは、俺の乗っているワイバーンのガブリエルに同乗していたが何やら変なテンションを発揮していた。変なキノコでも食べたんだろうか。


 気がつくと他に同乗しているヒナとキュレリアは、グライドを叩き落とそうとしているがそれはやめて欲しい。


「おい、お前達少し落ち着けよ。そろそろ着陸するから……」


 って、落ちてるじゃんグライド!


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーっ」


 叫びながら落ちていくグライドは、魔王城手前の森へ消えていった。


「 グライドーっ! お前らふざけ過ぎだぞっ! この高さから落ちたらいくらグライドでも無事じゃないだろ!」


「でも、お兄ちゃん……」

「グライドは自分で飛び降りたんです……」


 ヒナとキュレリアは、申し合わせたわけでもなく交互に話す。恐らく本当の事なのだろう。


「えっ!! そうなのか!?」


「うん、私達が落とす前にね」


 落とすつもりだったのかよ!

 しかし、今は何のつもりだかわからないが落ちてしまったグライドが心配だ。俺は、乗っているワイバーンの高度を落としてグライドが消えた辺りを見渡した。地上に広がる森の木々は、フサフサとした枝を伸ばしている。あの木の枝に引っかかっていれば、まだ何とかなるかもしれない。


「おおーい! グライドーーっ、大丈夫か」


 返事がない……もう一度声を張り上げてグライドの名を叫ぶ俺。


「ヤッホー、ここだよ! タケル!」


 声のした背後を振り返ると驚いた事に宙を舞うグライドの姿があった。


「なっ!? 飛んでるのか! お前」


 どうやらグライドは、得意とする風の魔法を操り体を浮かせているようだった。


「ああ、エア・スライド、新たに身に付けた僕のアイデンティティだぜ、驚いただろ! ふへへへへっ」


 うぜーーーーっ! 飛んでいるのは凄いがドヤ感がイラッとさせる。グライドは単にこの術を見せたかっただけなのだ。心配した俺は、バカバカしくて泣けてくる。


「タケル様、私が直ぐにアイツをデリート(消去)しましょうか?」


「いや、その気持ちだけで救われるよ、キュレリア。きっとグライドも役に立つ事があるはずだよ、多分、おそらく、もしかしたら」


「お兄様、アイツのハエ・チョロイド今なら召喚獣で叩き落とせます!」


 完全に技の名前に悪意を感じるよ、アリサ……


「もう着地するぞっ! リンカっ、高度を下げろ!」


「わかった、タケルっ。そこのハエを切り落としてから行く」


 てか、いい加減グライドを標的にするのをやめろよ、お前ら!



 そんなやり取りがあり、俺達は、魔王城近くの森に着陸した。そこは少し開けた場所になっており、過去に冒険者達が野宿をしていたのか、古い焚き火の後がみられた。


「へえ、こんな魔王城の近くで焚き火をするなんて魔王討伐に向かうパーティだったのかな」


「しばらく魔王討伐に成功した者は、いないからもしかしたらこの人達は……」


 クラッカルが、顔をしかめながら近くにそびえ立つ魔王城を見つめた。いくら今の魔王が好戦的では無いにしても間近に迫る敵を排除するのは当然のことだろうと思う。


「そんなに甘くないよな、戦いに安全なんて無いし、お互いに守りたいものもあるんだ。だけどその中に奪いたいだけの奴がいるなら、それが俺達の本当の敵なんだと思う……」


 まるで独り言のように話す俺の言葉を仲間達は、黙って聞いていた。きっとそれぞれの想いがあるに違いない。


「さあ、ここからは俺の仕事だ。クラッカル王女は、ひとまず城へ戻って下さい。キュレリア頼んだよ」


 キュレリアに声を掛けてクラッカルの帰りを促す俺。これ以上危険に晒すのは避けたかったのだ。


「一体何の事でしょうかタケル様、魔王との交渉ならバルセイムの然るべき立場の人間が出向くのは当然の事です。さあ、魔王城へ参りましょう」


「ち、ちょっと待って下さい、クラッカル様。いくらなんでも魔王城へ乗り込むなんて危険すぎますよ! なあキュレリアも心配だろっ?」


「タ、タケル様……キュ、キュレリアを心配……してくれて……いる……」


 いやいやいや、違うから……! クラッカルのことだからな。 そもそもお前が守る立場だろっ、もじもじするのは、やめて欲しい。


 どうやらクラッカルは、最初から魔王城に行くつもりだったようだ。まあ、少し予想はしていたけど……


「タケル様、だ、だめ……ですか……?」


 眼を潤ませながら俺に懇願するクラッカル。


「ふう、そこまで言われたら連れて行かないわけにもいかないな。褒美は期待していますよ」


 なぜか俺の口調を真似して勝手に答えるメル。

 ややこしくなるから黙っててくれ!


「ありがとう! タケル様。 あなたが守ってくれると信じています!」


 ちげーーっ! あんたが今話しているの、メルですからっ!


 結局、頑固王女は、意見を押し通した……



 そして今、俺達は、魔王城の門の前にいるのだった。一抹の不安を抱えながら……





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