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第107話 『決断の十字架』

「き、きのこが……ビビットな……ぎゃーっ!!」


ガバッとベッドから起き上がった俺は、どうやら自分の寝言で目が覚めたことに気付いたのだが……


「ふう、まったく昨日は酷い目にあった。夢に出てくるなんて……ビビットキノコ恐るべし」


そんな独り言をもにゃもにゃ言っていると部屋の窓をコツコツと叩く音がした。


「ん? なんだ?」


カーテンを開けて覗き込むと窓を叩いていたのは一羽の鳥であった。


「あっ、こいつハト!? じゃなくて似た鳥だったよな。通信用に昔使ってたっけ」


俺は、窓を開けて鳥を中へ呼び込んだ。ハタハタと飛び机の上に舞い降りる鳥。やはり誰かがこの鳥を俺の元によこしたのに違いないのだろうと思った。


「ん、脚に何か付いてるな。 手紙か?」


鳥さんの脚には紙切れがヒモでくくりつけてあった。それを外してみると表面に文字が書いてある。


「なになに、『あなたの心の中に咲いた小さな白い花、ドルフィーナより緊急のお・し・ら・せ・っ』…………」


き、緊急って! 全くないんだけど緊急感!

確かに今の城の防御態勢を考えれば魔族であるドルフィーナさんが中に入り込むのは難しいのかもしれない。鳥さんを使ったのはそんな理由だと思うんだけど……


紙を裏返すと細かい字で内容が記されていた。


「えっ! マジかよこれ! 本当に緊急だよ」


その手紙を読んだ俺のひたいに汗がにじみ、胸騒ぎが止まらなくなった。


「間に合うのか!?」


仲間達を呼び集める為に俺は慌てて部屋を飛び出した。


ガン!


ドアを開けると勢いよく何かがぶつかる音がした。


「グワーーーーッ!」


ホサマンネンさんだった……

長い廊下をキリモミ状態でぶっ飛んでいく。


「ああーーっ、ホサマンネン様ーーっ」


それを追いかけるニャルロッテの姿。

思わず口元が緩みかけたが、ホサマンネンさんを抱き起こしたニャルロッテが立ち上がって俺にファイティングポーズを取ろうとしたので慌てて止めた。

一つ間違えばニャルロッテの首と胴体は呪いの首輪によって切り離されてしまうのだ。



「ホサマンネンさん、大丈夫ですか? すいません、メチャクチャ慌ててたんで俺」


「いや、こ、これしき、の、こと、ゼイゼイ…… まったく……問題ありません!」


弱々しく親指を立てイイねをするホサマンネンさん。まったく大丈夫には見えないのが残念なところだ。


「くっ、タケルを亡き者にすればホサザンネン様が隊長になれたのに……」


おいっ! お前が言っちゃダメだろ! ニャルロッテ!


「とにかく、みんなを集めてもらえますか。ホサマンネンさん!」


俺達は手分けをして皆を招集することにしたのだ。事態はそれほど深刻な状況を迎えていた。




「有能……なのか?」


僅か10分程で俺の仲間は、集められた……

しかし全員の部屋のドアをぶち壊すことはないよな、ニャルロッテよ。


揃った全員は、パジャマのままでメルとグライドにいたっては寝ぼけまなこで少々髪の毛も焦げ付いている。火力調整しろよニャルロッテ!


「お兄ちゃん、何かあったの? 変だよ突然。キューティクルの都合もあるんだから」


ヒナの意見はごもっともだが何かあった事が伝わったのであれば幸いだ。てか、なんだキューティクルの都合って!


「タケルっ、いったい何があったんだ。事と次第によっては二度寝する勢いだぞ!」


リンカが、枕を片手に詰め寄る。言ってる意味がよくわからないんだが……


「こらーーーーっ!!!! お前たちーーっ!」


ホサマンネンさんが吠えた! が、その直後に壁にめり込んだ。


まるでそれは十字架のようで、ある意味尊い姿なのだが……


「ぎゃーーーーっ! ホサマンネン様ーーっ」


ニャルロッテが、目を閉じ祈りをささげた。

いや、死んでないよホサマンネンさんは!


壁まで吹き飛ばした犯人は、メルとグライドの寝ぼけた二人組だ。大声に反応して迎撃したらしいのだ。


だが意外にもホサマンネンさんは、カッと目を見開き自力で壁から抜け出した。

鎧と筋肉に付いた壁のほこりを何事もなかったように手でパタパタと振り払った。


「!?」


「どうしましたタケル隊長? 私がやられてばかりだといつから思っていましたか」


と、ホサマンネンさんらしからぬ態度でドヤ顔をしている。いや、ドヤ顔は、前からだったな。


「よくあれだけの攻撃にたえられましたね。正直言ってホサマンネンさんの強靭な筋力に驚かされましたよ」


「いやぁ、実は前にタケル隊長に兵士達の訓練をご指導頂いた成果を試してみたのです」


確かに兵士達には、早口言葉の特訓を指示したことがあった。それは単なる早口言葉ではなく『高速詠唱』であった。身体強化の詠唱であれば魔力の弱い兵士達でも底力を上げる事が出来ると思ったのだ。


ホサマンネンさんが、攻撃を受ける瞬間にそれを唱えたのだとすれば効果は証明されたと言える。必要のある時だけ防御力、攻撃力を上げる事ができるのであれば魔力量の限られた兵士にとって理想的な活用法だと言えるのだ。


だったら俺の部屋の前で使っとけよ!


正直迷っていたが、これなら少しばかり無茶をしても許されるだろうか……?



俺は一旦言葉を飲み込んでから、覚悟を決めて皆に告げた。



「魔王城へ攻め込もうと思うんだけど」



俺の言葉に寝ぼけた奴らの目は、大きく見開かれたのだった……










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